相手の行動にとらわれず、 「自分」に集中しよう

石原加受子『「とにかく優位に立ちたい人」を軽くかわすコツ』セレクション

更新日 2020.07.17
公開日 2017.10.12
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◆ずるくても、嘘つきでも、卑怯でも、それは相手の自由
「優位に立ちたい人」を前にすると、その強烈さから、つい尻込みしてしまいがちです。その人が一人職場にいるだけで、緊迫した空気が漂って、針のムシロのような鬱屈した気分で仕事をしているという人もいるでしょう。
 けれども、「自分中心」の発想では、「他者の言動がどうであっても、それは相手の自由だ」という捉え方をします。
 仮に相手の性格が邪悪であっても、狡猾であっても、嘘つきであっても、卑怯であっても、それは、それぞれの家庭環境や周囲の環境の中で、自分を守るために身につけたものだからです。
 長年の経験の中で形成された性格ですから、すぐに変わるものではありません。
もちろん、それによって引き起こされるさまざまな問題もまた、その人が責任を負うべきものですし、自分で処理し解決すべきものです。そういった意味を含めて、「どんな生き方をするかは相手の自由」という捉え方なのです。
 相手がどうであっても、そんな相手に対して、それをやめるように要求することはできません。仮に、他者に期待する気持ちから、相手に変わるように迫ったとしても、相手と争いになるだけでしょう。
 なぜなら彼らは、そうは見えないかもしれませんが、戦って自分を守ろうとすることに汲々としているからなのです。
 そんな相手を変えることは非常に困難です。むしろ「自分中心心理学」では積極的に、そんな相手であっても、「相手の生き方の自由」を認めます。もちろんそれは「自分の生き方の自由を認める」を基本概念としているからです。
 人との肯定的な関わり方は、「私の自由を認める」「相手の自由を認める」ことから始まります。
 ですから、そんな相手との付き合いを「自分の問題」として捉えるならば、
・自分が、そんな相手と、どう付き合うか
・そんな相手の言動に対して、自分を傷つけないために、どうするか
 を考えていればいいのです。
 相手と争えば、もしも勝ったとしても、結局、自分のことも傷つける結果になります。だから、争わないで自分を守るスキルを身につける、これが最も重要なことです。換言すれば、こんなふうに「相手にとらわれず、自分の自由を行使する」ことが、自分中心なのです。

◆自分の心を感じ取ると、相手の心がわかる
「他者中心」の人たちは、とにかく、相手の心の内を知ろうとします。
 相手が何を考えているのか、何をしようとしているのか、自分に対してどういうふうに思っているのか。相手の心情や思惑や手の内をつかもうとすることに、エネルギーを注ぎます。
 自分中心心理学では、他者中心的に、相手の言動に注目してその意図を探るということは、おすすめしていません。
 それは、一つは、相手の胸の内や腹の中を知ったからといって、自分が有利になるように、それを活用できるとは思えないからです。
 むしろ、そうして相手を探るような意識で対峙すれば、かえって緊張関係をつくることになるでしょう(このことについては次章で詳しく述べます)。
 もう一つ、自分中心的捉え方をすれば、相手の思いを読もうとしたり、心を探ろうとしたりしなくても、相手の心は「自分が感じる」ことで簡単にわかるからです。
 むしろ、自分中心になって、自分の“感じ方”の精度を高めていったほうが、はるかに相手のことを知ることができるといえます。
 相手の心や腹の中を探ろうとしなくても、相手の意識は丸ごと、その言動に表れます。
 たとえば、あなたが相手の態度に対して「不快に感じた」としたら、それが相手の心であり、相手の表情に「嬉しい」と感じたら、それが相手の心なのです。
 あなたが、相手の側にいるだけで緊張するとしたら、それは、相手が固い心を持っていて、それを“感じて”あなたが緊張しているのかもしれません。
 相手から具体的な働きかけを受けていなくても、相手が心の中で抱いている意識は、何となく肌で感じます。それは錯覚でも気のせいでもありません。相手から、何らかの情報を“感じて”つかんでいるのです。

◆自分の心を“最優先”に
 優位に立ちたい人に不用意に傷つけられないためには、常に自分にもどって「私がどうしたいか」を最優先することです。
 優位に立ちたい人に振り回されないために、決断するとき、行動するときは「自分の心」を基準にしましょう。
 たとえば、自分が相手に傷つけられたとしても、相手の反応を恐れていれば、
「相手が腹を立てて、いっそう攻撃的になったらどうしよう」
「後から、嫌がらせをされたらどうしよう」
 などと否定的に考えるに違いありません。こんな他者中心の思考にとらわれれば、
「やっぱり我慢して、黙っていたほうが安全だ」
 となってしまいます。
 こんな自分の心を無視する発想は、想像以上に自分を傷つけています。しかもそうやって他者中心でいる限り、ますます解決が難しくなって、いっそう自分を傷つけることになるでしょう。
 ですから、もしあなたが、人間関係で、相手の言動によってネガティブな感情が起こったとき、それをそのまま放置してしまうとしたら、
「これが、自分を愛していないということなんだ」
 と振り返ってほしいのです。
 何よりも自分の心を大切にして生きる、これが「自分中心心理学」なのです。

(※この連載は、毎週木曜日・全8回掲載予定です。次回は、10月19日掲載予定です。)

 

石原 加受子 (いしはら かずこ)

心理カウンセラー。
「自分中心心理学」を提唱する心理相談研究所オールイズワン代表。日本カウンセリング学会会員、日本学校メンタルヘルス学会会員、日本ヒーリングリラクセーション協会元理事、厚生労働省認定「健康・生きがいづくり」アドバイザー。 思考・感情・五感・イメージ・呼吸・声などをトータルにとらえた独自の心理学をもとに、性格改善、親子関係、対人関係、健康に関するセミナー、グループ・ワーク、カウンセリング、 講演等を行い、心が楽になる方法、自分の才能を活かす生き方を提案している。
『母と娘の「しんどい関係」を見直す本』(学研プラス)、『仕事・人間関係「もう限界!」と思ったとき読む本』(KADOKAWA)、『わずらわしい人間関係に悩むあなたが「もう、やめていい」32のこと』( 日本文芸社)、『金持ち体質と貧乏体質』(KKベストセラーズ)など著書多数。

 

作品紹介

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