全国書店員が選ぶ「第9回料理レシピ本大賞 in Japan 2022」において、今日のごはん、これに決まり! Mizukiのレシピノート決定版!500品』(以下『Mizukiのレシピノート』)が料理部門の「準大賞」を受賞。
 この本の著者であり、SNSのフォロワー数が100万人を超える人気料理研究家のMizukiさんに、同書制作の裏話や、ベストセラーを支えるファンへの思いなどを聞きました。

「この人となら“総まとめ本”を作れるかも」……そう思ったのがGakkenの編集者でした

――あらためまして、この度は受賞、おめでとうございました!

 ありがとうございます。

――受賞の感想を聞かせてください。

 もう、本当に嬉しくて。これまでも何度かノミネートされたことはあったのですが、最終選考で入賞したことはなかったので、今回「やっと…」という感じで、本当に嬉しかったです。

 ずっと前から、これまでブログで紹介したレシピの「総まとめ」的な位置づけの、レシピがいっぱい載っている本を作りたかったんです。でも、「総まとめ本」は、すぐに作れるものでも、また、何度もやれるものでもないですから、誰に相談すればいいんだろう、どこの出版社さん、どの編集さんにお願いすればいいんだろう、って、考えあぐねていました。

 「いつか作りたい」と思いつつ、誰にも言えずにいたのですが、以前『Mizukiのラクしておいしい!ほめられごはんThe BEST』『Mizukiの今どき和食をいっしょに作ったGakkenの岡田好美さんとならできそう、と思ったんです。年齢も近いし、ふたりとも根がまじめな似た者同士。いわゆる「尖ったこと」が苦手で、「尖ったこと」をやろうと思ってもできないタイプです。
 岡田さんとは本当に気が合うので、「これまでにブログやインスタグラムで公開したレシピの中から300〜400品をセレクトして総まとめ本を作りたい!」と、思い切って打ち明けてみたんです。

――編集担当からは、どんな反応がありましたか?

 最初は「えっ!?」と驚かれたのですが、すぐに「明日、会社で相談してみます」と言ってくれて。その翌日「『絶対やった方がいい』と言われました」と速攻で返事がきました。しかも「レシピ数は500品を目途にできるだけ載せたい」と。当初考えていたよりもかなり品数が多くて、そんなに多いとレシピが読みづらくなるのではないかという心配もあったのですが、料理の工程写真は入れず、シンプルに材料&作り方と完成写真だけにして、とにかくたくさんのレシピを掲載しましょう、という方向で進めることになりました。

▲Mizukiさんのレシピ考案は必ず手書きのレシピノートで。なんと現在55冊目。

――このタイミングで総まとめ本を出したいと思った理由は?

 やっぱり、コロナでみんな困ってたんですよ。SNSでフォローしてくれる人たちから、「家にいる時間が増えて、日々のごはんに何を作ったらいいのかわからない」という声がたくさん届いていたんです。なので、「今こそレシピがたくさん載っている本を出したい!」と強く思いました。こういうときに必要なのは、やっぱり料理のレパートリーかな、と。

 『Mizukiのレシピノート』は、今までブログやInstagramで紹介したレシピをベースに、新規レシピも含めて計500品を掲載しているのですが、なによりも、私のレシピは6000品以上あるので、500品を選ぶという作業が大変でした。出し惜しみせずぜんぶを載せた、私の集大成です。

 「総まとめ本」は、一生のうちにそう何度も作れるものではありませんから、これで売れなければ、もうあとがないのかな…、と覚悟するくらい、ある種「賭け」のような気持ちもありました。

▲「鶏もも肉」にいたっては50品も掲載!

――編集作業は大変だったのではないですか…?

 特にデザイナーさんが大変だったと思います。でも、もう全員パニックでした。授賞式のあいさつで「誰も全貌を把握していませんでした」と言っちゃったんですけど(笑)、編集担当の岡田さんの頭の中には完成像が見えていたようです。それ以外の制作チームのメンバーは、いつ、どんな形になるのか、誰もわかっていなかった気がします。岡田さんでさえ、ときどき「え!? え!? ちょっと待って!」みたいな感じでしたから(笑)。校正の段階は、特に混乱していて、やってもやっても終わらなくて、でも締切までには終わらせないといけないし。プレッシャーでナーバスになってましたね。

 これまで、同時進行で3冊の本を作ったり、毎日SNSを更新しながら企業のレシピ開発の仕事をしたりしていたこともあったのですが、この『Mizukiのレシピノート』だけは、私にとって「賭け」だったので、ほかのいろいろな仕事を断って、制作に専念していました。そうしたら「最近、仕事を控えているそうですが…」と心配してくれる人もいたりして。終わったときは、とにかく無事に完成してよかった、もうそれだけで満足でした。

「押したら開く」「辞書みたい」シンプルに突き詰めた使いやすさ


――発売後の手ごたえはいかがでしたか?

 まさか、ここまで売れるとは思ってもみませんでした。「総まとめ本を作りたい」と言い出したのは私ですが、すでに世に出ているレシピをまとめたところで、買ってくれる人がいるのかな、とも考えていたんです。でも、私のブログやインスタグラムの存在を知らずに、本屋さんで見て買ってくださった方もたくさんいらしたみたいで、すっごく嬉しかったです。

 それに、SNSでお付き合いのある方たちからは、思いもよらぬ反応があったんです。
 「まとめてくれて、すごく助かった」みたいなコメントがたくさんあって。私がブログを始めたのは、8〜9年も前なので、投稿記事が多すぎて、また作りたいレシピを探せないらしいんです。「あのときのレシピが載っていて、すごい嬉しかった」とか、「懐かしくて、当時のことを思い出しながら作りました」とか、長年付き合っているからこそのコメントをたくさんいただいて嬉しかったです。私のことを娘のように思って応援してくださる方が、いっぱいいらっしゃるんです。

――ファンのみなさんからは、ほかにどんな反応がありましたか?

 あと「本の仕様」に関して、みなさん褒めてくださいましたね。「押したら開く!」と(笑)本を開いてグッと押すと、よく開く特殊製本仕様になっているんですよ。本を開いたまま、レシピを見ながら料理ができて、しかも丈夫でページがはずれない。共感するコメントをたくさんいただきました。

 それをGakkenの製作資材担当の方が見てくださって「すごく嬉しい!」と喜んでくれたそうなんです。で、そのことをインスタライブで伝えると、「すごい! すごい! この仕様、すごい!」と、また盛り上がったりして。
 これだけのページ数がある本には当たり前の仕様だったとは思うんですが、出版社のほうで、ちゃんとそういうところまで考えていただいて、すごくありがたかったと思っています。意外とみんな、こまかいところまで見てくれているんですよ。カバーの紙がグロス加工なのかマット加工なのか、とか。今回は「本のサイズがいい」と言ってくれる人もいましたね。▲「辞書みたい」なインデックス。手元の食材からすぐにレシピを検索できるのは、掲載レシピがたくさんあればこそ。

 「インデックスが付いているのが見やすい」と言ってくれる人も多いです。食材カテゴリ別の構成になっているので、辞書を引くみたいにレシピを探せるんです。
 これは岡田さんが考えてくれたんですけど、通常の80100品くらいのレシピが載っている本だと、1つの食材につき数品しか紹介できないので、なかなか辞書みたいにはできないそうなんです。なので、「今こそやるべきときがきた!」と、気合が入っていて(笑)、制作時には「辞書みたいに!」「辞書みたいに!」と、ずーっと呪文みたいに言っていましたね。

 『Mizukiのレシピノート』は、たとえば「鶏もも肉」のページを開けば、鶏もも肉を使うレシピが50品も載っていますから、まさに辞書みたいなインデックスが役立ちます。
 最初は、「辞書みたいに」の意味が、私にはよくわからなかったんですけど(笑)、あ、なるほど、これが、この本のセールスポイントなんだな、と気づき、以来、いろんなところで言ってましたね、「辞書みたいに」「辞書みたいに」って。

レシピの先にある大切なことを、SNSを通して教えてもらいました

▲Instagramで毎朝7~8時にレシピを更新。インスタライブで「唐揚げ」の作り方を実演したときには、唐揚げのレシピ保存数が8万件に。

――100万人以上のフォロワーを持つMizukiさんですが、この本は、これまでSNSを通して交流してきたファンのみなさんの声の「総まとめ」にもなっているんですね。

 本当にそうなんです。私、レシピを投稿したときの反応がどうだったかというのは、全部覚えていますから。
 実は、「簡単だった」「節約できた」というような感想をいただくことはほとんどないんです。「家族が美味しいって言ってくれた」とか「お弁当にも入れてほしいと言われた」とか、みんな、自分以外の大切な人の感想なんです。「子どもといっしょに作ったら喜んでくれた」とか「普段何も言わない思春期の息子が、『おかわりないの?』と言ってくれた」とか。もう、読んだだけで泣けてきちゃいます…。
 「レシピのおかげで、食卓でこんなことが起こった」というエピソードを、みなさん、物語のように教えてくれるので、私も気持ちが入り込んでしまうんです。

 料理をする側って、食べてくれる人たちのことしか考えてないんですよ。簡単レシピや時短レシピが求められるのは、自分がラクをして早く作りたいからではなくて、食べる人を待たせたくないから。「自分が仕事で帰るのが遅くなるから、早く作って食べさせてあげたい」と、そう思うから、時短レシピを求めるんです。節約だって、家計のことを考えれば必然的にそうなりますよね。
 レシピの先にある大切さというか、そこに、みなさんが幸せを感じる瞬間があるんだということを、私はSNSを通して気づかせてもらいました。

 今回も、SNSで受賞の報告をしたら、1時間ぐらいで200300件ものコメントが、それも思わず涙がこぼれるようなコメントばかりいただいて…。そういうみなさんの思いに、何かの形で応えたい、いつもそれだけを思ってやっています。

おかずのマンネリ化、栄養バランス…「よくあるお悩み」もSNSのやりとりから集まったもの。

――最後に、これからの抱負を聞かせてください。

 今は正直、現状維持でいっぱいいっぱいというか…。実は、この本を出版したときに、一度燃え尽きたような感覚があったんです。今までやってきたことを1冊の本にまとめることができたから、ひと区切りつけたい気持ちが、どこかにあったんでしょうね。もう8〜9年の間、ランキング1位であり続けることを考えてきて、正直ちょっとしんどかったんだと思います。

 私は若いころ、摂食障害に悩まされていて…。記憶が飛んでしまうような、長い空白の時間がありました。そこから抜け出すきっかけをくれたのが「料理」です。「私には料理しかない!」「ブログランキングで1位になるしかない!」と、それだけを考えるようになったんです。
 ところが、実際、一番になってしまうと、今度はそこから落ちるのが怖くてたまらない…。がんばり続けるしかなかったんです。私は融通のきかない人間なので、「やる」か「やめる」しか選べないようなところがあります。もし、今回「大賞」をいただいていたら、本当に燃え尽きてしまって、「もうレシピ本は作らない」と言っていたかもしれません。

――じゃあ、準大賞でよかったんですね!?

 そうですね(笑)。

――では『Mizukiのレシピノート』の「2」で、ぜひ大賞を狙ってください!

 しばらくは無理ですよ(笑)。だって、今回の500品は8〜9年かかって考えた6000レシピから厳選したんですよ! 同じ数のレシピを作るのに、あと何年かかることやら…。本気で大賞を狙うなら、まったく違うアイディアで、まったく別の料理本にトライするしかないと思うんです。でも、今の私は、まだそんなことまで考えられないですから。

 今は、これまでの私を支え続けて、今回の受賞を後押ししてくれたファンのみなさんに、何かの形で応えたい。その思いしかないです。どうやって応えていけばいいのか、少なくとも、そのひとつの方法は「レシピ」だと思うので、みなさんに喜んでもらえるレシピを公開し続けていきたい―。それが今の私の抱負です。

Mizuki プロフィール

 料理研究家。和歌山県在住。調理師免許とスイーツコンシェルジュの資格をもつ。ほぼ毎日更新中のブログ「Mizukiオフィシャルブログ〜奇跡のキッチン」では、日々、「簡単・時短・節約」をテーマにレシピを発信し続けている。2016年から3年連続レシピブログアワードグランプリを受賞し、現在殿堂入りを果たす。ブログのPV数は月間300万以上。Instagramも日々更新中で、現在フォロワー100万人を突破(20228月時点)
 雑誌やテレビをはじめ、企業のレシピ開発や、webメディアで活躍中。2022年放送のTBS系日曜劇場「オールドルーキー」では、ドラマに登場するお弁当の料理監修を担当した。
また、過去に摂食障害との闘いを克服した経験をもつことから、食べることの大切さや、同じ病に苦しむ人へのアドバイスなども積極的に行っている。著書に「Mizukiの混ぜて焼くだけ。はじめてでも失敗しないホットケーキミックスのお菓子」(KADOKAWA)、「Mizukiの今どき和食」(小社刊)、「Mizuki2品献立」(マガジンハウス)などがある。
近著「今日のごはん、これに決まり!Mizukiのレシピノート決定版!500品」(小社刊)は累計発行部数20万部を突破し、第9回料理レシピ本大賞 in Japan 2022準大賞を受賞

今日のごはん、これに決まり!Mizukiのレシピノート決定版!500品』

『今日のごはん、これに決まり!Mizukiのレシピノート決定版!500品』書影

■書名:『今日のごはん、これに決まり!Mizukiのレシピノート決定版!500品』
■著者:Mizuki
■発行:Gakken
■発売日:2021年9月24日
■定価:1,650円 (税込)

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■著者:Mizuki
■発行:Gakken
■発売日:2022年11月10日
■定価:1,430円 (税込)

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