2018年度から小学校の理科の授業では、観察や実験を通して、そこからわかることを整理したり、問題を発見し、解明したりする授業が増えていきます。これらは、社会に出て必要とされる、主体的に問題を解決する力をつけることが目的です。今回は、新しい理科の授業で強化されるポイントや、理科好きになるために家庭でできるきっかけ作りについてご紹介します。
新しい理科の授業はこのように変わる! 3つのポイント
2018年度からは、おおむね、次のような3点について育むことを新しい目標としています。
1.身の回りで当たり前に起きている出来事や自然界の生き物などについて、興味や関心をもって観察したり、実験をしたりする心を育む
2.観察や実験結果から、不思議なことを解明しようと考える心や問題を発見する力、また、それらを科学的に解決する力を育む
3.日常生活や社会の中で理科的なことが活用されているケースや、自然災害との関連に気づく力を育む
このように、なぜ? どうして? という疑問について深く考えたり、理科の知識を用いて解明したりすることで、問題解決力を育むことがポイントです。
「考える心」というと、少し不思議に思われるかもしれませんね。以前の学校のカリキュラムでは「考える力」を育むことが提唱されていました。その結果、理科的な情報や知識は向上したものの、身の回りで起こる不思議な出来事や生き物などに対し、「好奇心」を持って、「主体的」に疑問を解明しようという「心」がうまく育まれなかったことがわかってきました。そのため、2018年からの理科では、「考える力」の前に、「考える心」を育てることに重点が置かれました。
社会に出ると、与えられたことをこなす力よりも、自ら問題を発見し解決する力が求められます。この力をつけるための成長過程として、小学校の理科では生物・化学・科学・物理など多岐にわたって基礎を学び、「考える心」を育むことになっています。
学年別! 学習内容と理科好きになるためのきっかけ作り
新しい理科の授業は、学年によってどのように進んでいくのでしょうか。ここでは学年別の学習のねらいと、理科に対して興味や関心度を高めるきっかけポイントをご紹介します。
小学3年生
身の回りで起きた出来事や生き物の共通点や違いを見つけ、不思議だと思うことや気になったことを自分の言葉で表現する。
【きっかけポイント】
チョウやガなどの昆虫を観察して、飛び方や止まったときの羽の様子、活動時間帯の違いなど、わかったことや感じたことを意識的に自分の言葉で伝えてもらうように保護者から声をかけてみましょう。また、野に咲く花、切り花などを見比べて、色、形、大きさなど見た目の特徴を自分の言葉で説明してもらうのもよいですね。
もし、身の回りで観察するものを見つけることが難しいときは、教科書や図鑑を一緒に見ながら「手のひらくらいの大きさかな」「きれいな黄色だね」など、想像を膨らませながらお子さまと会話をしてみましょう。
小学4年生
理科の授業で学んだことや身の回りで起きる出来事について、予想をしたり自分の考えを表現したりする。その際、思いつきだけではなく、「なぜそうなのか?」という理由を考える
【きっかけポイント】
チョウやガなどの昆虫を観察して、飛び方や止まったときの羽の様子、活動時間帯の違いなど、わかったことや感じたことを意識的に自分の言葉で伝えてもらうように保護者から声をかけてみましょう。また、野に咲く花、切り花などを見比べて、色、形、大きさなど見た目の特徴を自分の言葉で説明してもらうのもよいですね。
小学5年生
不思議な出来事について、予想や自分の考えをもとに疑問をもったり、原因を発見して解明したり、解決方法を考える
【きっかけポイント】
曇り空や雨が降りそうなとき、空の様子を観察して、雨を降らしそうな雲の特徴を話し合い、雲の量や動きからこの後の天気の予想をしてみましょう。天気の変化の速さや方角などのきまり(規則性)が見えてきたら、「今日は雨具を持っていこう」、「洗濯物を干しても大丈夫だ」など生活の中で実用化してみてはいかがでしょうか。
小学6年生
理科的な出来事について、これまでに知り得たことを生かしながら、低学年の時よりも根拠をもって考え、解明する。また、よりよい解決方法を探る。
【きっかけポイント】
3~4年生で学んだ太陽の位置や月の形のことを思い出しながら、月の見え方について、「なぜ、毎日違う形に見えるのか」を一緒に考えてみましょう。太陽がライトの役目をしていることを解明するためにも部屋を暗くして、ボールや懐中電灯を使って遊びながら考えるのもよいですね。
お子さまが理科好きになるためのきっかけは、実は日常生活の中にあふれています。
理科の授業は小学校3年生からですが、興味関心を育むご家庭でのきっかけづくりは、就学前や小学校低学年からでも始められます。ちょっとしたことでかまいませんので、ご家族でなぜ? どうして? の機会を増やしてみてくださいね。
後編では、もっと具体的な「ご家庭で理科の力を高める取り組み」についてご紹介していきます。次回もぜひご覧ください。
【執筆者紹介】:特定非営利活動法人日本ITイノベーション協会
平成16年1月に内閣府からの認証を得て以来、「Instructional Technology(教育的技術)」を旨とし、国際的人材育成指標である「経済協力開発機構(OECD)」が提唱する各種コンピテンシーをベースに人材育成の基軸を設定。国や各自治体・各大学・各企業が制定している個別指標と紐付けてカスタマイズし、実用可能な教育プログラムの開発を手掛ける。国の教育指針である「生きる力」とは、自分で問題発見を行い、周囲を巻き込み問題解決していく力であると捉え、「社会に出て、社会を築く人材」を輩出するための教育プログラムの開発を行い、小学生~高校生の教育にも力を入れている。
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※このコラムは、「ガッケン!ハッケン!学研ゼミ 保護者のよみもの ハッケン!みっけ!」に掲載されていたものです。
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