社会人の勉強は、自分から学びたいと思って始めるものばかりではない。職務上、あるいは立場上「気は進まないが、学ばなければならない」といった状況もあるだろう。
たとえば不動産会社に勤めているから宅建の資格を取得しなければならないとか、世界展開している企業だからTOEICで○○点以上取らなければ昇進できない、などという場合だ。
毎日忙しいうえに、そんな勉強なんてする時間はない。
そういうとき、300万の人は通信教育を選ぶ。
通信教育の最大のメリットは、場所や時間を選ばず「自分のペースで勉強できる」点だ。最近ではスマホやタブレット向けの動画講座や添削指導サービスもあり、通学に匹敵する学習環境も整っている。非常に効率的に勉強できそうだ。
――と、本当にそういえるだろうか。
「強制される」というメリット
通信教育のメリットが自分のペースで勉強できる「自由さ」にあるとしたら、裏返していえば「自己責任」ということだ。
つまり、自己の責任においてモチベーションを維持管理できる意志を持った人でなければ、挫折する可能性が高いといえる。挫折しなくても、「今日は忙しいから」「今日は疲れたから」と先延ばしにされやすい。
そんなとき、1億の人はあえて通学を選ぶ。
通学を選べば、手帳にスケジュールとして組み込まれ、教室にいる時間は確実に勉強することになる。
通信教育が「自分のペースでできる」点がメリットとするならば、通学は「強制される」点がメリットといえる。
忙しいときはいったん会社を抜け出して受講し、また戻ってくる。本当に時間がなければ、振替受講で週末に受講する。そうやって、教室というほかの受講生もいる緊張感の中で勉強すれば、サボる口実が見つからない。
通学という制度を使えば、勉強せざるを得ない「仕組み」を作ることができるというわけだ。
通学で挫折のリスクを下げる
また、通学にはそれ以外のメリットもある。
一つは、他人の目の存在だ。
たとえば体験学習的な課題があったとする。通信教育では、やらずにスルーしても、誰も見ていないし怒られることもない。
しかしスクールだと、周りが取り組んでいるのに自分だけやらないわけにはいかない。講師からも「はい、やってください〜」と行動を促されるだろう。
周りに他人がいる緊張感、ほかの受講生から遅れを取りたくない見栄や講師のプレッシャーがあれば、実際に手足を動かすことになり、習得が速くなる。
さらに、間違えているときやわからないとき、即時の指導が受けられる点もメリットだ。
たとえばやり方が間違っている、作ったものが作動しないなどという場合に、講師が自分のミスを指摘してくれ、すばやく修正できる。
「どこが間違っているのだろうか?」と一人でうんうん悩む時間が短縮されるうえ、誤った理解のまま進めてしまう危険を防いでくれる。
プロレベル(資格試験なら合格するレベル)の水準になるのは、そう簡単ではない。冷静に自己分析をすれば、自分の意志が強いのか弱いのかもわかる。それがわかれば、自分の傾向に応じて勉強方法を柔軟に考えることができる。
(※この連載は、毎週火曜日・全8回掲載予定です。8回目の次回は、8月22日掲載予定です。)
午堂 登紀雄 (ごどう ときお)
1971年岡山県生まれ。米国公認会計士。中央大学経済学部卒業後、会計事務所、大手流通企業のマーケティング部門を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームのアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。2006年、著書『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)がベストセラーとなる。同年、不動産投資コンサルティングを行う株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。経営者兼個人投資家としての活動のほか、出版や講演も多数行っている。『お金の才能』(かんき出版)、『頭のいいお金の使い方』(日本実業出版)、『オキテ破りのFX投資で月50万円稼ぐ!』(ダイヤモンド社)、『日本脱出』(あさ出版)ほか著書多数。
作品紹介
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