以上は現象面に過すぎません。ここからは本質をお話しします。

千田琢哉『20代で人生が開ける「最高の語彙力」を教えよう。』セレクション

更新日 2020.07.30
公開日 2018.02.05
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模範解答通りのプレゼンに聴き手が飽きてきた空気を少しでも察知したら、
「以上は現象面に過ぎません」と言い切って、その空気を一変させよう。
一拍置いて「ここからは本質をお話しします」と続ければ、
その場にいる全員が顔をあげてあなたに注目するだろう。

さて、普段から何気なく使っているこの「現象」という言葉の意味を、
あなたは本当に理解していると自信を持って言えるだろうか。
現象という文字の「象」とは、もともと「形」という意味であり、
「現」は「現れて誰の目にも見える」という意味だ。
つまり、現象とは「形が現れて誰の目にも見える」という、物事の非常に浅い部分だ。

現象の奥には、物事の本質がさらに潜んでいるという期待を相手に与えるわけだ。
明治時代に二葉亭四迷は『小説総論』という名評論を遺したが、
そこで彼が伝えたかったのも、
「人情や風俗というのは単なる現象面に過ぎず、
その内奥(ないおう)に潜む本質を描くのが真の文学である」
ということだった。
『小説神髄』で「人情と風俗をありのまま描くのが文学である」
と主張した師匠の坪内逍遥よりも、
弟子の二葉亭四迷のほうがより高い次元で文学の概念を進化させたのだ。

文学に限らず、人類はいかに物事の本質に迫るかによって進化し続けている。
これは我々人類が知的好奇心という本能を授かっているからに他ならない。
つまり、本質に迫ろうとする姿勢は自然の摂理に則っており、
その場にいる誰もが刮目に値すると思わせる力があるのだ。

  (※この連載は、毎週月曜日・全8回掲載予定です。次回は2月12日掲載予定です。)

 

千田 琢哉 (せんだ たくや)

文筆家。 愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。 東北大学教育学部教育学科卒。 日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。 コンサルティング会社では、多くの業種業界における大型プロジェクトのリーダーとして戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。 のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって 得た事実とそこで培った知恵を活かし、 “タブーへの挑戦で、次代を創る”をミッションとして執筆活動を行っている。

■E-mail
info@senda-takuya.com

■ホームページ
http://www.senda-takuya.com/

作品紹介

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