【編集者が語る制作秘話】数々の「マネー本」を出してきた故・山崎元が、最後に「手紙」を残した理由 20年来の交流を持つ編集者に託した思いとは

『経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて』

更新日 2024.05.24
公開日 2024.02.15
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「手紙の全文を載せたい」は著者の希望だった――経済評論家の山崎元が、「若い世代が資本主義のシステムのなかで不利な立場になってほしくない」との願いを込め、人生の戦略と幸福論を詰め込んで書き下ろしました。

山崎元さんが実際に息子へ送った手紙「大人になった息子へ」全文公開 告知画像

『経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて』

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 人気経済評論家・山崎元さんが、2024年1月1日に食道がんで亡くなりました。65歳で世を去った山崎元さんの最後の書き下ろし作品『経済評論家の父から息子への手紙』(Gakken刊)が2月15日(木)についに発売。発売に先立ち、本書に掲載する「手紙」の全文を期間限定で無料公開し、多くの注目を集め、発売前に重版が決定。累計発行部数は70,000部となりました。

※現在は一部を公開中。山崎元さんが実際に息子へ送った手紙「大人になった息子へ」はこちら

「大人になった息子へ」

「余命3カ月」を宣告され闘病中だった山崎元さんが、これからを生きる息子へ、そして、すべての読者に向け、自身が長年追究してきた、お金と人生、幸せについて、いちばん大事なことを、渾身の力を込めて書き下ろした一冊。本書は、山崎元さんが大学に合格した息子へ送った手紙をきっかけに生まれました。

 今回、本書の制作に至った背景から、発刊にいたるまで、編集を担当した株式会社Gakkenの友澤和子に聞きました。

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息子さんに送った手紙のように、語りかけるような文体で。「手紙」からスタートした本だからこそ、これからの人生に立ち向かっていく若い世代に届けたい。

――本書をつくったきっかけを教えてください。

 2023年3月に、山崎さんから息子さんが大学に合格されたとうれしそうに報告され、「もう大人なので、こんな手紙を書いて送ったんだよ」と、息子さんへの手紙を見せていただいたことから始まりました。

 ちょうど、山崎さんとライフマネジメントに関する本の企画を一緒に考えていたところでした。山崎さんは、お金のことで悩まず、人生を自由にマネジメントできるような本を作りたいとおっしゃっていました。「この手紙が企画の参考になるかも」ということだったのですが、手紙の内容がとても素敵で……!「この手紙のエッセンスを軸に、これからの人生に迷う若い人に向けて本にするのはどうですか」、という提案をしたんです。

「編集を担当した株式会社Gakken 友澤和子」画像

▲編集を担当した株式会社Gakken 友澤和子。山崎さんとは20年来の付き合い。

――手紙からスタートした企画ですが、本の内容はどのように決まっていったのでしょうか。

 息子さんへの手紙に、「将来の働き方や稼ぎ方」の部分があります。独自の「ほったらかし投資術」を編み出し、ご自身も転職12回を経ていて、お金と人生設計について語るのは山崎さんの真骨頂です。まずはそこをベースに章だてを考えていきました。

「若い人に、これからの人生に役に立つお金やライフハックを」というテーマに沿って進めたのですが、最初にいただいた草稿は、山崎さんらしいシンプルで明快な文章でした。それもよかったのですが、「手紙に合わせ、息子さんに語りかけるような文体にしてみませんか。この本は、そのほうが、かえって多くの方に伝わるはずです!」と提案し、ブラッシュアップをお願いしました。

「語り掛ける文体でありながら、図版も交えて世の中の仕組みをわかりやすく紹介することを意識しました」画像

▲「語り掛ける文体でありながら、図版も交えて世の中の仕組みをわかりやすく紹介することを意識しました。」

辛口かつユーモラスな解説をしてきた山崎さん。「語りかける文章」は温度感を探りながら進めていった

 山崎さん、あまり内面やプライベートをさらけ出すような本って今まであまり書かれていなかったんですよね。それもあって、「ええ、本当にそんな雰囲気でいいの…?」と最初は若干戸惑っていらっしゃいましたね。少しずつ書いては「こんな感じでいい?」と聞かれました。

 次第にご本人も筆がノッてきたようで、「成果主義では、無難をめざすよりも、リスクを大きくとる方が有利だ。このマインド・セットがあるかないかは将来の報酬を大きく左右するはずだからよく覚えておけ」などと、ぐいぐいと語り掛けるかたちの原稿ができあがっていきました。

――印象に残ったパートはありますか?

 自分の人材価値をどのようにして高めていくか、という部分でしょうか。特に若いうちは、預貯金を増やすより、自分の「稼ぐ力」を高めることが重要です。それにはどうしたらいいか。転職や副業はどのようにするか。社会に出ていく前に知っておくと、周りより一歩リードできる人生のコツ、陥りがちな危険を回避できる方法、そんな山崎流人生術はきっと多くの方に役立つはずです。

 同時に、「飲み会のテクニック」や「モテ論」といった社会に出てから大事な人間力が磨かれるというか、ユーモアあふれるアドバイスもたくさん掲載されていて、そこも好きなところですね。行間に、幼いころの息子に好きな球団を聞いたら、「父ちゃんが楽天にいるから楽天」と答えたというほほえましいエピソードが顔をのぞかせたり、人間味を感じられます。

 社内でも、「役立つだけじゃなくて自分の親とのことを思い出してウルっときた」なんて声もあって、実用的だけどエッセイ要素もある、今までにない本になったと思います。

「成果主義では、無難をめざすよりも、リスクを大きくとる方が有利だ。このマインド・セットがあるかないかは将来の報酬を大きく左右するはずだからよく覚えておけ」これは昔から山崎さんがよく言っていたこと 誌面

▲「成果主義では、無難をめざすよりも、リスクを大きくとる方が有利だ。このマインド・セットがあるかないかは将来の報酬を大きく左右するはずだからよく覚えておけ」これは昔から山崎さんがよく言っていたこと。

「本の巻末に手紙を全文載せること」は最初から決まっていた

――「息子さんへの手紙」が全文掲載されていて、驚きました。

 意外だったのですが、「手紙は全文載せたい」と当初から山崎さんが強く希望されていました。念のため、奥様、手紙を受け取った息子さんにも確認を取ったうえで、掲載することになりました。プライベートな内容もけっこうあるので本当に載せていいのかな、とも思ったのですが、まさにこの本のスタートでもありメッセージが詰まっていて、山崎さんのお人柄がよくわかる部分なので、載せることができてよかったなと思います。ご家族からも温かいお言葉をいただきました。

――まさに「手紙」の要素を感じる、素敵なカバーデザインです

 デザイナーさんも大事な本だといってくださり、若者を想定したピンク・水色、といったポップなものから、重厚感のあるデザインまでさまざまなパターンのラフデザインを作ってくださったんです。山崎さんは一つひとつ丁寧にご覧になり、「これはここが〇点」「こっちは●●なので〇点」など採点形式でチェック、「自分はこれが一番好きだ」といって選ばれたのが、いまのデザインで、さらに作り込んでいきました。親から子へ手紙を書く機会なんてなかなかないですよね。そういう素敵な人生の節目にふさわしいデザインになったと思います。

「ポップなイメージから、重厚なデザインまで。山崎さんのチェックを経て、現在のカバーデザインに落ち着きました」画像

▲ポップなイメージから、重厚なデザインまで。山崎さんのチェックを経て、現在のカバーデザインに落ち着きました。

山崎さんが残した最後のメッセージが詰まったこの本。「あとがきの『幸福の秘訣』は必見です。」

――あとがきに「余命3か月なら、ぜひやっておきたいと思った3つのことのうち1つが本書の執筆でした」とありました。

「あとがきは全体を書き終えた最後に書きますね、4ページくらいとっておいてくれるといいかなあ」とおっしゃっていて、空けてお待ちしていました。この原稿をいただいたときに、山崎さんもとても思い入れを持って作っていただいたとわかって、とても感動し、ありがたいと思いました。そして、山崎さんが人生最後に見つけた、幸福についての「秘訣」に心が震えました。この部分は、ぜひお読みいただきたいです。

 山崎さんとはもう20年以上のご縁になります。最初は週刊誌の連載コラムの担当をしていました。それから本の執筆などいろいろなお仕事をご一緒させていただき、その都度ずいぶんわがままを聞いていただいたものです。「せっかく書いたのだから早く読んで!」などと怒られたこともたびたびあります(笑)。

 最後にご連絡いただいたのが、本書を脱稿したあとの12月29日のメールでした。そのときはまさかこんな早いお別れになるなんて思っていなかったので、とてもショックを受けて……でも、とにかく、この本を多くの人に届けないと、と気合が入りましたね。

――改めて、どんな方に読んでほしいですか。

 やっぱりまずは、まさにこれから社会に出る、また社会に出たばかりの若者のみなさんに読んでいただきたいです。若い人、素直な人が資本主義のシステムのなかで、不利な立場になってしまう。山崎さんは、そういったことを常々、苦々しく感じていらっしゃいました。本書には、そうならないために知っておくべきことが詰まっています。そしてこの知恵は、若い人に限らず、すべての人の人生に役立つでしょう。

「お金の心配をせず、自由に気分よく、自分らしく生きていくための明るい人生のマニュアル」にしたい、との思いがこもった一冊です。最後の書き下ろしとなりましたが、楽しく読んで、それぞれの人生に役立てていただけたらうれしいです。

「お金の心配をせず、自由に気分よく、自分らしく生きていくための明るい人生のマニュアル」にしたい、との思いがこもった一冊です 画像

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山崎元(やまざき はじめ)プロフィール

「山崎元」画像

 経済評論家。1958年、北海道生まれ。東京大学経済学部を卒業後、三菱商事に入社。野村投信、住友生命、住友信託、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一証券、明治生命、UFJ総研など計12回の転職を経験。コンサルタントとして資産運用分野を専門に手掛けるほか、経済解説や資産運用を中心に、メディア出演、執筆、講演会多数。ズバリ語る辛口の経済解説、マネーコラムで人気を博した。『リスクとリターンで考えると、人生はシンプルになる!』(ダイヤモンド社)、『ほったらかし投資術』、『超簡単お金の運用術』(以上、朝日新聞出版)、『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』(文響社)などベストセラー多数。

メディア掲載情報

●2024/2/15「東洋経済オンライン」で紹介されました
●2024/2/15「婦人公論.jp」で紹介されました
●2024/2/15「マネーポストWEB」で紹介されました
●2024/2/22「やさしい投資信託のはじめ方」で紹介されました
●2024/2/25「産経新聞」で紹介されました
●2024/2/26「プレジデントオンライン」で紹介されました
●2024/2/26「AERA」で紹介されました
●2024/2/26「Aの伝言」(BS朝日)で紹介されました
●2024/2/27「現代ビジネス」で紹介されました
●2024/2/28「幻冬舎THE GOLD60」で紹介されました
●2024/3/13「BUSINESS INSIDER」で紹介されました
●2024/3/16「朝日新聞」の書評コーナー「売れてる本」で紹介されました
●2024/4/3「ダイヤモンドオンライン」で紹介されました
●2024/4/21「日経新聞」の「マネーの本棚」で紹介されました
●2024/5/23「あの本、読みました?」(BSテレ東)に編集担当が出演し、本が紹介されました

商品の紹介

『経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて』書影

■書名:『経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて』
■著:山崎 元
■発行:Gakken
■発売日:2024年2月15日
■定価:1,760円 (税込)

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