家の中で増殖するのは、「安いから買ったモノ」です。
消耗品なら、まだマシです。
必要だから、好きだからという理由で買ったモノなら、いいのです。
消耗しないモノで、安いからとりあえず買ったモノが家の中でかさばっているのです。
そもそも、安いから買ったモノには、愛がありません。
好きだから買ったモノには、愛があります。
愛のあるモノは、範囲が限られます。
すべてのモノを好きになるわけではありません。
安いから買ったモノは、範囲が無限です。
特にいらないモノ、それほど好きではないモノも、つい買ってしまうのです。
デフレの時代になると、あらゆるモノが安くなっています。
ひと昔前に高かったモノが安く売られていると、つい「買っておかないと」という気持ちになります。
デフレを脱却して、いつか値段が上がるだろうと思っているのです。
今は、980円でドレスを売っています。
結局、その服は、ちゃんとしたところへは着て行けません。
見た目は、ブランド品とたいして変わりません。
買った時は、興奮度が高いです。
それを、結婚式に着て行くとどうなるかということです。
自分の中では、「980円」という値札が見えています。
向こうで友達がこちらを見て笑っていると、「980円がバレたのではないか」と不安になります。
買った時はお得感がありますが、着る時に自己肯定感が下がるのです。
ひょっとしたら、仕事先の人に会ったり、恋愛の出会いがある可能性もあります。
980円の服を着ていると、その人が向こうから来ても横道に入って逃げることになるのです。
ここで、仕事ができるかできないか、恋愛が生まれるか生まれないかが分かれます。
結果として、チャンスを失うのです。
捨てるかどうかの判断基準は、それを着た時に自己肯定感が下がるか上がるかで決めます。
自己肯定感が下がるモノは、捨てることです。
ブランド品を着ると、自己肯定感が上がります。
これが、ブランドの値打ちです。
判断基準は、使える使えないとか、壊れている壊れていないということではないのです。
安いモノは大量につくるので、原価を抑えられるのです。
バーキンが5年待ちなのは、大量につくれないからです。
安いモノを結婚式に着ていくと、必ず誰かとかぶります。
相手も、ドキドキしています。
お互いさまで、「980円同士」と分かち合います。
この時、自分がそこそこの年齢で、相手が新入社員だったら、つらいです。
稼ぎのある自分と稼ぎのない新入社員が、安い服でかぶってしまったのです。
高いモノなら、別にかぶってもいいのです。
安いモノがかぶるのは、最悪です。
自己肯定感は、それをやっていて「よかったな」と思えること、「それをやっている自分が好き」ということなのです。
中谷 彰宏 (なかたに あきひろ)
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。84年、博報堂に入社。CMプランナーとして、テレビ、ラジオCMの企画、演出をする。91年、独立し、株式会社中谷彰宏事務所を設立。ビジネス書から恋愛エッセイ、小説まで、多岐にわたるジャンルで、数多くのロングセラー、ベストセラーを送り出す。「中谷塾」を主宰し、全国で講演・ワークショップ活動を行っている。
■中谷彰宏公式ホームページ
http://an-web.com/
作品紹介
片づけられる人は、うまくいく。
人生を変える「捨てる」習慣65
片づけられる人は、仕事でも、恋愛でも、チャンスをつかむ。「捨てる」ことで、人生が変わる65の方法を紹介する。
定価:本体1,300円+税/学研プラス
バックナンバー
- 「少し足りない」が、ぜいたく。
- 仕事の前に、片づけるのではない。 片づけることが、仕事だ。
- 片づいた部屋ではなく、 片づいた部屋にいる自分をイメージする。
- 大きなモノより、小さなモノで差がつく。
- 片づけることで、事故をなくそう。
- 机の上を片づけないと、コールバックが遅れる。
- 部屋を片づけることで、考え方を変えるキッカケができる。