批判から 自分を守るレッスン

石原加受子『「とにかく優位に立ちたい人」を軽くかわすコツ』セレクション

更新日 2020.07.17
公開日 2017.10.26
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◆「その場から立ち去る」のも一つの手

 あなたが今、「優位に立ちたい人」から多大な迷惑を被っているのだとしたら、それは「私と相手」との「関係性」から起こっている―。
 ここまで、このことを繰り返し述べてきました。
 自分が相手に傷つけられている、攻撃されている、意地悪をされているという面にとらわれて相手のことを見ると、自分自身も相手に対して激しい感情を抱くことになります。
 そんな感情を抱いて、優位に立ちたい人に対して、心の中で批判したり、責めたり、感情的になったりしたとしても、自分の心が傷つくだけです。
 それだけではありません。傷ついた上に、「他者中心」の考えにとらわれて、自分の心に適った解決方法を見いだせず、いっそう失望したり自信をなくすことになってしまうでしょう。
 自分中心にならない限り、自分の守り方はわかりません。
 自分の心を基準にして初めて、自分の守り方がわかるのです。
 たとえば、
・優位に立ちたい人と争いになれば、自分を傷つけることになる
・だから、争いは避けたい
・でも、自分を守りたい
 このすべての願いを叶えることを考えれば、自分ができるのは「争わない」という一言に尽きるでしょう。そして、そのために「その場を離れる」というのも解決方法の一つだと言えるでしょう。
 たとえばあなたがミスをしたからといって、高圧的な上司の言葉や態度におびえながら、その場に踏みとどまって罵声を浴びなければならないという理由など、まったくありません。ミスはミスとして認め、その原因を知り、方法を改善していく責任はありますが、それと同時に、人間として尊重されるべき人権があります。
 これを認識していれば、
「自分が悪かったのだから、上司に怒鳴られても仕方がない」
 などという発想をすることはないでしょう。
 職場で怒鳴られて怖いと感じたとき、その場で立ちすくむのではなく、おびえるような表情をしてその場を立ち去ったとして、何が悪いのでしょうか。
 世の中には、怒鳴らないで問題を解決する方法があります。むしろ、怒鳴らないほうが、具体的な解決方法が見つかりやすいでしょう。
 怒鳴るのは、その人自身が「私には解決能力がない」とカミングアウトしているようなものです。
 そんな相手に、長々とつき合う必要があるのでしょうか。
 ましてや、怒鳴らないように相手に訴えることができるのでしょうか。
 あるいは、相手にそれを期待したとして、それをやめてくれるのでしょうか。
 どれだけ怒鳴るのをやめるように訴えても、優位に立ちたい人が、それを聞き入れてくれるとは思えません。要するに、相手に変わってもらうことを期待する他者中心的な対処方法で解決しようとしても、無理なのです。

◆「自分中心」に考えて「恐怖のレベル」を下げる
 
 もちろん、職場で真面目に働く人ほど、
「仕事なのに、いきなり立ち去るなんてことはできません」
 と異を唱えたくなるでしょう。
 当然だと思います。
 ただ、起こったミスを「自分が悪いから」ととらえると、たとえ怖くても、その場で耐えなければと考えてしまいます。そして、そうやって踏ん張ることで、いっそう怖くなり、蛇に睨まれた蛙のように“フリーズ”してしまうでしょう。
 これでは相手の思う壺にはまってしまいます。
 他方、「怒鳴られるのは不当だ」ということをしっかりと認識していれば、それだけで、相手への伝わり方が微妙に変化します。何より、自分自身が感じる「恐怖のレベル」が下がります。自分にとっては、これだけでも救いとなるはずです。
 黙っていても、自分の意識や感情は、態度や表情に表れます。私たちの無意識はお互いに、そんな相手の意識や感情に反応し合っています。同じ場面であっても、自分のわずかな心の在り方だけで、相手を変えることができるのです。
 いきなりその場を立ち去ることはできなくても、自分のミスの責任と、怒鳴られることとは別の話だと自覚できていれば、相手の感情に過剰に反応しないでいられるでしょう。
「自分中心」の考えになればなおのこと、「他人に叱責されること」ではなく、「自分のミスの責任」のほうに焦点が当たるため、
「わかりました。申し訳ありませんでした。これを調べるときは、ダブルチェックできるように、別の人にも担当してもらいます」
 などと、改善法を具体的に提示して答えることができるでしょう。
 こんなふうに、普段から相手よりも自分のほうに焦点が当たっていれば、万が一、本当に不当な扱いをされたときには、自分のほうから早めに行動したり、その不当性を堂々と主張できる自分になっているかもしれません。

 

石原 加受子 (いしはら かずこ)

心理カウンセラー。
「自分中心心理学」を提唱する心理相談研究所オールイズワン代表。日本カウンセリング学会会員、日本学校メンタルヘルス学会会員、日本ヒーリングリラクセーション協会元理事、厚生労働省認定「健康・生きがいづくり」アドバイザー。 思考・感情・五感・イメージ・呼吸・声などをトータルにとらえた独自の心理学をもとに、性格改善、親子関係、対人関係、健康に関するセミナー、グループ・ワーク、カウンセリング、 講演等を行い、心が楽になる方法、自分の才能を活かす生き方を提案している。
『母と娘の「しんどい関係」を見直す本』(学研プラス)、『仕事・人間関係「もう限界!」と思ったとき読む本』(KADOKAWA)、『わずらわしい人間関係に悩むあなたが「もう、やめていい」32のこと』( 日本文芸社)、『金持ち体質と貧乏体質』(KKベストセラーズ)など著書多数。

 

作品紹介

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