新しい試みを取り入れる

渡邉みどり『美智子さまに学ぶエレガンス』セレクション

更新日 2020.07.31
公開日 2017.10.03
  • Facebook
  • LINE
  • Pinterest

 昭和四十年代、軽井沢でご静養中の美智子さまは、白のジャケットにグレーのパンタロンといういでたちで、まだ赤ちゃんだった紀宮(のりのみや)さまを抱っこし、四歳上の礼宮(あやのみや)さまの手を引いて、颯爽と歩まれました。その後を、胸当てがついたズボンをはいた浩宮さまが、小走りにお母さまの後を追います。
 三人のお子を育てる、活気あふれるお母さまという印象で、なんともほほえましい風景でした。しかも、その装いは、当時、パリで流行していたイブ・サンローランのパンタロンスーツ。
 スポーティーなパンタロンは、世界中の働く女性に支持され、大流行していました。
美智子さまは、そのパンタロンを、皇室として初めて「子育て」に取り入れられたのです。

 当時、美智子さまは、私たちのファッションリーダーでした。
 美智子さまのファッションは、メディアで紹介され、いち早く銀座のデパートで展示されました。
 美智子さまがお召しになったのとそっくりの横じまのワンピースを、私も銀座の「三愛」に買いに走ったことがあります。九千八百円でした。

 美智子さまの洋服のデザインを担当していた芦田淳さんは、こう言います。
「ふだん着は、わりとかわいいものをお好みでした。刺繡やアップリケのしてあるものなどです。公式でないときは、わりと自由にお考えになる。いろんな楽しいデザイン、かわいらしい色も取り入れて、たとえば、マタニティーはうんとロマンチックにするなど、そんなこともありました。
 初めてお会いしたのは、美智子さまが三十五歳くらいのときでした。ちょうどスカートの流行がミニになるときでしたから、少しスカートを短くしていただくとか、最初にパンタロンをおすすめしたこともありました。
 はじめは、ミニもパンタロンも抵抗がおありになったようでしたが、話を非常によく聞いてくださる方だったので、だんだん取り入れていただくことになりました」

 保守的になりすぎず、新しい試みにも挑戦する。
 けれど、流行を取り入れることがあっても、たとえば、肌を露出するファッションなど、奇抜なものは取り入れない。
 それが「選択」を知る、大人の女性のエレガンスですね。

渡邉 みどり (わたなべ みどり)
ジャーナリスト、文化学園大学客員教授。 1934年、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、日本テレビ放送網入社。報道情報系番組を担当(婦人ニュース・ワイドショー・木曜スペシャル)。 1980年、担当ドキュメント番組「がんばれ太・平・洋 新しい旅立ち! 三つ子15 年の成長記録」で日本民間放送連盟賞テレビ社会部門最優秀賞受賞。昭和天皇崩御報道のチーフプロデューサー、副理事。1995年、『愛新覚羅浩の生涯』(読売新聞社)で第15回日本文芸大賞特別賞受賞。 近著に、『写真集 美智子さまのお着物』(木村孝との共著 朝日新聞出版)、『日本人でよかったと思える 美智子さま 38のいい話』(朝日新聞出版)、『美智子さま 美しきひと』(いきいき)、『美智子さま マナーとお言葉の流儀』『美智子さまから眞子さま佳子さまへ プリンセスの育て方』(共にこう書房)、『とっておきの美智子さま』(監修 マガジンハウス)など。

作品紹介

美智子さまに学ぶエレガンス

日本女性としてお手本にしたい、皇后・美智子さまのエレガンス(気品)の秘密を、とっておきの写真とエピソードで紹介します。
定価:本体1,400円+税/学研プラス

バックナンバー

  • Facebook
  • LINE
  • Pinterest

あわせて読みたい