本書『ほんとのおおきさ・てがた あしがた図鑑』は、実物大の動物図鑑『ほんとのおおきさシリーズ』の第8作です。
今回は、シリーズ当初からの監修者である上野動物園元園長の小宮輝之さんが自ら著者となって作り上げました。
40年間にわたる動物園勤務で著者が採集した1000種を超える動物の手型や足型の中から厳選して67種を紹介します。
著者いわく、「ぼくは手型・足型のコレクター」。
なぜそこまで手型や足型にこだわるようになったのでしょう?
きっかけをつくってくれたのは、著者が、飼育係になって最初に担当した動物、多摩動物公園のヤクシカだといいます。
当時、ヤクシカは園内に放しがいにされていて
人気がありました。
しかし、母ジカが子ジカを守ろうとして
お客さんをこうげきするなどの事故が起き、
放しがいは中止になりました。
それで、広い園内にひそんだヤクシカをつかまえるために
足あとさがしをはじめたのです。
ヤクシカの足あとをさがしていると
ほかの動物の足あともあるのに気がつきました。
タヌキ、イタチ、アカネズミなどの野生動物が
園内にいることがわかったのです。
わたしが手がたや足がたのコレクションをはじめた理由は
野外で見つけた足あとの正体を知りたい、
という好奇心からでした。
????まえがきより
そして、もうひとつ、著者らしい動機があります。
避けることのできない動物の死に立ち会ううちに
「死んでしまった個体から、何か少しでも情報を残さないともったいないし、動物たちも浮かばれない…」
と思うようになったのです。
そのため、本書には死んだ動物から採集した手型足型も載っています。
製作しているときに
「これは○○○動物園の○○○(個体の愛称)のものだよ」
と、当時を懐かしむように、手型足型にまつわる思い出を著者がひとつずつ、話してくれました。
手がたや足がたは、その動物がこの世にうまれ、
ここまで成長したのだという、たしかなあかしです。
????あとがきより
だから、「実物大でこそ価値がある、実物大で足型全体を見てもらいたかった…」という著者が、とりわけこだわったのは最大の陸生ほ乳類、アフリカゾウのオスの足型でした。
「前足と後ろ足の両方を実物大で
欠けることなく完全な状態で、ならべて掲載したい!」
その思いをかなえてくれたのは、仙台市八木山動物公園のアフリカゾウ「ベンさん」と飼育係のみなさんです。
巻末に付いている、アフリカゾウの足型のポスター(縦60センチ×横85センチ)を広げて大きさを感じていただけたらと思います。
そして、いったいどうやって足型をとったのかは本書の後見返しをご覧ください。
私はこのとき著者に同行して、知ったのです。
ひとつの足型を採集するためにどれほどエネルギーと情熱を必要とするかを。
手型足型の膨大なコレクションは根っからの動物園人である著者だからこそなし得た偉業だと、私は思っています。
本書では手型足型をならべて見せるだけでなくそれぞれの手足の特徴や機能などをわかりやすく解説し、資料的な役目も持たせています。
たとえば、ライオンの前足はなぜ後ろ足よりも大きいのか?
バクは前足の指が4本あるのになぜ奇蹄類に属するのか?
…などの理由がわかります。
また、自分の手足と比較することで、読者に動物のくらしぶりを想像してもらえるような構成にしました。
掲載している写真も文章も、著者の手によるものです。
手型や足型には、写真とは別の種類の迫力と臨場感があり、ぬくもりが感じられます。
動物たちの「生命のあかし」を、じっくりと味わっていただけたらと思います。
(担当編集/N)
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■ほんとのおおきさシリーズ
・『ほんとのおおきさ動物園』
・『もっと!ほんとのおおきさ動物園』
・『ほんとのおおきさ水族館』
・『ほんとのおおきさ恐竜博』
・『ほんとのおおきさ・なかよし動物園』
・『ほんとのおおきさ特別編・元気です!東北の動物たち』
・『もっと!ほんとのおおきさ水族館』
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