美人は、 大人の話し方ができる。

中谷彰宏『美人力(ハンディ版)』セレクション

更新日 2020.07.17
公開日 2016.11.24
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「ありがとうございました」が、「あざーした」になっている人がいます。
 自分が子どもっぽい話し方をしていることに、本人は気づかないのです。
 言葉の8割はよく使う言葉で、2割があまり使わない言葉です。
 8割のよく使う言葉は、省略化して、つぶれていきます。
「LMS(エル・エム・エス)」がきちんと言えなくて、「エレメッセイ」となるのです。
 業務上のやりとりなら、相手は聞き直してくれます。
「あざーした」は意味がわかるので、聞き直されません。
 言葉がつぶれていくと、厳密にはかんだ状態になります。
 大人の定義は、「自分が子どもの話し方をしていることに気づける」ということです。
 子どもが子どもの話し方をするのは、自分が子どもの話し方をしていることに気づかないからです。
 これは、仕事でも恋愛でも差が出るところです。
 子どもっぽい話し方を直してくれる人を持つか、自分で早く気づくしかないのです。

 年をとればとるほど、子どもっぽい話し方で若く見せようとする人がいます。
 年より若く見せようとする行為自体、よけいその人を老けて見せるのです。
 5歳の子が自分のことを「ヨウコね……」と言うのはいいのです。
 そこそこの年齢の人が「ヨウコね……」と言うのは、ヘンです。
 これが、子どもっぽい話し方です。
 友達や仲間内ならいいのです。
 美人力は、知らない人に対してどれだけ美人に見せるかということです。
 名刺も渡さず、自分の役職も何も言わないで、きちんとした扱いを受けられるかどうかが、美人力です。
 子どもっぽい話し方をしても、友達同士では何も不具合を感じません。
 他人に子どもっぽい話し方をすると、ひと言で「あれ?」と思われます。
 これが、子どもっぽい話し方の怖さです。

 見た目はちゃんとしていて、きれいな女性とごはんを食べに行きました。
 この女性が、おいしいものを食べた時に「ヤベー」と言ったのです。
「どこからこの言葉が出てくるんだろう」と、びっくりしました。
「『ヤベー』と言うような男性とつきあっているのかな」と考えます。
 この女性の格付けが、急にググッと下がりました。
 言葉と見た目とのギャップがすごいのです。
 そこら辺のオネエチャンが「ヤベー」と言うのは、別にいいのです。
 ここまでつくり上げておきながら、「ヤベー」と言うのです。
 子どもが友達同士で使っていた言葉を、親が逆輸入して使っていることもあります。
 幼い言葉で、美人に見えることはないのです。
 気になり出すと、どんどん気になります。
 言葉は1回使い始めると、その言葉を何回も使います。
 ごはんを食べている間、「ヤベー、ヤベー」を何回も聞くことになるのです。
 そのつど、「いや、そんなはずはない。僕の幻聴に違いない」と打ち消します。
「ヤベー」は、本来、その人の言葉ではないのです。
 トータルのイメージの中で、その言葉だけが突出しています。
 外国人が知らずに覚えた言葉のような感じです。

 人から覚えた言葉は、危険です。
 特に、地方から出てきた人は危ないのです。
 ヤンキーの言葉を東京弁だと勘違いするのです。
 自分では、東京弁を覚えたつもりで話しています。
 ほかの部分がちゃんとしていればいるほど、幼い言葉が突出してしまうのです。
 自分が子どもっぽい話し方をしていることに、早く気づくことです。
 美人は、大人の話し方ができるのです。

(※毎週木曜日、全8回掲載予定です。3回目の次回は、12月1日掲載予定です。)

 

中谷 彰宏 (なかたに あきひろ)

1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。84年、博報堂に入社。CMプランナーとして、テレビ、ラジオCMの企画、演出をする。91年、独立し、株式会社中谷彰宏事務所を設立。ビジネス書から恋愛エッセイ、小説まで、多岐にわたるジャンルで、数多くのロングセラー、ベストセラーを送り出す。「中谷塾」を主宰し、全国で講演・ワークショップ活動を行っている。

■中谷彰宏公式ホームページ
http://an-web.com/

作品紹介

美人力(ハンディ版)

向上心のある大人の女性に向けて、年齢を重ねても魅力的の「美人力」を提案。人気の書籍をハンディ版として新装発売。
定価:本体900円+税/学研プラス

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