「嬉しい派」が一番避けたいのは、嫌われることです。
嫌われることを、一番恐れているのです。
ランチを選ぶこと、結婚を決めること、会社を選ぶこと、独立を選ぶことまで、すべてのことが「どうしたら嫌われないか」という判断基準で動いています。
カラオケの曲も、なかなか決められないのです。
「楽しい派」は、自分の好きな歌、自分の得意な歌を選びます。
「嬉しい派」は、上司の持ち歌を選ばないように気をつけます。
上司の持ち歌はわかるから、まだいいのです。
お得意先の持ち歌は、わかりません。
いつも、「これをしたら嫌われないか」と恐れているのです。
嫌われないようにしようとすると、何も選べなくなります。
ここで1つの疑問が出てきます。
「嬉しいこと」かつ「楽しいこと」という選択肢はないのかということです。
その選択肢は、ありません。
かつて自分の人生において、1度だけそれがありました。
赤ちゃんの時は、自分とママだけが世界のすべてでした。
「自分がする楽しいこと」イコール「ママの嬉しいこと」です。
やがて学校に上がって友達ができると、ママ以外の人と一緒にする楽しいことに目覚め始めます。
たとえば、僕は子どもの時、絵を描くのが好きでした。
一緒に絵を描く、友達もできました。
これは、母親にとって裏切り行為です。
子どもが、ママ以外の楽しいものを見つけたのです。
いわば、浮気です。
母親は、「そんなことをしているヒマがあったら、ママは漢字の1個でも覚えてほしい」と怒ります。
子どもは、「絵を描く」という楽しい行為に罪悪感を持つようになります。
大切な人を、裏切る行為になるからです。
この瞬間に、「楽しいこと」という選択肢を隠し始めるのです。
楽しいことを自分の内面に隠し続けることで、人間は成長していきます。
親の前では漢字の練習をしているふりをして、親がいないところで、机の下に隠して絵を描いているのです。
これが、人間の成長です。
内面性が、生まれるのです。
外面と内面とが一致している人は、まだ内面を持っていない人です。
人間的に、成長していないのです。
親は親で、喜ばせておきます。
一方で、親の知らないところで、自分が好きなことをすればいいのです。
やがて、親を喜ばすのか、自分の人生を生きるのかという選択肢に突き当たります。
「自分の人生だから、好きなほうを選ばせてもらう」と言った瞬間が、自立です。
親にずっと甘えて生きている人は、永遠に親が喜ぶほうを選びます。
親に嫌われたら、生きていけないのです。
赤ちゃんと、同じです。
嫌われることを恐れる人は、体は大人なのに、意識が赤ちゃんのままなのです。
人間は、誰でも愛されたいと思っています。
「嫌われない」イコール「愛される」ではありません。
「どうしたら嫌われないか」を考える人は、どこまで行っても愛されません。
むしろ嫌われないようにしている行為が、相手に嫌われるのです。
中谷 彰宏 (なかたに あきひろ)
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。84年、博報堂に入社。CMプランナーとして、テレビ、ラジオCMの企画、演出をする。91年、独立し、株式会社中谷彰宏事務所を設立。ビジネス書から恋愛エッセイ、小説まで、多岐にわたるジャンルで、数多くのロングセラー、ベストセラーを送り出す。「中谷塾」を主宰し、全国で講演・ワークショップ活動を行っている。
■中谷彰宏公式ホームページ
http://an-web.com/
作品紹介
仕事も、恋愛も、人間関係も、うまくいっている人は、迷わない。ブレない心で、チャンスをつかむ55の方法を紹介する。
定価:本体1300円+税/学研プラス
バックナンバー
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- 所有にこだわる人は、迷う。
- 楽しいことを体験したことがない人は、迷う。
- 弱点を隠す人は、迷う。
- 逃げる人は、迷う。 逃げるとは、借金を、借金で返すことだ。
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- 「嬉しい派」の人は、迷う。
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