暗い、重い、切ない……。でも、読んでほしい。現代の子どもが直面する問題を題材に、少女たちの生きる姿を描いた感動作を収録。

悩みを抱く少女たちを描いたYA向けアンソロジーが発売

　ヤングケアラー、不登校、自傷行為、PTSD――現代の多くの子どもたちが抱える問題に向き合い、つまずきながらも立ち上がる少女たちの珠玉の物語。
「翼をもたない私たちは、それでも空を飛びたかった。」「アオイハルノ、ミエナイイバラ。」「わたしは、わたしの色で、わたしを描く」の三編を収録。
　どの作品も、決して明るいテーマではないが、主人公の少女たちの決断や成長は、読者の共感を生み、感動を与える。問題を抱える当事者だけではなく、周囲の人間もどう行動するべきかを考えさせられる一冊なので、ぜひ幅広い世代に読んでほしい。

▲『翼をもたない私たちは、それでも空を飛びたかった。』

▲人気イラストレーター、orie氏のイラストも作品の雰囲気をよく表している。

「翼をもたない私たちは、それでも空を飛びたかった。」のあらすじ

　父の仕事の都合で、ロンドンから大阪の中学校へと転入した山瀬あずみ。
　両親の離婚で孤独を感じながらも誰にも言えず、自傷行為をすることで「生きている証」を得ていた。
　本心を隠し、うわべを取り繕ったあずみの新生活は、一見順調に見えたが、言葉を発しないクラスメイト、片岡賢との間に起こったある事件がきっかけで一変してしまう。
　父親との関係もうまくいかず、周囲に対して心を閉ざすあずみだが、弁当屋の「アツコさん」はそんなあずみに何かと声を掛けてきて――。
　山下君子氏による表題作は、宮崎あおい主演のラジオドラマにもなった作品。

▲「翼をもたない私たちは、それでも空を飛びたかった。」より

「アオイハルノ、ミエナイイバラ。」のあらすじ

　坂口莉央は、学校では友達と楽しく過ごす普通の高校生だが、家では、仕事で忙しい母親に代わり、祖母の介護と家事に日々追われていた。
　中学の時の経験から、友達にはそのことを話せずにいたが、自分と似たような境遇にある長谷川由奈と親しくなり、辛さを分かち合うようになる。
　しかし、介護で学校行事の練習に出られない由奈に向けられる目は冷たく、莉央は学校生活と介護・家事を両立できるよう頑張るが、ついに限界がきてしまう。
　小中学生に大人気の「５分後に意外な結末」シリーズの執筆陣の一人、麻希一樹氏がヤングケアラーの問題について丁寧に描いた一作。

▲「アオイハルノ、ミエナイイバラ。」より

「わたしは、わたしの色で、わたしを描く」のあらすじ

　アイドルにファッション、ＳＮＳ……周囲の話題についていけない蒼井千月は、クラスメイトから浮いていた。唯一好きな、絵を描くことも、「変わっている」とみなされてしまう。
　中学校ではなじもうと努力するものの、周囲に溢れる「情報」に耐えられなくなり、学校へ行けなくなってしまった。
　ある日、心配した父親に、父親の知人が開いている「どんぐり教室」に連れていかれ、鏡文字で文章を綴るカガミくんに出会う。二人は少しずつ心を開いていき、互いの好きなことを活かして、「あること」を共同で始める。
「５分後に意外な結末」シリーズの執筆陣の一人、橘つばさ氏による一作。ラストの一文が美しい。

▲「わたしは、わたしの色で、わたしを描く」より

商品の紹介

■書名：『翼をもたない私たちは、それでも空を飛びたかった。』
■著：山下君子／麻希一樹／橘つばさ
■絵：orie
■発行：Gakken
■発売日：2023年8月10日
■定価：1,320 円（税込）

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