あなたは学生時代に英語の授業で、
abandon=give up だとか postpone=put off だと教わらなかっただろうか。
それらは大まかに正しいが、両者に込められたニュアンスはまるで違う。
いずれも前者の abandon や postpone は質の高い言葉で、
後者の give up や put off は平易な言葉である。
あるいはTOEIC受験の常連なら誰もが知るように、
「無料」は平易な語彙(ごい)の free ではなく、
あえて complimentary として問題文に出題されることが多い。
両者の意味はほぼ同じなのに、
どうして free ではなく執拗に complimentary で出題され続けるのか。
その理由は、
「ビジネスでは、より知的な語彙を備えるべきだ」
という出題者の意図にある。
たとえば、free が単に「タダ」というニュアンスであるのに対して、
complimentary には「感謝」の念が吹き込まれており、
これは“無料でご奉仕させていただく”というニュアンスである。
つまり、ビジネスパーソンたるもの、
常にこうした高潔な意識を持つべきであるという思想がここに表れている。
本書(『20代で人生が開ける「最高の語彙力」を教えよう。』)でもこれから述べるが、
日本語でもこれは同様で、
あらゆる言語には質の高い語彙と、平易な語彙が存在する。
もちろん、むやみに難しい語彙力をひけらかすような
衒学的(げんがくてき)な態度をとればいいというものではない。
大切なのはTPOを正確かつ瞬時に把握し、
これまでのあなたの人生を総動員して言葉をベストチョイスできることなのだ。
そのためには「質の高い語彙力」を習得し、
いつでも自由自在に引っ張り出せる状態にしておくことである。
「やさしい言葉しか使えない」のと、
「やさしい言葉も使える」のとでは、まるで意味が違う。
両者の差は、宇宙の拡張現象の如く永遠に拡がり続ける。
自ら気づいて実行に移し習慣化しなければ、その溝が埋まることはない。
質の高い語彙力を自分の血肉にするためには、
たくさん本を読むだけではなく、
実際に言葉を使い、
何度も恥をかきながら修正し続けることだ。
あなたは日々粛々と、楽しみながら、語彙力という知性の爪を研ぎ続けることだ。
本書では、私自身がビジネスの現場で使い続けて実際に成果が出た事例、
あるいはこれまで出で逢ってきた長期的成功者たちが、
自然に使いこなして成果を出していた事例を惜しみなく披露した。
「言霊(ことだま)」と言われるように、言葉にはそれを発する人の魂が籠もっている。
上質な人生を創りたければ、上質な言葉を発し続けることだ。
本書がその突破口になれば幸いである。
(※この連載は、毎週月曜日・全8回掲載予定です。次回は1月22日掲載予定です。)
千田 琢哉 (せんだ たくや)
文筆家。 愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。 東北大学教育学部教育学科卒。 日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。 コンサルティング会社では、多くの業種業界における大型プロジェクトのリーダーとして戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。 のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって 得た事実とそこで培った知恵を活かし、 “タブーへの挑戦で、次代を創る”をミッションとして執筆活動を行っている。
■E-mail
info@senda-takuya.com
■ホームページ
http://www.senda-takuya.com/
作品紹介
仕事やプライベートで質の高い人間関係を築き、確かな結果をつかみ、人生を切り拓く武器となる「最高の語彙力」を本音でコーチ!
定価:1,300円+税/学研プラス
バックナンバー
- “頑張ります!”より、 “始めました”。
- この蔵書はまさに汗牛充棟ですね。
- 失念しておりました。
- 判断は正誤で、決断は好悪で。
- 以上は現象面に過すぎません。ここからは本質をお話しします。
- 大同小異だとわかり、光栄です。
- 相対的にではなく、絶対的におススメです。
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