私は勉強が好きだ。
東京・南青山の書斎に籠り、好きな勉強を好きなだけするという、
まさに勉強三昧の生活を送っている。
勉強の合間に、生業としている文筆業の執筆を粛々と行っている。
おかげさまで仕事のオファーは次々と舞い込み、
第1作執筆以降10年で、
著作数は約150冊、累計発行部数は280万部になる。
自分の興味の赴くままに、好きな勉強を楽しみ、
そして、その勉強で身につけた知恵と知識が新たな作品となり、
多くの人々のお役に立つ――。
私は毎日、ひとり書斎で勉強を続けながら、
こうして幸せな知恵の循環を享受しているのである。
ひとえに、独学の力と言えるだろう。
ところで、勉強の仕方について次のようにアドバイスする人たちがいる。
「何かを学びたければ、贅沢と思わずに立派な学校に通うべきだ」
「しかるべき専門家から直接教わらない勉強は邪道だ」
もし聞き手が納得しなければ、さらに次のような例まで挙げたりもする。
「あのゲーテも、独学での習得を非難しているように…」
独学の無意味さを声高に主張する人は、
主張する本人が高額セミナーの講師だったり、
お稽古事の先生を生業としていたり、ということが少なくない。
あなたは、そんな声を鵜呑みにしてはいないだろうか。
それで実際に成果が出ているならまだしも、
何年経っても変わらないのであれば、
あなたの貴重なお金と時間を無駄にしていることになる。
正直に告白すると、私もその「独学は邪道」という教えを健気に信じ、
その通りだと思っていた時期がある。
いや、正確には今でも、
しかるべき専門家に学ぶ姿勢自体は大切だと確信している。
だが、少なくともゲーテの時代と現代では、学習環境が大きく変わった。
それどころか、20世紀と今世紀を比べても環境はまるで違う。
私はこれまでに3000人以上のエグゼクティブ、
そして1万人以上のビジネスパーソンと対話を繰り返し、共に仕事をしてきた。
それらの経験を通して断言できるのは、次の事実だ。
「独学力は、人生で最大の武器である」
日々工夫を凝らし、自分なりの勉強法を編み出して学習を続ける人は、
これからの社会で極めて高い知的実力を発揮できるだろう。
前述した学習環境の変化の一例として、現代はわざわざ学校に通わなくても、
インターネットを通じていくらでも学べるようになった。
高額な授業料を払ったり、家と学校の間を毎日往復しなくてもいい。
それどころか、ネットの無料動画コンテンツのほうが、
より質の高い情報を提供してくれることも珍しくなくなった。
海外に留学もせず、書店に並んだ教材を駆使して独学で外国語をマスターし、
そのノウハウをネットの動画サービスで公開している人もいる。
「もしもあの時、学校に通わなくてよかったのなら、
その時間でもっと有意義な勉強ができたのに!」
これは私自身が痛感していることであり、
かつての同級生たちも、今になって異口同音に語っている。
たとえ実際に公言しなくても、本心でこう思っている人は多いはずだ。
さて、私は先ほど「専門家に学ぶ姿勢は大切だと確信している」と述べた。
私の本の読者には研究職に就いている人も多いため、あえてここで触れておくが、
研究者を目指して大学院で学ぶ際は、独学のみならず最小限の対面指導も必要だ。
これは私が大学時代に一次情報として教わり、今も通用すると考える事実である。
その理由は、あなたが今直面している事情に最適な参考文献や資料を、
その場でチョイスしてもらえる可能性が飛躍的に高まるからだ。
(研究設備という、自力では実現不可能な理科系特有のメリットは除いて考える)
もちろん対面指導を受けず、電話やメールでやりとりすることも不可能ではない。
だが、やはり常日頃から顔を突き合わせてコミュニケーションを取りつつ、
お互いが研究の進捗状況を正確に理解し合っているほうが、断然有利なのである。
この対面指導の重要性は、研究、文化、芸術、あるいはスポーツなど、
特定の技能を習得する世界に共通のものだと思う。
それでも私は、あえて言いたい。
研究、文化、芸術、スポーツの世界でも、対面指導の重要性は「1%」に過ぎない。
残りの「99%」は自らやり方を工夫し、
自分の力でとことん考え抜く「独学力」がモノを言うのだ。
一般的なビジネスパーソンであれば、
あらゆるケースで、独学によって人生を生き抜くことができる。
しかもその学習環境は、日々進化し続けている。
本当に、この時代に生まれてきた私たちは幸運なのだ。
独学を通じ、理想の人生を切り拓けるようになったこの時代に、深く感謝したい。
(次回より、千田式「独学」の具体的な方法について、お伝えしていきます)
(※この連載は、毎週月曜日・全8回配信予定です。次回は、6月25日10:00配信予定です)
千田 琢哉 (せんだ たくや)
文筆家。 愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。 東北大学教育学部教育学科卒。 日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。 コンサルティング会社では、多くの業種業界における大型プロジェクトのリーダーとして戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。 のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって 得た事実とそこで培った知恵を活かし、 “タブーへの挑戦で、次代を創る”をミッションとして執筆活動を行っている。
■E-mail
info@senda-takuya.com
■ホームページ
http://www.senda-takuya.com/
作品紹介
生き残るための、独学。
20代から人生を逆転する49の学習改革
20代ビジネスパーソンのカリスマ・千田琢哉が、独学でゆるぎない教養と知的戦闘力身につけ、社会で生き残る方法を説く!
定価:1,300円+税/学研プラス
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