経営コンサルタント時代の私は、組織変革を請け負うことが多かった。
変革というのは、これまでと違うことをすることだ。
これまでナァナァでやってきた仕事のやり方を、
一度、バッサリと捨てなければならないこともある。
そうすることで、強引にでも背中を押さなければならない。
そうでないと、いつまで経っても〝変革〟などはできないからである。
100%、全員が納得できる状況を待っていては、
プロジェクトの期間などあっと言う間に過ぎてしまうし、
それでは私の気も済まない。
そこで、実行メンバーたちの51%以上、
つまり過半数に納得してもらった時点で、
私はこう言ったものだ。
「実行しないことには、いつまで経っても納得できません。
ストップの合図は私がします。それまで存分に突き進んでください」
するとメンバーたちは「それもそうだな」という顔をして、
恐る恐る動いたものだ。
実際は、私がストップをかけなければならなかったことはほとんどなく、
しばらくすると私の存在など関係なく、変革の楽しさに気づき、
みんなが自分の意思で動いてくれるようになったものだ。
人間は不思議なもので、
「とにかくやれ!」と強制されるとやる気がなくなるが、
「ストップの合図は私がします」と
実行を前提に背中を押すと自主的に動き出す。
また、先に挙げた言葉の後半部分の、
「それまで存分に突き進んでください」というお願いも効果があったようだ。
ストップがかかるまでやり放題、という自由を感じさせるからだろう。
子どもが「遊び放題」と言われて狂喜するように、
食べ盛りの青年が「食べ放題」と言われて夢中になって食べるように、
制限を外される時、人は気持ちがいいものだ。
あなたも自分の人生で、大好きなことを存分に味わってもらいたい。
(※この連載は、毎週月曜日・全8回掲載予定です。次回は4月2日掲載予定です。)
千田 琢哉 (せんだ たくや)
文筆家。 愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。 東北大学教育学部教育学科卒。 日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。 コンサルティング会社では、多くの業種業界における大型プロジェクトのリーダーとして戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。 のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって 得た事実とそこで培った知恵を活かし、 “タブーへの挑戦で、次代を創る”をミッションとして執筆活動を行っている。
■E-mail
info@senda-takuya.com
■ホームページ
http://www.senda-takuya.com/
作品紹介
著者・千田琢哉が経営コンサルタント時代に経営者たちと正面から向き合い、本気で投げかけた、真剣勝負の言葉の数々を紹介する。
定価:本体1,300円+税/学研プラス
バックナンバー
- 本物の幸運の持ち主は、必ずどん底から這い上がります。
- 最終的な勝者は、最初は失敗するものですよ。
- 勝率の高さは問題ではなく、勝つべき時に勝てばいいのです。
- 部下が軽蔑するのは、間違えるリーダーではなく、決断しないリーダーです。
- 斜陽業界は、逆にチャンスですよ。
- 最後の泥沼までお付き合いします。
- 経営者の心を揺さぶる“本気の言葉”
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