たとえば、カップルでうなぎを食べに行きます。
うな重には、ふたがついています。
お店の人が、「お待たせしました」と言って、丼を置きます。
女性が先で、男性があとです。
この時、2人同時にうな重のふたをあける人が、プレゼンでチャンスをつかむ人です。
ふたは、温度を下げないためにあるのではありません。
あけた時に、「ワーッ」と感動するためにあるのです。
相手を待たずに、自分のところに来た時にポンとあけてしまう人は、プレゼンでチャンスを逃がす人です。
フランス料理には丸いふたがついています。
テーブルに8人いたら、スタッフ全員で横に来て、8人同時にふたをあけます。
みんなの「ワーッ」を、同時に味わいたいのです。
江戸時代は、丼にふたがありませんでした。
明治になると、料理の調理方法が圧倒的に増えました。
温かい料理が出せるようになったことで、ふたが生まれたのです。
初期のころのふたは、保温とか出前のためのものでした。
それがだんだん、あけた時に感動するプレゼンテーションの意味が生まれました。
カツ丼のふたをあけた時の「ワーッ」感が、プレゼンです。
丼には、よく見ると、ふたを受けるへこみがあります。
ふたがなかったころには、そんなへこみはありませんでした。
ふたを置こうとしても、ストンと落ちてしまいます。
それぐらい、明治になって丼の形が変わったのです。
自分だけ先にふたをあける人は、「なに勝手にあけているの」と思われます。
お店の人も、ガッカリです。
一緒に料理を食べに行っている感が、何もないのです。
ふたをあけた時の「ワーッ」感を大切にするのが、プレゼンでチャンスをつかむ方法です。
プレゼンする側がこだわるのは、ふたをあけた時の「ワーッ」をどれだけつくり出せるかということなのです。
中谷 彰宏 (なかたに あきひろ)
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。84年、博報堂に入社。CMプランナーとして、テレビ、ラジオCMの企画、演出をする。91年、独立し、株式会社中谷彰宏事務所を設立。ビジネス書から恋愛エッセイ、小説まで、多岐にわたるジャンルで、数多くのロングセラー、ベストセラーを送り出す。「中谷塾」を主宰し、全国で講演・ワークショップ活動を行っている。
■中谷彰宏公式ホームページ
http://an-web.com/
作品紹介
プレゼンは、チャンスをつかむきっかけ。自分のアイデアをどう提案して、夢を実現していけばいいのか?を紹介する。
定価:本体1300円+税/学研プラス
バックナンバー
- 個人的な意見が、強い。
- アシストが、ゴールを決める。
- 話し手からの質問が、 聞き手を遠ざける。
- ロジックが、世代を超える。
- 説明は、伝わらない。 描写が、伝わる。
- まず1人、 熱狂的な支持者をつくる。
- プレゼンとは、 ちょっといい提案だ。
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