「宿題は何のため?」 宿題が出される目的とやる気アップの工夫

小学生の学び・子育て

公開日 2018.10.01
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レンポジ

 いつの時代も、小学生と宿題は切っても切れない関係。お子さまに「宿題は?」と聞くのが口癖になっている保護者さまも、子どものころは同じことを言われていた記憶があるのでは。口うるさく言うのは気持ちがいいものではありませんが、保護者ならどうしても気になってしまうものかもしれません。

 そもそもなぜ「宿題」が出されるのでしょうか。その理由を知ると、宿題の意義や宿題嫌いのお子さまとどう向き合えばいいかも見えてくるかもしれません。今回はお子さまのモチベーションの引き出し方や、学習習慣を育むための保護者さまからのアプローチ方法などを紹介します。

宿題は義務ではない?

 宿題は必ず出されるもの、やらなくてはならないものと考えられがちですが、本当にそうなのでしょうか。子どもの教育に関する法律として、「教育基本法」や「学校教育法」がありますが、宿題という言葉は登場しません。課外活動のことまで細かく定めた「学習指導要領」にも、宿題に関する記載はありません。つまり現在の公教育では、家庭での学習(宿題)まで行うことを求める規定はないということ。宿題に出すプリントを作ったり、提出された宿題のチェックをしたりするのは、あくまで先生の厚意と言えます。

 このように統一されたルールがあるわけではないので、方針は学校によってまちまち。そのため、宿題の出し方や分量は、先生の裁量に任されていることが多いようです。

先生が宿題を出す5つの理由

 宿題を出すことを強制されているわけではないのに、それでも宿題を出す先生が多いのはなぜでしょうか。それは、「子どもたちにとって宿題は必要」と考える先生が多いからに他なりません。では、お子さまが宿題に取り組むメリットをあらためて考えてみます。

1)授業で定着しない部分を補う

 限られた授業時間内では、習ったことを完全に理解できていなかったり、時間が経つと忘れてしまったりすることもあるため、自分で復習する必要があります。なかなか定着しにくく繰り返し学習が有効な計算問題や漢字の書き取り、苦手な子が多い単元を宿題に出す先生が多いようです。

2)家庭での学習習慣をつける

 宿題を通じて家庭学習に取り組むことは、子どもの学習習慣を育む効果があります。毎日決まった時間に一定量の学習を継続することができれば、学力の積み重ねにも役立ちます。

3)考える力・表現する力をつける

 今の学習指導要領では「生きる力」を育むことを目指しており、その一環として授業でも思考力や表現力が重視されています。作文や日記などの宿題は、自分が感じたことや考えたことを表現する訓練になっています。

4)ひとりひとりの理解度の確認

 提出された宿題を見た先生は、お子さまの授業の理解度、家庭での学習に対する態度などを推し量ることができます。授業進行や個別のフォローに反映するためにも、宿題が役立っていると言えます。

5)前もって授業の準備をする

 宿題はその日に習ったことの復習が中心ですが、授業進行をスムーズにするため、予習的な学習が宿題として出されることがあります。たとえば、「教科書の〇ページまで読んでおく」といったこと。次の授業でどんなことをやるのかを知っていると、授業でも理解度が深まり、お子さまの自信にもなります。

 このように宿題は授業の補習や家庭学習の習慣化を担っていると考えると、やはり大事なことだということがわかります。

叱らずに宿題へ向かわせる声かけ

 宿題にはお子さまの学力向上につながる様々なメリットがありますが、意欲がないのに無理強いをすれば逆に勉強嫌いを助長してしまうものでもあります。宿題をやりたがらないお子さまに、叱って強引にやらせていたら、かえって勉強嫌いになってしまう可能性もあります。お子さまのためにも、自ら進んで宿題を終わらせる習慣付けをしたいですね。

 そのためには、ついつい保護者さまが口にしてしまいがちな、「早く宿題をやりなさい!」という言葉を変えるところから始めてみましょう。宿題のことで怒られ続けていたら、「宿題=嫌なもの」という意識付けが働いてしまいます。宿題がイヤでグズグズしているお子さまにこそ、否定的、威圧的な言葉は避けたいものです。

▼宿題前の声かけ例

「今日の宿題はどんなことをやるの?」

「宿題が終わったらおやつだけど、何が食べたい?」

「(遊んでいる子どもに)さ! そろそろやっちゃおうか」

「ちょっとだけ今のうちにやっておく?」

 一方的に急かされたり叱られたりすると、突き放されたようでますます気が重くなってしまいます。お子さまの宿題に一緒に付き合うような気持ちで、かける言葉を考えてみてはいかがでしょうか。

 イヤイヤでも宿題に向かい始めたら、今度は褒めるポイントをひとつでも多くみつけましょう。大人から見れば簡単な宿題でも、お子さまにとっては大変なこともあります。特に、宿題を嫌がるお子さまには、完璧を求めないこと。字が汚くても、うまくできていなくても、取り組んだことを褒めることはできるはず。「宿題をすると褒められる」が定着すれば、宿題に向き合う態度の変化が期待できます。

前向きに取り組むために保護者ができること

レンポジ

 宿題をお子さまにとって「前向きに取り組みたくなるもの」「取り組む価値のあるもの」にするためには、保護者さまの関わり方が重要になってきます。ずっと横で見守るのは現実的ではありませんが、お子さまの宿題に興味を持ち、何をやるのかを把握すること、そして終わったら目を通してあげることは可能なのではないでしょうか。

 お子さまにとって孤独に取り組む宿題はやりがいがなくつまらないものですが、努力を認めてくれる人がいれば張り合いになるはずです。毎日宿題に関わっていると、授業の進行やお子さまの苦手箇所なども見えてきますので、どんなフォローをすればよいかがわかり、学習効果も得やすくなるでしょう。

 また、授業での理解が不十分で宿題がなかなか進まないお子さまには、デジタル学習教材を活用するのも手です。最近は教科書に沿った内容を動画などで解説してくれる教材や自動で採点してくれる教材も出ています。タブレットやスマートフォンだと自分から進んで手に取るお子さまも多いので、宿題とセットで進めると学習効果が上がるケースも…。予習をしたり苦手分野に取り組んだりするのにもおすすめですよ。宿題への意欲が増して、教える手間やストレスが減れば、一石二鳥ですね。

ライター ミナミダカズキ
 教育系出版社の編集者を経てフリーに。編集者時代は幼児教育や中学受験に関する企画を数多く取り扱う。現在は各種WEBメディアに執筆している他、幼児向け教育アプリのシナリオライターとしても活動している。

※このコラムは、「ガッケン!ハッケン!学研ゼミ 保護者のよみもの ハッケン!みっけ!」に掲載されていたものです。

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