小学生のおねしょ(夜尿症)を治すには? 宿泊行事を乗り越える対処法

子育て

公開日 2018.09.04
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レンポジ

 幼児期のお子さまにはおねしょがよくあるもの。しかし、中には小学生になっても続くお子さまもいます。「なぜうちの子だけ?」「どこか異常があるのでは?」などとネガティブに考えてしまいがち…。周囲に言いにくく、人知れず悩んでいる方も多いようです。

 幼児期の夜尿(夜の睡眠中に、無意識で排尿してしまうこと)はおねしょといいますが、5~6歳(小学校入学前後)になっても月に数回以上夜尿をする場合は、夜尿症と呼ばれています。

 しかし、小学生の夜尿症は決して珍しいことではなく、「よくある子どもの悩み」のひとつです。お子さまを叱ったり、責めたりするのは逆効果。

 原因を把握して正しく向き合うことが、早期に治すポイントになります。今回は、小学生の夜尿症の原因や対処法、宿泊行事のときの対応などをご紹介します。

小学生のおねしょ(夜尿症)の原因は?

 成長段階にある小学生のうちは、その日の体調や水分摂取量によって、たまたま夜尿をしてしまうことはあるものです。ただし、頻繁に続いているようなら「夜尿症」という病気である可能性もあります。

「夜尿症」には、主に2つの原因があると言われています。

<夜尿症の原因>

●夜間の尿量が多い(多尿型)

 尿の量は、脳から分泌される「抗利尿ホルモン」でコントロールされています。このホルモンは、夜間に多く分泌されて膀胱で作られる尿量を減少させますが、体の発達過程において分泌のリズムがまだ整っていないと、睡眠中も尿が多く作られてしまう場合があります。

●膀胱の容量が小さい(膀胱型)

 膀胱は伸縮性があり、尿がつくられると膨張してためられる仕組みになっています。膀胱の機能が未発達だと十分に広がらず、睡眠中に作られた尿をためておくことができない場合があります。

 小学生の夜尿症は、どちらかひとつの原因だけではなく、多尿型と膀胱型が混ざった「混合型」であることもよくあります。体が未熟なために、夜間に作られる尿量と膀胱の容量のバランスが取れていない状態だということですね。

 中には尿意に気づいて自分でトイレに起きる子もいますが、夜尿症の子どもは眠りが深く、夜尿をしても気づくことがほとんどないのだとか。しかし、子どもがぐっすり眠るのは成長や発育に必要なためであり、尿意で目が覚めないことを心配しなくても大丈夫です。

 いずれにしても、子どもの発育には個人差があります。

 成長とともに「夜間の尿量」と「膀胱の容量」のバランスが整っていくと、夜尿症も自然に治っていくことが多いそうです。

おねしょ(夜尿症)対応の三原則は「焦らない」「起こさない」「怒らない」

レンポジ

 日本夜尿症学会の診察ガイドラインによると、学童期になっても夜尿が治らないお子さまは、小学校低学年では約10%、10歳でも5%前後いるとされています。統計だけでいえば、小学生の10人~20人に1人は夜尿で悩んでいるということ。同じクラスに同じ悩みを抱えているお子さまがいてもおかしくないということですね。「うちの子だけ…」と焦ることはありません。

 夜尿を気にして夜中にトイレに起こすことが習慣になると、子どもの正常な睡眠リズムを乱してしまう可能性もあります。夜間の尿量をコントロールする抗利尿ホルモンの分泌が減ったり、膀胱機能の成長を妨げてしまったりして、かえって夜尿症が長引く可能性も。夜はなるべく起こさず、規則正しい生活を心がけて体の発育を促したほうが、夜尿症を早期に治すことにつながります。

 また、夜尿をしたことを叱ったり、責めたりするのは逆効果。だれよりも「おねしょ(夜尿)をしたくない」「早く治したい」と感じているのはお子さま自身です。無意識に口にした否定的な言葉がお子さまを傷つけ、苦しめてしまうこともあります。

 このように、子どもの夜尿症に向き合うには、「焦らない」「起こさない」「怒らない」の3つがポイント。本人が気をつければ改善されるものではありませんので、深刻になりすぎないことが肝心です。保護者さまもご苦労が多いと思いますが、「この子は、他の子よりも成長がゆっくりなのだな」と考えてあげてくださいね。

おねしょ(夜尿症)を早く治したい場合は病院で診察を

 夜尿症は成長とともに自然に治ることがほとんどですが、お子さまが自信を失ったり、悩んだりする姿は、見ていてつらいですよね。たびたび後始末をしなくてはならないのは、保護者さまにとっても負担だと思います。夜尿症は治療することもできますので、気になるときは病院で受診してみてはいかがでしょうか。

 夜尿症の治療は、小児科や泌尿器科などで対応してくれます。どこで受診したらいいかわからないときは、まずはかかりつけ医に相談するとよいでしょう。日本夜尿症学会によると、適切な生活指導や薬での治療で、自然経過よりも治癒率が2~3倍高まり、治癒までの期間も短縮できるそうです。

 病院では、夜尿症の原因を調べて、それに応じた治療法を提示してもらえます。具体的には、水分の摂り方やトイレに行くタイミングの指導などです。生活指導だけで効果が見られない場合は、夜間の尿量を減らす薬や膀胱の収縮を抑制する薬などを使用して、改善を目指します。

 だれにも相談できずにいた悩みを専門家に聞いてもらうことで、心が軽くなるお子さまや保護者さまも多いようです。

宿泊行事でのおねしょ(夜尿症)が心配なら

 最初にお話ししたように、小学生の夜尿症の悩みは、決して珍しいものではありません。学校側も対応に慣れていると考えてよいと思います。実際、私が長男(小学5年生)の宿泊行事の保護者説明会に行ったときも、先生から「毎年、数人からおねしょ(夜尿症)のことを相談される」という話を聞きました。

 夜尿症の心配があるお子さまには夜中に声をかけてトイレに行かせたり、朝は早めに起こして必要なら着替えさせたりしているそうです。保護者さまから「こうしてほしい」という希望があれば可能な限り対応してくれますし、他のお子さまに気づかれないよう配慮もしてもらえます。

「先生に言うのは恥ずかしい」「宿泊行事に参加したくない」と考えてしまうお子さまもいると思いますが、この経験を乗り越えれば自信がつき、精神的な成長も期待できるかもしれません。「おねしょ(夜尿症)に悩んでいるのは、あなただけではないよ」「心配しなくて大丈夫だよ!」などとポジティブな言葉で励ましてあげてくださいね。

ライター 大原三千江
 WEB媒体を中心に執筆を続けるフリーライター。男の子と女の子、2人の小学生の母。子育てや教育に関する取材やインタビューの実績が多く、役得とばかりにわが子にいろいろ実践している。

※このコラムは、「ガッケン!ハッケン!学研ゼミ 保護者のよみもの ハッケン!みっけ!」に掲載されていたものです。

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