《1》人生で大切なことを一つに絞れと言われたら、それは「独学力」である。

千田琢哉『生き残るための、独学。』セレクション

更新日 2020.07.30
公開日 2018.06.18
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私は勉強が好きだ。

東京・南青山の書斎に籠り、好きな勉強を好きなだけするという、

まさに勉強三昧の生活を送っている。

勉強の合間に、生業としている文筆業の執筆を粛々と行っている。

おかげさまで仕事のオファーは次々と舞い込み、

第1作執筆以降10年で、

著作数は約150冊、累計発行部数は280万部になる。

自分の興味の赴くままに、好きな勉強を楽しみ、

そして、その勉強で身につけた知恵と知識が新たな作品となり、

多くの人々のお役に立つ――。

私は毎日、ひとり書斎で勉強を続けながら、

こうして幸せな知恵の循環を享受しているのである。

ひとえに、独学の力と言えるだろう。

 

ところで、勉強の仕方について次のようにアドバイスする人たちがいる。

「何かを学びたければ、贅沢と思わずに立派な学校に通うべきだ」

「しかるべき専門家から直接教わらない勉強は邪道だ」

もし聞き手が納得しなければ、さらに次のような例まで挙げたりもする。

「あのゲーテも、独学での習得を非難しているように…」

独学の無意味さを声高に主張する人は、

主張する本人が高額セミナーの講師だったり、

お稽古事の先生を生業としていたり、ということが少なくない。

 

あなたは、そんな声を鵜呑みにしてはいないだろうか。

それで実際に成果が出ているならまだしも、

何年経っても変わらないのであれば、

あなたの貴重なお金と時間を無駄にしていることになる。

正直に告白すると、私もその「独学は邪道」という教えを健気に信じ、

その通りだと思っていた時期がある。

いや、正確には今でも、

しかるべき専門家に学ぶ姿勢自体は大切だと確信している。

だが、少なくともゲーテの時代と現代では、学習環境が大きく変わった。

それどころか、20世紀と今世紀を比べても環境はまるで違う。

 

私はこれまでに3000人以上のエグゼクティブ、

そして1万人以上のビジネスパーソンと対話を繰り返し、共に仕事をしてきた。

それらの経験を通して断言できるのは、次の事実だ。

 

「独学力は、人生で最大の武器である」

 

日々工夫を凝らし、自分なりの勉強法を編み出して学習を続ける人は、

これからの社会で極めて高い知的実力を発揮できるだろう。

前述した学習環境の変化の一例として、現代はわざわざ学校に通わなくても、

インターネットを通じていくらでも学べるようになった。

高額な授業料を払ったり、家と学校の間を毎日往復しなくてもいい。

それどころか、ネットの無料動画コンテンツのほうが、

より質の高い情報を提供してくれることも珍しくなくなった。

海外に留学もせず、書店に並んだ教材を駆使して独学で外国語をマスターし、

そのノウハウをネットの動画サービスで公開している人もいる。

「もしもあの時、学校に通わなくてよかったのなら、

その時間でもっと有意義な勉強ができたのに!」

これは私自身が痛感していることであり、

かつての同級生たちも、今になって異口同音に語っている。

たとえ実際に公言しなくても、本心でこう思っている人は多いはずだ。

 

さて、私は先ほど「専門家に学ぶ姿勢は大切だと確信している」と述べた。

私の本の読者には研究職に就いている人も多いため、あえてここで触れておくが、

研究者を目指して大学院で学ぶ際は、独学のみならず最小限の対面指導も必要だ。

これは私が大学時代に一次情報として教わり、今も通用すると考える事実である。

その理由は、あなたが今直面している事情に最適な参考文献や資料を、

その場でチョイスしてもらえる可能性が飛躍的に高まるからだ。

(研究設備という、自力では実現不可能な理科系特有のメリットは除いて考える)

もちろん対面指導を受けず、電話やメールでやりとりすることも不可能ではない。

だが、やはり常日頃から顔を突き合わせてコミュニケーションを取りつつ、

お互いが研究の進捗状況を正確に理解し合っているほうが、断然有利なのである。

この対面指導の重要性は、研究、文化、芸術、あるいはスポーツなど、

特定の技能を習得する世界に共通のものだと思う。

それでも私は、あえて言いたい。

研究、文化、芸術、スポーツの世界でも、対面指導の重要性は「1%」に過ぎない。

残りの「99%」は自らやり方を工夫し、

自分の力でとことん考え抜く「独学力」がモノを言うのだ。

一般的なビジネスパーソンであれば、

あらゆるケースで、独学によって人生を生き抜くことができる。

しかもその学習環境は、日々進化し続けている。

本当に、この時代に生まれてきた私たちは幸運なのだ。

独学を通じ、理想の人生を切り拓けるようになったこの時代に、深く感謝したい。

 (次回より、千田式「独学」の具体的な方法について、お伝えしていきます)

 

(※この連載は、毎週月曜日・全8回配信予定です。次回は、6月25日10:00配信予定です)

 

千田 琢哉 (せんだ たくや)

文筆家。 愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。 東北大学教育学部教育学科卒。 日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。 コンサルティング会社では、多くの業種業界における大型プロジェクトのリーダーとして戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。 のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって 得た事実とそこで培った知恵を活かし、 “タブーへの挑戦で、次代を創る”をミッションとして執筆活動を行っている。

■E-mail
info@senda-takuya.com

■ホームページ
http://www.senda-takuya.com/

作品紹介

生き残るための、独学。
20代から人生を逆転する49の学習改革

20代ビジネスパーソンのカリスマ・千田琢哉が、独学でゆるぎない教養と知的戦闘力身につけ、社会で生き残る方法を説く!
定価:1,300円+税/学研プラス

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