怒りの感情は、「何をやってもダメ」という無力感からも出ます。
変えられるものにトライすることで、無力感は出ません。
変えられないものにトライすると、無力感になります。
自分が変えられるところを、努力すればいいのです。
変えられないところを変えようとすると、結果的に怒りになります。
怒っている相手の器をもっと大きくしようと思っても、それは変えられません。
相手の人生にかかわることだからです。
たとえば、僕が個人レッスンでアドバイスをしても1つも通じないことがあります。
そこで「こんなに一生懸命言っているのに、なんでこの人はわからないんだろう」と思うと、ぶちキレてしまいます。
その時に「じゃあ、別の言い方にしよう」と、自分の言い方を変えることはできます。
人と接する仕事や人を指導したり教える側にまわった時も、同じです。
1時間話して、「あと1つだけ質問なんですけれども、こうするためにはどうしたらいいですか」と言われ、「それ今1時間話したよね。エッ、全部スルーですか」と思っても、「じゃあ、自分の言い方を変えていこう」と考えればいいのです。
相手の今のいっぱいいっぱいのレベルに合わせて、自分の接し方を変えます。
自分を成長させるのです。
怒りは、人間の成長につながります。
イラッとした時は、「今ここで引き出しを増やそう」と成長するチャンスです。
今自分がイラッとしたということは、この状況の中で解決できる引き出しがなかったということです。
相手がイラッとしている時も、自分がイラッとしている時も、新たな引き出しをつくっていこうと考えるのです。
これが、人間の器の成長です。
よく「器が大きい」「器が小さい」と表現します。
「器が大きい」と言われるかどうかは、いかにイラッとしないかで決まります。
イラッとするのは、キャパが小さい、器が小さいということです。
コップの水が、あふれている状態です。
ちょっとしたことでイラッとするのは、もともと器が小さいので波が起きるとすぐこぼれるからです。
大きい器は、ちょっとした波が起きてもこぼれません。
キャパが小さいと、荷物が少しでも大きくなると転覆します。
ところが、キャパが大きくなると、少々荷物が大きくなっても転覆しません。
イラッとすることに出会うと、その人のキャパがわかります。
この時に、「イラッとしていると器が小さいヤツだと思われる」と考える人がいます。
人からどう思われるかを考えている時点で、器が小さいです。
こういう人は、イラッとすることから抜け出せません。
「『イラッとしているから器が小さい人間だな』と思われたらどうしようと思わせて、おまえどうしてくれるんだ」という怒りになります。
怒りを乗り越えることは、自分がより器の大きい人間になろうと努力をすることです。
工夫をする、引き出しを増やすということであって、人からどう見えるかという話ではないのです。
中谷 彰宏 (なかたに あきひろ)
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。84年、博報堂に入社。CMプランナーとして、テレビ、ラジオCMの企画、演出をする。91年、独立し、株式会社中谷彰宏事務所を設立。ビジネス書から恋愛エッセイ、小説まで、多岐にわたるジャンルで、数多くのロングセラー、ベストセラーを送り出す。「中谷塾」を主宰し、全国で講演・ワークショップ活動を行っている。
■中谷彰宏公式ホームページ
http://an-web.com/
作品紹介
怒らない人は、仕事でも、恋愛でも、人間関係でも、チャンスをつかむ。怒りをコントロールし、品格を高める61の方法を紹介。
定価:本体1300円+税/学研プラス
バックナンバー
- 許してもらおうとするより、 工夫して前に進む。
- 怒っているのは、 困っているのだと自覚する。
- 自分を許せない人は、 相手も許せない。
- 1分以上の怒りは、 ムダなエネルギーの消耗。
- イラッとしたところに、ヒットのチャンスがある。
- 変えられないことを変えようとすると、怒りになる。
- 怒りは損だということを、知る。
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