2016年の年の瀬、兄の恋川純弥が主催する「大山克巳の意志を継いで」という襲刀特別公演に参加することになりました。
それがのちに不思議な縁とつながるとは知らずに、ぼくはそこに参加している座長さんたちとともに前日から稽古をしていました。
「CSのテレビ撮影が入る」と聞いたときも、気負いせずただいつもどおりやろうと思っただけでした。
稽古は朝方までつづき、本番まで何とも思わなかったのですが、突然何か胸騒ぎがして、慌てて音楽の担当者のもとへ駆け寄りました。
「急で悪いのですが、舞踊の曲を変えていいですか?」
普段もお客さんの雰囲気に合わせて本番直前に曲を変えることはありますが、このときはいつもと違う、何とも言えない感じだったと思います。
そして踊った曲は「望郷じょんがら」。
細川たかしさんの代表曲の1つで、ぼくも昔から大好きなのでよく使わせてもらっています。
会場の後ろから静かに花道をとおって出てきたぼくは、その日、自分ではない何かに踊らされているような、不思議な感じのまま踊り終えたのです。
CSで放送されたぼくらの舞台を、後日一人さんが観てくれたとは、そのときは思いもしません。というより、ぼくは一人さんと出会うまで、一人さんがどんな人なのかまったく知らなかったのです。
ご存じの方も多いと思いますが、一人さんは、健康食品などを製造・販売する「銀座まるかん」の創業者で、過去に発表された全国高額納税者番付では1993年から12年連続でベスト10にランクイン。さらに、土地売却や株式公開などでの高額納税者が多い中、納税額がすべて事業所得ということでも話題となった、累計納税額日本一の方です。
運命(さだめ)は動き出していた
年が明けて、襲刀特別公演の翌月。
神戸市の中心に構える老舗の劇場「新開地劇場」の舞台に上がっていたとき、すでにぼくの運命はゆるやかに動き出していたのです。
ときを同じくして、場所は東京・新小岩。
「りえ先生、大衆演劇って観たことあるかい? 一度観に行くといいよ。みっちゃん先生も」
一人さんは、一緒にいた弟子の高津りえ先生とみっちゃん先生に、押しつけるわけでもなくいつもどおりの笑顔で、楽しそうにこう言ったそうです。
一人さんはこれを思いつきで言ったのではなく、何年も前からお弟子さんたちに大衆演劇をすすめていたそうなのです。
それから数日後、あの2016年12月の襲刀特別公演がCSで放送され、たまたま番組を観た一人さんたちは、すぐに録画したといいます。
番組はミニショー、お芝居、グランドショーの順番で放映されました。お芝居は、関本の弥太郎(やたろう)が旅の途中で、母のない少女、お小夜(さよ)と出会う「関の弥太っぺ」。ぼくは、森介(もりすけ)という役でした。
酔った森介の「俺は一生懸命だ」というセリフを聞いて、りえ先生とみっちゃん先生はその言葉に釘づけになりました。なぜなら、一生懸命さは良縁を引き寄せると知っていたからです。お芝居が終わりグランドショーが始まるころには、感動でテレビの前から動けなくなっていたそうです。
そして「望郷じょんがら」の曲で登場するぼくを見て、「この人、龍神様みたい……」と言ったりえ先生に、一人さんは「この人の舞は龍神の舞だね。すばらしい」と言ってくれたそうです。
それから毎日毎日、録画したDVDを観ていたりえ先生は、一人さんにこう言ったそうです。
「私、この人に会いに行ってくる」
そして3月に1日だけ大阪でお仕事があったりえ先生は、「梅田呉服座」という劇場で観劇するためにチケットを申し込んでくれたそうです。
その日はなんと、ぼくの誕生日だったのです。劇場は満席。
かなりの盛り上がりの中、観劇してくれていたそうなのですが、その日はお客さんを演者全員で見送る「送り出し」がなく、お会いすることはできませんでした。
りえ先生は東京に帰り、とてもすばらしい舞台だったことを一人さんに伝え、さらに4月の岡山公演も1人で行くことを話すと、笑ってこう言ってくれたそうです。
「きっと、会いに行くって言うと思っていたよ」
「なぜですか?」
「それが運命(さだめ)だから」
さらに一人さんはこう言ったそうです。
「彼ら(恋川兄弟)は私とも縁があるから、いずれ本を書くよ」
「それが運命だからですか?」
「そう、ずっと前から決まっていた運命だから」
ぼくがこの本を出す前に、兄が『斎藤一人 良縁 成功する人の縁のつかみ方』という本を出しているのですが、「運命」と「良縁」というのは、どこでどんなことをしていても必ず自分を探し出してきてくれる約束みたいなものだと思います。
そして「運命」と「縁」はまるで兄弟みたいなもののようにも感じました。
(※この連載は、【水・金】更新、全7回配信予定です。次回は7月20日10:00頃配信予定です。)
二代目 恋川 純 (にだいめ こいかわ じゅん)
物心がついたときから舞台に立ち、9歳で副座長となる。2007年に二代目として「恋川純」を襲名し、2014年に座長に就任。芝居では二枚目から三枚目、舞踊では古典からコンテンポラリーまで幅広いレパートリーを持つオールマイティな役者。
■公式ホームページ
http://koikawagekidan.com
斎藤 一人 (さいとう ひとり)
実業家。「銀座まるかん」(日本漢方研究所)創業者。1993年以来、12年連続で全国高額納税者番付(総合)10位以内にただ1人ランクインし、2003年には、累計納税額で日本一になり注目される。著書多数。『神様に喜ばれる人とお金のレッスン』(高津りえ共著)、『斎藤一人 大開運 人生を楽しむ仕組み』(千葉純一共著)、『斎藤一人 成功の花を咲かせなさい』『斎藤一人 神様にかわいがられる豊かで幸せな生き方』(宇野信行共著/以上学研)などがある。
●さいとうひとり公式ブログ
https://ameblo.jp/saitou-hitori-official/
作品紹介
全国累積納税額日本一の大実業家・斎藤一人直伝「運命の受け入れ方と、魂の育て方」。◆一人さん書き下ろし「運命カード」付き!
定価:本体1,300円+税/学研プラス
バックナンバー
- [二代目 恋川純 ~運命~]⑦見えないパワーに感謝すること
- [二代目 恋川純 ~運命~]⑥兄がこだわるプロ意識
- [二代目 恋川純 ~運命~]⑤神様が教えてくれた自分らしさ
- [二代目 恋川純 ~運命~]④超えられない父の演技
- [二代目 恋川純 ~運命~]③父と母を選んで生まれてきたわけ
- [二代目 恋川純 ~運命~]①運命は変えられる