早く帰れば、道は拓ける。

千田琢哉『「仕事が速い」から早く帰れるのではない。「早く帰る」から仕事が速くなるのだ。』セレクション

更新日 2020.07.31
公開日 2017.10.09
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今だから正直に告白するが、入社間もない頃の私はとにかく不器用で、
何をやるにも桁違いに時間がかかった。
同じことをやるにも、他人の2倍や3倍どころではなく、10倍や20倍かかった。

「こんな状態では、自分の人生は
落ちこぼれのまま終わってしまう…」

ことあるごとに、こうした焦る気持ちになって、
学生時代に経験した失敗の数々がフラッシュバックしてきた。
落ちこぼれを一度でも経験した人ならわかると思うが、
これほど惨めで辛いものはない。
ひょっとしたら、あなたは今まさに落ちこぼれ人生を歩んでいる真っ最中で、
うなだれつつ、本書を手にしているかもしれない。
あるいは、落ちこぼれかけて顔面蒼白になり、
ブルブル震えながら、本書を手にしているかもしれない。
そんな人にぜひ知っておいてもらいたいのは、

この世の中に解決策のない問題はないということだ。
少なくともそう信じて、
楽しく知恵を絞りながら生きるのが人生というものだ。

経営コンサルタント時代、数々の難問を解決してきた私自身が言うのだから、
これは間違いない。

学生時代に数学の問題を解いていると、
たびたび「解なし」という解答が現れた。
それと同様に、人生においても「解なし」は立派な正解になり得る。
たとえば職業の「解なし」は、どうあがいても報われない現状を指すもので、
「勝負の土俵を別の進路に変えてみろ」というサインだ。
「異動届を出す」「転職する」「独立する」、あるいは「出家する」などと、
進路を変えてみることで、人生好転のチャンスはつかめるはずだ。

またその一方で、数学の問題を解いていて、問題に行き詰まった時に、
「逆に考える」
ということで、拍子抜けするほど簡単に問題が解けることも多かった。
実を言えば、私が新入社員の頃、不器用だった自分の人生を変えたきっかけも、
この「逆に考える」という発想のおかげだった。

私はそれまで、「仕事の速い人たちが早く帰れるのだ」と固く信じていたが、
社内のエリートたちを虚心坦懐に観察し続けていくうちに、
それは完全に間違いだと気づかされた。

エリートたちは、あらかじめ、
「早く帰る」と決めているから仕事が速かったのだ。

そこで私は一大決心し、クビを覚悟で、
「午後になったら、用事をでっち上げて直帰しよう」と心に決めてみた。
午後からの用事が嘘だとばれたら、いつでも潔く会社を辞められるよう、
鞄に辞表を忍ばせながら。

あなたはこれを大袈裟だと笑うかもしれないが、本当の話だ。
そして、数か月後、驚くべきことが起こった。

午前中に集中力が研ぎ澄まされることで、
私はまるで別人のように、
桁違いのスピードで仕事を終えられるようになったのだ。

転職先でも、これは同じだった。
あらゆる職場の制約を乗り越え、命懸けで「直帰の理由」をでっち上げた結果、
社内報で「成功例」と取り上げられるほどのスピード出世を果たした。
一番驚いたのは私自身だが、よく考えれば、それほど難しい理屈ではない。
理由はとにかく、早く帰るのだから、

「せめて会社にいる時間くらいは
集中して仕事をしなければ申し訳ない」

と周囲に対して思うようになるのだ。
どうせ他人の半分以下の時間しか働かないし、
午後からは至福の自由時間なのだから、常に全力で仕事に没頭できる。
加えて、これが大切なのだが、

早く帰って早く寝ると完璧に熟睡できるため、
心身ともにリフレッシュした、
清々しい朝を迎えることができるようになる。

会議の席などでも、周囲の同僚たちが、
連日終電までの残業を繰り返し、疲れ切ってウトウトしている中で、
私だけが艶々の精せい悍かんな顔で、鋭い意見を述べることができたのだ。

つまり、私が成果を上げ続けた理由は、
頭が良かったためなどではなく、
単に、毎日早く帰って、熟睡していたためだったのだ。

それ以外の成功の要因は、どれも微々たるものだ。
以上は私の実体験によるエピソードである。
ここまで読んで、読者の中には、
「法令順守の世の中で、こんなやり方はありえない」
「時代、業界、職種が違うから、こんなやり方はとても真似できない」
と考える人もいるかもしれない。
だが私は、少なくとも本書を読み込むことで、
閉塞した現状を打開する「突破口」が見つかると確信している。
生来が不器用の塊である私でさえ、こうして小さな習慣を実行できたのだから、
あなたにできないはずがないだろう。

人生を変えるのは
努力や苦労ではなく、
知恵を絞り、工夫を凝らすことなのだ。

(※この連載は、毎週月曜日・全8回掲載予定です。次回は10月16日掲載予定です。)

 

千田 琢哉 (せんだ たくや)

文筆家。 愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。 東北大学教育学部教育学科卒。 日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。 コンサルティング会社では、多くの業種業界における大型プロジェクトのリーダーとして戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。 のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって 得た事実とそこで培った知恵を活かし、 “タブーへの挑戦で、次代を創る”をミッションとして執筆活動を行っている。

■E-mail
info@senda-takuya.com

■ホームページ
http://www.senda-takuya.com/

作品紹介

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