いいお医者さんは、会話力のあるお医者さんです。
注射や薬で治療するのではなく、会話で治療するのです。
患者さんにとっては、恥ずかしいこと、みっともないことを話しやすいお医者さんが、いいお医者さんです。
たいていの人が病院嫌いなのは、お医者さんに叱られるからです。
「なんでもっと早く来なかったんだ。ダメじゃないか、こんなになるまで放っておいて」と叱られるのです。
ただでさえしんどいのに、さらに怒られると思うと、ますます行きたくなくなります。
もう少し様子を見てみようということで、さらに症状が悪くなるのです。
お医者さんに「来てくれてありがとう」と言われたら、「来てよかった」と思えます。
症状がひどくなっていても、「こんなになって、しんどかったでしょう」と言われると救われます。
本来、お医者さんが「来てくれてありがとう」と言うのは、おかしいのです。
「ありがとう」と言うのは、患者さんのほうです。
歯医者さんで、痛い治療のあとに「頑張りましたね」と言われます。
頑張ったのは、先生です。
患者は、やってもらっているだけです。
僕は、2カ月おきに歯の定期検査に行っています。
「来てもらえるだけで、中谷さんは成功です」と言われると、ウレしくなります。
言葉の薬が、患者さんに効くのです。
お医者さんと患者さんだけのことではありません。
上司と部下でも、恋人同士でも言葉の薬があります。
薬にもなれば毒にもなるのが、会話です。
薬としての言葉を、たくさん覚えていくことです。
人を元気にする薬言葉のスタートラインが、挨拶なのです。
中谷 彰宏 (なかたに あきひろ)
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。84年、博報堂に入社。CMプランナーとして、テレビ、ラジオCMの企画、演出をする。91年、独立し、株式会社中谷彰宏事務所を設立。ビジネス書から恋愛エッセイ、小説まで、多岐にわたるジャンルで、数多くのロングセラー、ベストセラーを送り出す。「中谷塾」を主宰し、全国で講演・ワークショップ活動を行っている。
■中谷彰宏公式ホームページ
http://an-web.com/
作品紹介
好調の「うまくいくシリーズ」第6弾。「会話力のない人」は、モテないし、成功しない。話方を変えると、生き方が変わり、仕事も、恋愛も、人間関係もうまくいく。会話力をつけることでチャンスをつかむ、55の方法を紹介する。
定価:本体1,200円+税/学研プラス
バックナンバー
- 赤ちゃんは、自分の主張をする。 子どもは、自分の説明をする。 大人は、相手の利益を話す。
- 会話は、しりとりだ。
- 質問会話より、想像会話をする。
- 間接表現に、気づく。
- 「大ほめ」より、 「チョイほめ」が喜ばれる。
- 挨拶は、 すれ違いざまでもする。
- 自分からするのが、挨拶だ。 先にされて返すのは、挨拶ではなく、返事だ。
- 「今日も、きれいだね」より、 「今日は、きれいだね」と言う人がモテる。