2018年度から小学校の算数は、計算をして答えを出すだけではなく、数字を表やグラフにわかりやすくまとめて、そこから何がわかるのかを読み取るといった授業が増えていきます。
このように、数字を表やグラフにわかりやすくまとめる力は、表やグラフがたくさん出てくる理科や社会といった他の教科でも必要であるとともに、実は、社会に出て仕事をして行く上でも統計・分析力として役立ちます。今回は、2018年度から変わる算数学習のポイントをご紹介します。
新しい算数の授業はこのように変わる! 3つのポイント
2018年度から始まる新しい算数の授業は、次に挙げる3つの力を身につけることがポイントになっています。
1.身の回りで起こる出来事を数字に置き換えて理解する力をつける
これは、ものの大きさや重さを数字にして比べたり、そこから見えてくる法則を式にまとめたりする力です。
例えば、「1分ごとに2cmずつ燃えていく20cmのロウソクが、5分燃えたら残りは何cmになる?」といった問題を式にして考えてみます。
2.数字を図形にして考える力をつける
数字をグラフに表してみたり、そこから読み取れることを考えたりする力です。
例えば、先ほどのロウソクの燃え方を表にすることで、法則を見つけて式を立てやすくする、といった学習の進め方があります。
このように、答えを出すだけで終わるのではなく、問題解決に向けていろいろな角度から分析し、考える力をつけていきます。
これらロウソクの例は、いずれも小学6年生で学習する「比例と反比例」の学習項目にあたりますが、日常生活の中でも、法則を考えたり表にして考えたりすることはあると思います。学校で学習する以前から、このような習慣づけができると授業の理解もスムーズに進むでしょう。
3.物事を数字や図形にして表し、活用する力をつける
調べたこと、わかったことについて、明確な理由や裏付けとなるデータ(情報)をもとに説明する力です。データとは、計算で出した数字をはじめ、見つけた法則、表やグラフなど多岐にわたります。子どものうちからこうしたデータを扱い、また人に説明することで、筋道を立てて物事を考えたり、解決策を考えたりといった論理的思考力を養うことにつながります。
新しくなる小学校の算数。そのねらいとは?
各学年に共通しているのは、「身の回りのものに対応させて考えよう」「学んだことを日常に生かそう」という2点です。
「算数が日常生活の中でどのように役立つのか?」、「算数なんて将来使わないのでは?」というお声を伺うことがありますが、算数の学習内容は、実は私たちが生活をしていく上でなくてはならないものなのです。
例えば、単位の変換。料理のレシピを見てみると、だし汁の量の表記一つとっても「200cc」だったり、「カップ1杯」だったりします。また、お店で売っている調味料のボトルには「200ml」と表記されています。いずれも同じ量ですが、単位の変換がわかっていないと、何を目安にしてよいのかわからなくなります。
また、「カップ2分の1」といわれたとき、サッと「カップ2分の1=100cc=100ml」と頭の中で判断するときにも、算数の割り算や割合の考えが用いられています。これらは生きる力のひとつであり、算数的な理解が瞬発的にできるようになると、日常生活の利便性もグッと上がります。
また、物事を数字や図形に置き換え、表す力は、問題発見・解決力をつけることにつながります。社会に出て仕事をするようになると、一つの正解を出すのではなく、そのとき、その内容によって最もよい方法を考えて取り組むことが求められます。状況に応じて適切な方法を見つけるためには、データを集めて分析する力が大きな役割を果たします。こうした作業に子どもの頃から慣れ親しむために、小学校の算数は変わっていくのです。
保護者の皆さまの頃と比べ、小学校の算数の学習内容は異なっているかもしれません。まずは、保護者の皆さまも「算数の授業が変わる」ということを念頭に置いていただき、お子さまの教科書や学習内容をチェックしてみてはいかがでしょうか。
【執筆者紹介】:特定非営利活動法人日本ITイノベーション協会
平成16年1月に内閣府からの認証を得て以来、「Instructional Technology(教育的技術)」を旨とし、国際的人材育成指標である「経済協力開発機構(OECD)」が提唱する各種コンピテンシーをベースに人材育成の基軸を設定。国や各自治体・各大学・各企業が制定している個別指標と紐付けてカスタマイズし、実用可能な教育プログラムの開発を手掛ける。国の教育指針である「生きる力」とは、自分で問題発見を行い、周囲を巻き込み問題解決していく力であると捉え、「社会に出て、社会を築く人材」を輩出するための教育プログラムの開発を行い、小学生~高校生の教育にも力を入れている。
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※このコラムは、「ガッケン!ハッケン!学研ゼミ 保護者のよみもの ハッケン!みっけ!」に掲載されていたものです。
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