「いいね!」をとにかく声に出す

齋藤孝『たった15秒で自分を伝える「会話」の授業』セレクション

更新日 2022.07.25
公開日 2014.08.29
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 ほめる授業のもう一つのポイントは、声に出してほめる習慣づくりです。
 よく、イタリア人男性は女性をほめるのが上手といいます。それは、親子代々、女性を見たらほめるという文化的伝統があり、ほめなければ失礼という考えが頭に刷り込まれているから。日本人には女性をサラリとほめる文化がないだけです。やれば少しも難しくはない。誰でもイタリア人男性風になれます。
 ただ、声に出すことはなんとしても必要です。
「まじめだから」「口下手だから」、面と向かって声を出すのはハードルが高いと言う 人が少なくありません。しかし、それは違います。
 ほめられないのは性格のせいではなく、習慣。つまり慣れの問題なのです。
 まずは声に出してみましょう。一度やれば、二度目はずっとラクになり、三度目からは、もうイタリア人並みになれるかもしれません。
 相手のリアクションが気になるのなら、近所の人に挨拶するついでに、
「お宅のネコちゃん、かわいいですね!」
「あっ、お庭の花が満開ですね。ご丹精のたまものです」
 などと言ってみるのがおすすめです。
 カフェやレストランに入ったら、店のスタッフに声をかけてもいい。
「いつもおいしいですね」
「先月もきましたが、連れも気に入ってましたよ」
 といった感じなら、あまり身構えずに言葉をかけられるはずです。相手も気分がよくなり、言ったほうも訓練になる。
 要するに、あらゆる時と場所にほめるチャンスは転がっているということです。
 実は、私自身が、ほめ下手でした。まして女性をほめるなど、本当に苦手。ほめるどころか、無神経なことを平気で言うタイプでした。
 けれども、ほめることが人間関係の一番の力になると、年々わかってきました。ましてネガティブなことを言っても誰も得をすることがないと、さすがに学びました。
 そこから訓練を積んで、今はほめる習慣がだいぶ身についています。
 女性に対しても、「いつもお若いですね」は挨拶のようなものです。
「まあ、本当にお上手な」と相手も返してくれます。
 ほめていると、不思議と本当にそう感じてくるので、「いやいや、本当ですよ」と本心から言える。
 大切なのはまずはほめることです。ポジティブな気づきは、すべて口にする。これだけでも、ずいぶんよくなります。
 ほめ言葉はどんどん口にする。ネガティブコメントは決して口にはしない。
 それをポイントにほめる練習をしていくと、他者に興味を向けることが身についてきます。そして、さらに気楽に、的確にほめられるようになっていきます。
 なお、第三者が相手についてポジティブなことを言っていたら、必ず伝えるようにするといいでしょう。
「そういえば、○○先生にお会いしたとき、段取りのよさを喜んでいられましたよ」
 相手はうれしくなり、あなたのことを「ほめ上手」と思うものなのです。

齋藤 孝 (さいとう たかし)

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大大学院教育学研究科学校教育学専攻 博士課程等を経て、現在、明治大学文学部教授。専門は、教育学、身体論、コミュニケーション論。 著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社文庫・毎日出版文化賞特別賞受賞)、『身体感覚を取り戻す』(NHKブックス・新潮学芸賞受賞)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『読書力』(岩波新書)など多数ある。

 

作品紹介

15秒で自分を伝える「会話」の授業
好かれる・認められる・信頼される人になる65のテクニック

仕事、就活、恋愛…。どんな人にも好感を与え「自分」を強く印象づけるメソッド満載!テレビでおなじみ・齋藤孝先生の特別授業!
¥1,400(税抜)/学研パブリッシング

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