◆傷つくことを恐れて、人を攻撃してしまう
前回「優位に立ちたい人」は、無意識にこちらを「傷つける」ことを目的にしていると説明しました。この「傷つける」とは、要するに、何らかの手段を用いて「攻撃する」ということです。
ただ、この「傷つく」ということに関しては、攻撃される人だけではなく、攻撃する人も傷つきます。攻撃するから傷つかないというわけではありません。
相手に傷つく言葉を投げかけたり、相手を傷つける行動をとることで、知らないうちに、攻撃している当人も、自分の行為に傷ついていきます。
たとえば、自分の学歴を自慢したい人が、相手に、
「私の親しい同級生は、医者や大学教授ばかりなんだ。議員になった人もいるわ」
と言ったとしましょう。こんな言葉の裏には、逆に、自分の親しい同級生に対して、自慢したい本人がコンプレックスを抱いています。
当然、相手は傷つきますが、その言葉を発した当人も、同様に、自分が発した言葉によって傷つくのです。
優位に立ちたい人は、もともと「自分は劣っている」という思いを持っているため、そこを他人から指摘されることを極度に恐れています。
その恐れから、指摘される前に攻撃を仕掛けてしまうのですが、そこで自分の発した言葉によってさらに劣等感を刺激され、傷を深めていくのです。
客観的に見て、それがどんなに理不尽な理由であったとしても、傷つけた側である当人自身が傷ついている事実には変わりません。
しかも、相手を傷つける目的で攻撃している人は、実際に攻撃をしているその最中に、恐らく「今度は自分が傷つけられるのではないか」という不安や恐れとともに相手を傷つけています。
傷つけられれば、もちろん傷つきます。しかし、「傷つく」という点においては、加害者と被害者、どちらも同じように傷つくといえるのです。
他者に対して何が何でも優位に立ちたい人の心の奥には、こうした「傷つくことを極端に恐れる」心が潜んでいるのです。
「とにかく人より優位に立ちたい」という強烈な意識を発している人たちは、無意識のところで、人を傷つけることを目的としています。
そしてそれは、元をただせば、自分自身が「非常に傷ついているから」でもあるのです。
(※この連載は、毎週木曜日・全8回掲載予定です。次回は、9月28日掲載予定です。)
石原 加受子 (いしはら かずこ)
心理カウンセラー。
「自分中心心理学」を提唱する心理相談研究所オールイズワン代表。日本カウンセリング学会会員、日本学校メンタルヘルス学会会員、日本ヒーリングリラクセーション協会元理事、厚生労働省認定「健康・生きがいづくり」アドバイザー。 思考・感情・五感・イメージ・呼吸・声などをトータルにとらえた独自の心理学をもとに、性格改善、親子関係、対人関係、健康に関するセミナー、グループ・ワーク、カウンセリング、 講演等を行い、心が楽になる方法、自分の才能を活かす生き方を提案している。
『母と娘の「しんどい関係」を見直す本』(学研プラス)、『仕事・人間関係「もう限界!」と思ったとき読む本』(KADOKAWA)、『わずらわしい人間関係に悩むあなたが「もう、やめていい」32のこと』( 日本文芸社)、『金持ち体質と貧乏体質』(KKベストセラーズ)など著書多数。
作品紹介
何かと優位に立ちたがるあの人。振り回されずに距離を保って、自分を守る方法とは?人気心理カウンセラーの石原氏が丁寧コーチ!
定価:本体1,400円+税/学研パブリッシング