勇気をもって 「NO」という

井上裕之『たった一度の人生を、自分らしく思い通りに生きる方法』セレクション

更新日 2020.07.17
公開日 2015.02.06
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 「NO」。このひと言ほど、口に出すのに勇気を必要とする言葉はないでしょう。
 私は少し前まで、「NO」ということが苦手でした。せっかく声をかけていただいた、その気持ちにお応えしたいと思うあまり、「これはむずかしいな」「ちょっと違うのでは?」と思っても、つい「YES」といってしまうのです。
 こうした気持ちは全面的に悪いともいえないでしょう。ときには、こうした気持ちから、むずかしいと思えたことが実現することもあるのですから。
 でも、たいていは、最初の直観はたいてい正しい。「NO」といわなかったために、いらない苦労を山ほどしたあげく、結局、成果を得られなかったということも少なくないのです。

「NO」をいうことで、自分も相手も救われる——。「NO」はそうした契機になることも多いことを知っておきましょう。

 以前、ほとんど固まっていた企画を、最後の最後で「NO」といったことがあります。実は、最初から小さなトゲが刺さっているような、どこかすっきりしない気持ちがあったのです。でも、相手の熱意に引きずられ、ずるずる進めてきてしまった企画でした。
 でも、やはり、このままの形ではやりたくない。やるべきではない。そうした気持ちをどうしてもぬぐうことができず、本当に申し訳なかったのですが、最後に「NO」といったのです。
 相手はびっくりしていました。「ここまでやってきたのに」とか「いまさら」とか、いいたいことはいっぱいあったでしょう。でも、「わかりました」と静かにいっただけ。
 けれどもそれから少しして、新しい企画を提案してきたのですから立派です。今度の企画は文句なし。私も、前の「NO」の分までせいいっぱい協力しました。それ以上に企画者のがんばりが功を奏し、上々の結果になりました。
 それ以来、「NO」というべきときには、きっぱり「NO」というようにしています。

◎古巣の再建のため1000回以上の「NO」をいった男

 自分のやり方を徹底的に通し、けた外れの結果を残した人といえば、スティーブ・ジョブズをおいてほかには語れないでしょう。パソコンの時代を切り開いたばかりでなく、携帯音楽プレーヤーのiPod、さらにはスマートフォンのiPhoneなど画期的な商品を開発したその手腕から、エジソン並みのイノベーターとして世界から称賛されていることはご存じの通りです。
 ジョブズはがんのため、2011年10月5日、56歳で死去。開発者としても、事業家としても、時代の先頭を激しく、雄々しく生き抜いた人生でした。
 自分が創ったアップル社から放り出されたり、その後、経営があやしくなると復活してほしいと求められたり。彼がふたたびアップル社に戻ったとき、会社はまさに瀕死の状態でした。立て直しにかかったジョブズは、1000回も2000回も「NO」といいつづけ、本当に重要なものだけを採用して、その結果、みごと再建に成功します。
 その後さらに、iPod、iPhone、スマートフォンと、次々新しい時代を開く画期的な製品を開発し、ことごとく成功させます。それらの成功も「徹底してNOをいいつづける姿勢」からもたらされたものにほかありません。

 ビジョンがあればNOがいえる。
 NOをいえればビジョンが実現する。

スティーブ・ジョブズ(1955〜2011)実業家

 ジョブズの「NO」にはいつも明確なビジョンと強い目的意識がありました。それを満たさない場合は「NО」。本当にすぐれたものが出てくるまでは、妥協することなく「NO」。だからこそ、「NO」が大きな実りにつながったのです。
 頼まれたことはつい引き受けてしまう。そうして自分だけソンをしているように感じ、落ち込んでしまう——。そんなことはありませんか?
 そんな場合は、ジョブズを思い出してください。
 いつでも「YES」 をいうことが相手に対する誠意ではありません。
「ムリなことにはNO」「納得できないことにはNO」という勇気が、あなたと相手、両方の未来を変えていくのです。

井上 裕之 (いのうえ ひろゆき)

歯学博士、経営学博士、コーチ、セラピスト、経営コンサルタント、医療法人社団いのうえ歯科医院 理事長。
島根大学医学部 臨床教授、東京歯科大学 非常勤講師、北海道医療大学 非常勤講師、ブカレスト大学医学部 客員講師、インディアナ大学歯学部 客員講師、ニューヨーク大学歯学部 インプラントプログラムリーダー、ICOI国際インプラント学会指導医、日本コンサルタント協会 認定パートナーコンサルタント。世界初のジョセフ・マーフィートラスト公認グランドマスター。
1963年、北海道生まれ、東京歯科大学大学院修了。歯科医師として世界レベルの治療を提供するために、ニューヨーク大学をはじめ、ハーバード大学、ペンシルバニア大学、イエテボリ大学など海外で世界レベルの技術を取得。 6万人以上のカウンセリング経験を生かした、患者との細やかな対話を重視する治療方針も国内外で広く支持されている。
また、医療に関することだけでなく、世界中のさまざまな自己啓発、経営プログラム、能力開発などを学びつづける。成功法則の権威ジョセフ・マーフィー博士による「潜在意識」と経営学の権威ピーター・ドラッカー博士による「ミッション」を総合させた「ライフコンパス」を提唱。
現在はセミナー講師としても全国を飛び回り、会場は常に満員。2012年8月に東京・日本青年館で1,000名の講演を実現し、2014年には日比谷公会堂で1,200名を超える伝説のセミナーを成功させている。

 

作品紹介

たった一度の人生を、自分らしく思い通りに生きる方法

何のために働くのか。目標に向かい生きる充実した日々は、どうすれば手に入るのか――。人生の答えを求めて毎日を真剣に生きる人々に向け、歯科医師でありセラピストである著者・井上裕之が贈る渾身のメッセージ、そして「自分の価値観」を磨くためのヒント。

定価:1,300円+税/学研プラス

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