まず、他人の基準に とらわれない「自分中心」の 生き方を身につける

石原加受子『「とにかく優位に立ちたい人」を軽くかわすコツ』セレクション

更新日 2020.07.17
公開日 2017.09.28
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◆「自分中心」「他者中心」という、人生の初期設定
 前回まで「優位に立ちたい人」の心理と行動をご紹介しました。いったい、そうした人たちを軽くかわす、賢い対処法とはどのようなものでしょうか。
 それを考えていく前に、まず知っておいていただきたいのが、「自分中心」と「他者中心」の生き方の違いについてです。
 私は“自分中心心理学”を提唱しており、この中で30年近く、「自分中心」「他者中心」という概念を語っています。
 この「自分中心」とは、あらゆる著書で述べていることですが、「自分の感情や、気持ち、欲求」を優先するという捉え方です。
 人生の基盤とするべきものは、自分自身です。
 私たちは、本質的に「自分を大事にしたい」という欲求をもっています。
 また、愛し合いたい、協力し合いたい、相手に尽くしたいという欲求も、根源的な能力として備えていますし、その満足感や喜びや幸福感も知っています。
 自分の心を無視してまで、他者のために尽くそうとしなくても、自分を大事にしていけば、自然と、他者も大事にしたいという欲求につながっていきます。
 ただ、そんな能力を発揮し満たすには、互いを「認め合う」ことが前提となります。それは「お互いの“自由”を認め合う」ということです。
 これが自分中心の基本を成すものです。パソコンに例えるならば、これは人生の“初期設定”ということになるでしょう。

 他方で、「他者中心」という初期設定もあります。
 これは自分ではなく、社会の規範やルールや規則、一般常識といった、外側の基準を自分の判断基準とする生き方です。本来、自分が判断して選択するはずの基準を、自分ではなく、自分以外の外側に置いています。
 こうした人は、自分の行動や考えが他者の基準にそぐわなければ、自分の気持ちや感情や欲求は後回しで、必死になって他者に合わせます。
 自分を認めるためには「他者と比較する」ことが必要で、常に他者との間で自分の優劣や強弱を競うようになります。そして、こうした絶え間ない他者との競い合いの中で、他者への支配性がだんだんと強化されていくのです。
 これが優位に立ちたい人に特有の、まさに他者中心の生き方の典型なのです。

◆不自由な「他者中心」の世界に生きる人々
 他者中心の人たちの人生を支配しているのは、「しなければならない」という意識です。そこには、人間が本来有している自分の気持ち、感情、欲求というものが、すっぽりと抜け落ちています。
 しかも現代はその上に、大半の人たちが、
「できなければならない。できて当たり前。できなければ、自分が劣っている」
 といったふうに、本来、自分が持っている価値や本質を無視した視点で物事を見ています。
 しなければならないし、それができなければならない、ということを自分に義務化、強制化していけば、私たちにとって最も大事な、「自分の気持ちや感情や欲求」は、どんどん削がれていくでしょう。
 他者中心の人は、他者との優劣や強弱の競争に勝つために、他者への「支配」を目指します。
 一方で、自分中心の人は、お互いを認め合う「自由」を目指します。
 お互いの「自由」が保証されてこそ、私たちに本来備わっている欲求は、建設的、発展的、希望的なものへと発揮されていくのです。
 自分中心の概念はこの視点に立っています。
 この「自由」という視点で見ると、現代の社会で生きる私たちが、いかに「不自由な生活」を強いられているかに気づくのではないでしょうか。
 また、こんな自分中心の視点に立てば、逆に「優位に立つ」ことだけを目標として生きている人たちが、いかに不自由な世界で生きているか、彼らに対する認識が、少しずつ変化してくるのではないでしょうか。

◆「自分中心の人」になって、「他者中心の人」から自分を守る
 もしも、あなたがこうした優位に立ちたい人たちと一緒にいたならば、打ちのめしてやらんばかりの緊迫感や、自分を傷つけたら絶対に許さないと言わんばかりの拒絶感が彼らから伝わってきて、「一瞬たりとも気が抜けない」といった息苦しさを覚えるのではないでしょうか。それこそ、彼らが発するそんなネガティブな荒々しい感情に捕縛されて、塗炭の苦しみを味わうことになるでしょう。
 もちろん、そんな相手とはつき合わないことが最上策ですが、職場や家庭など、物理的に離れられない相手であれば、そうもいきません。
 何しろ、優位に立ちたい人の、他者に対する要求は度を超しています。
 彼らが抱いている心の要求を言葉にすると、こんな感じです。
「私の心を1から100まで把握して、私の心に適った反応をして、お礼を言ったり感謝したりしなければ、絶対に許さない!」
 優位に立ちたい人は、大なり小なりこんな意識を根底に抱いて、それを相手に要求しています。
 そんな人たちに対して、自分も同じように他者中心的な発想で要求に応えようとしても、彼らは満足することを知らないために、どこまで行っても終わりの見えない泥沼にはまり込んでいくでしょう。
 かといって、相手と同じような勢いで対抗していけば、血で血を洗うような熾烈な争いへと発展していくのは明らかです。
 
 こんな相手には、どんなスタンスでいればいいのでしょうか。そして、どうすれば自分を守ることができるのでしょうか。
 人生の初期設定が他者中心なのか、自分中心なのかでは、同じ出来事が、全く違って見えます。そのために対処の仕方も、ときには正反対となることもしばしばです。
 多くの人たちがすでに、他者中心の発想では解決しないことを、痛感してきているのではないでしょうか。
 どんな場所にも優位に立ちたい人は必ず現れて、避けて通ることは困難です。
 これからは、一人ひとりが自分中心の生き方をすることで、優位に立ちたい人にならないようにするのと同時に、優位に立ちたい人から距離を置き、身を守ることが必要なのです。

(※この連載は、毎週木曜日・全8回掲載予定です。次回は、10月5日掲載予定です。)

 

石原 加受子 (いしはら かずこ)

心理カウンセラー。
「自分中心心理学」を提唱する心理相談研究所オールイズワン代表。日本カウンセリング学会会員、日本学校メンタルヘルス学会会員、日本ヒーリングリラクセーション協会元理事、厚生労働省認定「健康・生きがいづくり」アドバイザー。 思考・感情・五感・イメージ・呼吸・声などをトータルにとらえた独自の心理学をもとに、性格改善、親子関係、対人関係、健康に関するセミナー、グループ・ワーク、カウンセリング、 講演等を行い、心が楽になる方法、自分の才能を活かす生き方を提案している。
『母と娘の「しんどい関係」を見直す本』(学研プラス)、『仕事・人間関係「もう限界!」と思ったとき読む本』(KADOKAWA)、『わずらわしい人間関係に悩むあなたが「もう、やめていい」32のこと』( 日本文芸社)、『金持ち体質と貧乏体質』(KKベストセラーズ)など著書多数。

 

作品紹介

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