私は今までに3000人以上、経営者と呼ばれる人たちと対話をしてきた。
とりわけ私が経営コンサルタントの時代に、彼らと極めて濃密な時間を過ごした。
経営コンサルタントとは、企業参謀のことである。
参謀とは、もともと軍隊の指揮官に仕えて戦略立案をしたり、
戦術を隊の末端まで徹底させるために奔走したりする存在である。
だが私はそれに加えて、「言葉」というミッションを自分に課していた。
言葉によって経営者の心を揺さぶり、実際に動かし、
目標達成のノウハウを習慣化してもらう。
それが、当時の私の主な仕事だった。
もちろん、成功体験ばかりではなく、失敗体験も数え切れないほどある。
今、思い出しても、穴があったら入りたい衝動に駆られるような苦い経験も多い。
だからこそ、私は言葉の影響力を痛烈に実感したし、そのおかげで、
今ではこうして本を書くことができるようになったと、その経験に感謝している。
一般に、企業経営者は年収が高く、社会的地位も高い。
普通の人から見れば、経営者の多くは〝成功者〟と呼んでもいいだろう。
そんな成功者たちの意外とも思える共通点に、孤独と、繊細さがあった。
成功者たちは本質的に孤独であり、また繊細であったため、
自分に向けられた言葉にとても敏感に反応したのである。
私はこの事実を踏まえ、ある時は熱い応援の言葉を、
またある時には厳しい直言を進呈することにより、経営者たちの心を揺さぶった。
彼らが孤独で、繊細で、言葉に敏感であるほど、投げかけた言葉はその力を発揮した。
私の「本気の言葉」が強ければ強いほど、彼らも大きく突き動かされ、
目標達成への正しい道筋を、自ら歩み始めたのだ。
「本気の言葉」が成功の活力の源泉であるという事実は、経営者だけに限らない。
繊細な心を持ち、言葉に敏感な、本書の読者であるあなたも同様である。
「本気の言葉」を自らに投げかけることで、目標にぐっと近づくことができる。
「そんな一部の成功者と自分とでは、次元が違う」
もしかするとあなたは、こんなふうに違和感を抱くかもしれない。
だが、それはとんでもない誤解であることに気づいて欲しい。
なぜならあなたも、立派な経営者だからである。
あなたは、あなたの人生の経営者なのだ。
人は誰もが、自分自身という人生を背負った経営者なのだ。
誰もが生まれてくる瞬間は独りぼっちだった。
同様に、誰もが死ぬ瞬間も独りぼっちなのだ。
人はみな本質的に孤独であり、進む道は自分自身で決断するしかない。
生まれてきたことの責任は、最終的に自分が取るしかない。
そう考えると、自分自身が「人生の経営者」であるという事実に気づくはずだ。
あなたも経営者である以上、繊細にならなければならない。
繊細というのは弱いということではなく、聡明さの証しだ。
傷つきやすいということは、それだけ感性が鋭く、頭脳明晰だということである。
では、頭脳を磨くためにはどうすればいいのか?
それは当事者意識を持って、読書をすることである。
読書し、実際に試し、
人と語り合い、それらをひたすら繰り返そう。
その過程で、あなたと「本気の言葉」の出逢いは必ず訪れる。
(※この連載は、毎週月曜日・全8回掲載予定です。次回は3月19日掲載予定です。)
千田 琢哉 (せんだ たくや)
文筆家。 愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。 東北大学教育学部教育学科卒。 日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。 コンサルティング会社では、多くの業種業界における大型プロジェクトのリーダーとして戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。 のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって 得た事実とそこで培った知恵を活かし、 “タブーへの挑戦で、次代を創る”をミッションとして執筆活動を行っている。
■E-mail
info@senda-takuya.com
■ホームページ
http://www.senda-takuya.com/
作品紹介
著者・千田琢哉が経営コンサルタント時代に経営者たちと正面から向き合い、本気で投げかけた、真剣勝負の言葉の数々を紹介する。
定価:本体1,300円+税/学研プラス
バックナンバー
- 本物の幸運の持ち主は、必ずどん底から這い上がります。
- 最終的な勝者は、最初は失敗するものですよ。
- 勝率の高さは問題ではなく、勝つべき時に勝てばいいのです。
- 部下が軽蔑するのは、間違えるリーダーではなく、決断しないリーダーです。
- 斜陽業界は、逆にチャンスですよ。
- ストップの合図は私がします。それまで存分に突き進んでください。
- 最後の泥沼までお付き合いします。
- 経営者の心を揺さぶる“本気の言葉”
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