よい言葉を書くために心がけることとは? -子どもの国語教育・言葉力を育てる-
【金田一秀穂先生が語る言葉の力がつく子どもの学習法】総合力を身につけるということ
これからの時代に求められる力として注目されている「読解力」「会話力」「文章表現力」「語彙力」などの「言葉力」。新しい学習指導要領でも、言語能力の育成が目標に掲げられています。
「言葉力」をつけるには、どんな勉強法をすればよいのでしょうか。そんな疑問に、“国語の神様”金田一秀穂先生が、保護者とのQ&A形式でわかりやすくお答えします。
Q:よい言葉を書くために心がけることとは?
「話す」「書く」といったアウトプット(出力)を価値あるものにするためには、「聞く」「読む」といったインプット(入力)で、どのようなことを心がければよいでしょうか?
A:価値ある「本物」をインプットする経験を!
何をインプットするのかは、とても重要なことです。今の世の中は見せかけだけの“ニセモノ”が多いし、薄っぺらな言葉もメディアに氾濫しています。だから、インプットの段階で本当に価値があるもの=“本物”をきちんと精選しておかないと、アウトプットもうまくいきません。そのためには、本物を見る目を持つことが大切です。子どもたちに今、一番必要なのは、それなんじゃないかな。
だから、親もニセモノにだまされず、子どもには本物をキチッと見せていってほしい。でも、海外旅行や芸術鑑賞など、本物を学ぶためにはお金がかかりますよね(笑)。けれど本物の“言葉”には、それほどお金がかかりません。夏目漱石や井伏鱒二、彼らの言葉は文庫本ですぐ手に入ります。僕が好きな『ドリトル先生』シリーズも井伏鱒二が翻訳しているんですけど、文章がすごく美しい。きれいで機能的なんです。詩人の谷川俊太郎さんの日本語も本物ですから、彼の詩集もいいですね。宮沢賢治の本も、ちょっと難しいけどいいですよ。本物の本というのは、何度も読むのに耐えうるものです。だから、一度だけ読んでわかったつもりになって二度と読まないというのは、ちょっと哀しいですよ。
絵もやはり本物を見ることが大事です。子ども向けの絵本なら、できればピカソやクレー、日本の画家なら安野光雅さんのような本物の絵を見せてあげたい。僕がアメリカで貧乏生活をしていた頃、まだ子どもは小さかったけれど、安野さんの絵本が家にあるだけで、暮らしの一部に輝きがあるような気がしていました。本当にいいものは、本物の豊かさを心に与えるんですよ。そして、本物に触れ続けていれば、やがてニセモノを見抜くことができるようになるんです。
何度も読むのに耐えうる本を、子どもに与えたほうがいいというのは、そういうことです。本物に馴染んでいれば、「きれいな日本語のリズムっていうのは、こういうものだ」と、“本物がわかっちゃう”子になっていくと思いますよ。
金田一秀穂先生の【言葉の力がつく極意!】
価値あるアウトプットができる子どもに育てるためには、価値ある“本物”をインプットすることが大切です。本物の本を読む、本物の絵画を見る。可能な範囲で、そうした機会を増やしたいですね。
金田一秀穂先生監修「新レインボー小学国語辞典」
全ページオールカラー。収録語数は類書中最多の43300語。イラストや写真が多く、すべての漢字にふりがなつき。類語の解説が充実していて、文章表現に役立つ。巻末には、ミニ漢字字典。漢字ポスター・小冊子つき。
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