第7回 「理解すること」から「実感すること」へ

ザザが教えてくれること

更新日 2020.07.17
公開日 2015.11.24
  • Facebook
  • LINE
  • Pinterest

 ザザの一家は父、妹を失いはしたが、なんとか家族再会を果たしました。神田はその感動を心に刻み込んで日本に帰ります。おそらく今後彼のマンガのシナリオで表現されることでしょう。

 けれども現実は、ザザの物語のようにはいかないことも多いのです。11月19日付朝日新聞朝刊に「コンゴ民主共和国 救済進まず」という見出しで、同国の女性たちへの無差別レイプの実態を報じた記事が掲載されていました。記事によると、(多くの被害者が名乗り出ないため数を特定するのは難しい、としながらも)被害者は年間約40万人を下まわらないだろうとのことです。さらに、被害者の中には18歳未満の女の子も多くいるとも…。吐き気を催すほどのひどい実態ですが、私はこの記事を読んで、みんながこのような実態を知る、というだけではいけないのではないかと思いました。

 このジャーナルコミックは、人道とか人道支援とはどういうことなのか?それを「理解させる」にとどまらず「感じさせる」役割も担っていると思います。赤十字国際委員会のスタッフの言葉により、人道支援の考え方は明快に語られています。しかし読み手にとって肝心なのは、語られたことをどう認識し、実感するか、ということでしょう。物語の中で「理解」から「実感」への橋渡しをしたのが、時に破天荒な行動をとってしまった神田でした。

 最後に少し話は変わりますが…。
「14歳の兵士ザザ」ではマンガによって問題を皆さんにお伝えしているのですが”伝える”ことに関して、ちょっと素敵なことを知りましたのでご紹介させてください。
 メロンパンが三度の飯よりも好き! というある女子大学生がいます。彼女はコンゴ民主共和国の惨状を知ったのがきっかけで、「メロンパンでコンゴ(民主共和国)を救うことに決めました」と、救済のためのキャンペーンなどを実施しているほどの人なのです。(今回は11月30日までですが、協賛店でのメロンパン販売収益の一部が同国救済のために寄付されるというものです。断続的にこのようなキャンペーン、プロジェクトを実行しているとのことです)ご存知でしたらごめんなさい。でも、伝える手段にはいろいろあるのだなと気づき、私はうれしくなりました。

(編集担当者)

 

作品紹介

14歳の兵士ザザ

ジュネーブ条約上ではいてはならない14歳以下の「子ども兵士」。しかし現実に世界の紛争地域に存在する。そこで1人のマンガ脚本家が赤十字国際委員会から許可されたジャーナリストとして、アフリカの紛争地域を取材。解決の糸口を探った渾身のジャーナルコミック。
作・大石賢一
漫画・石川森彦
監修・赤十字国際委員会
¥1,200+税/学研プラス
(旧学研パブリッシング)

 

バックナンバー

  • Facebook
  • LINE
  • Pinterest

あわせて読みたい