戦国時代を生きていた人たちは、今の時代のように冗談を言い合ったりしていたのだろうか。学生時代に受けた日本史の授業から想像すると、彼らはいつも堅い話ばかりしているようなイメージがする。しかし、この本に出てくる人たちは想像よりも“ラフ”に話しているので、とても読みやすかったというのが率直な感想だ。
本書『うつろ軍師』は、戦国武将・織田信長に仕える丹羽長秀とその配下の江口正吉を描いたお話。この話の中心人物である正吉は、かなりの剣の腕前を持つ若い武士だ。想像力豊かな考え方を持っていて、周囲をあっと言わせるほど。しかし、想像がいきすぎて、まったく現実的でない話も時折みせる。そんな理由から「うつろ屋」なんて呼ばれていて、本書のタイトルにもなっている。
織田軍が敵陣に攻めあぐんでいた時、長秀や正吉たちは後援組として遠くからその様子を見ていた。正吉が思いついた作戦はとても現実味のないもの。しかし、それを後ろから聞いていた長秀は、正吉の案を褒め讃える。そこで、さらに別の案を正吉に提案したところ、正吉は一人で敵陣に乗り込むことに。その作戦が功を奏し、見事織田軍が戦いに勝利したのだ。
後援組なのに、一人で敵陣に乗り込むことは違反行為。しかし長秀は正吉に褒美を与える。そのことが他の人にバレてしまうと、長秀も立場的に大変なことに。それをわかりながら自分に褒美を与えてくれた長秀に、正吉は思わず涙を流してしまう。
正吉のキャラクターは、現代でいう「ゆるキャラ」な一面も持っているからか、親近感を持って本書を読むことができる。また、長秀とのやり取りもとても見物。こんな人間関係を自分の周りでもつくりたいと感じた。
たきおん/男性/20代
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清州会議で秀吉を支持した丹羽長秀。だが123万石の大大名になった時、丹羽家取り潰しの未来は決まってしまった!秀吉による4万石への大減封に空論で抗い、遂に理想を実現させた、新米家老・江口正吉と城郭マニアな若殿・長重による戦国最大の敗者復活劇!
簑輪 諒・著
定価:本体1,250円+税/学研プラス
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