失念しておりました。

千田琢哉『20代で人生が開ける「最高の語彙力」を教えよう。』セレクション

更新日 2020.07.30
公開日 2018.02.19
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私の会社勤務時代、ある部下がミスをして、謝罪メールを送ってきた。
メールの文中には「失念しておりました。申し訳ございません」という言葉があり、
私はもう、それだけで許してしまった。
彼は西日本では最高峰の学校を卒業し、当時の大手都市銀行から転職をしてきた、
とても優秀な人材だった。
率直に申し上げて、仕事は群を抜いてできるわけではなかったが、
豊富な語彙力を武器に、チームの潤滑油として、
プロジェクトでは司令塔的な役割を見事に果たしてくれた。
私はここで、語彙力の大切さを再認識させられたのだ。

たとえばミスをした際に「すっかり忘れていました」と、
謝罪メールを送ってくる部下がいたとしよう。
仮に、上司がその部下を許しても、「鈍臭い」という印象は強く残るだろう。
上司とはミスをした部下に対して、無意識のうちに、
「仕事ができない上に教養もない」というレッテルを貼ってしまうものだ。
それに対し、冒頭例のように「失念しておりました」と謝罪メールに書いてあると、
上司はその部下に、こんな思いを持つ。
「仕事はまだ一人前ではないが、教養はあるのだから自分が育てないと申し訳ない」
失念の念は「念じる」という言葉もあるように、強い思いのことだ。
強い思いを頭の中からすっかり失ってしまうから、ど忘れという意味になる。

(※この連載は、毎週月曜日・全8回掲載予定です。次回は2月26日掲載予定です。)

 

千田 琢哉 (せんだ たくや)

文筆家。 愛知県犬山市生まれ、岐阜県各務原市育ち。 東北大学教育学部教育学科卒。 日系損害保険会社本部、大手経営コンサルティング会社勤務を経て独立。 コンサルティング会社では、多くの業種業界における大型プロジェクトのリーダーとして戦略策定からその実行支援に至るまで陣頭指揮を執る。 のべ3,300人のエグゼクティブと10,000人を超えるビジネスパーソンたちとの対話によって 得た事実とそこで培った知恵を活かし、 “タブーへの挑戦で、次代を創る”をミッションとして執筆活動を行っている。

■E-mail
info@senda-takuya.com

■ホームページ
http://www.senda-takuya.com/

作品紹介

20代で人生が開ける「最高の語彙力」を教えよう。

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