リストカットは、死にたいのではない。 嫌いな自分を殺して、 好きな自分を生かしたいのだ。

中谷彰宏『嫌いな自分は、捨てなくていい。』セレクション

更新日 2020.07.20
公開日 2016.04.21
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 リストカットをする人は、「こんな自分ではダメだ」と思っています。
 嫌いな自分を殺して、好きな自分を生かしたいのです。
 殺したいのは、嫌いな自分です。
 ここに、大きな勘違いがあります。
 嫌いな自分も殺さずに、残していいのです。

 たとえば、会社の改革には、みんなが抵抗します。
 新しいことを始めることには、それほど抵抗はありません。
 一番抵抗するのは、リストラです。
 会社は、時にはリストラをしなければならない状況もあるのです。
 一方、自分の分身をリストラする必要はまったくありません。
 解雇はいっさいなく、ただ増やしていくだけです。
 リストラのない会社は、社員から愛されます。
 人間も、同じです。
 新しい自分に生まれ変わろうとして、「前のあなたをクビにする」と言うのは、過去の否定になります。
 そういう人は、メンタルが弱くなります。
 自分で、自分を愛せないからです。
 自分を責めるのは、リストカットと同じことなのです。

 今出している分身がうまくいかなかった時に、ほかの分身を出せることが、メンタルが強いということです。
 分身のストックをたくさん持っている人が、メンタルが強くなるのです。
 分身を増やすものが、負荷です。
 今まで7回しかバーベルを挙げられなかった人が、10回挙げられる自分の分身を持つことです。
 7回しか挙げられない自分が、消えたわけではありません。
 出番がないだけで、いるのです。
 それを、とっておきます。
 7回しかバーベルを挙げられない自分をクビにすると、7回しか挙げられない部下の気持ちがわからないので、教えられなくなります。

 ナンバーワンホステスさんがママになった店は、流行らないのです。
 お店には、ナンバーワンの女性は1人しかいません。
 ナンバーワンからママになった人は、ナンバーツー以下の女性の気持ちがわからないので、「なんでできないの」と怒るのです。
 お店を持って成功する人は、ナンバーツー以下の人です。
 ナンバーワンは、ほうっておいてもナンバーワンなので、育てなくていいのです。
 ナンバーツー以下の女性は、売上げも上がらないし、お客様にも人気が出ないので困っています。
 その気持ちがわかる人が、教えられるのです。
 英語が好きな人が英語の先生になると、先生としてはあまりよくないのです。
 英語が好きではないのに、仕方なく習いに来ている人はたくさんいます。
 TOEICでいい点数をとらないと、会社で降格になるのです。
 そういう人に「なんでこんな簡単なこともできないの」と言う人は、いい先生にはなれません。
 できないところから上がってきた先生は、それぞれの段階の気持ちがわかります。
 これが、分身を捨てなくていい理由なのです。

 

中谷 彰宏 (なかたに あきひろ)

1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。84年、博報堂に入社。CMプランナーとして、テレビ、ラジオCMの企画、演出をする。91年、独立し、株式会社中谷彰宏事務所を設立。ビジネス書から恋愛エッセイ、小説まで、多岐にわたるジャンルで、数多くのロングセラー、ベストセラーを送り出す。「中谷塾」を主宰し、全国で講演・ワークショップ活動を行っている。

■中谷彰宏公式ホームページ
http://an-web.com/

作品紹介

嫌いな自分は、捨てなくていい。
メンタルを強くする67の方法

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