嫌なことがあったり、落ち込むことがあったり、失敗したりすると、そのことだけに気持ちを奪われてしまい、生活のその他のことが目に入らなくなる。
しかし肝心なことを忘れてはいけない。
生活は回っていて、あなたと関わる人も動いていて、物事も同時並行ですべて進行している。エネルギーは躍動し、すべての物事は変化している。
それなのに「落ち込んだショック」という小さな「点」に自分を縛りつけ、自分の動きを止めてしまってはいけない。
この状態がつらいのは、当たり前のこと。あなたはエネルギーを失い、疲弊する。
それはなぜか? その状態は、まるで「川の流れ」のなかで必死に「岩」にしがみついて、その岩に執着する行為と同等だからである。
これでは人生はますます苦しくなる。
あなたは本来、この川の流れのなかでどう泳ぎ、どう人生を表現するか、どう命のエネルギーを燃やすかを、考えなければならない。
それなのに、流れに逆らい、必死に岩にこだわり、動きを止める。体力も気力も消耗し、ただ無駄に苦しむ。
人生は流れに乗り、変化する流れに対応し、それを楽しむ川下りのようなものだ。
移り変わる景色を楽しむ行為である。
「すべては変わりゆく」
その真理に逆らってはいけない。逆らえば不健全な状態が訪れる。
時間は流れている。森羅万象のエネルギーも躍動している。それにもかかわらず「最悪な状態」に自分の意識を縛りつけるという「不毛な行為」から抜けられない。
「悪い状態のまま、ずっとつづくのではないか?」
そんな錯覚が私たちを苦しめる。
しかし実際は、最悪な状態は起こった瞬間に過去のものとなる。
川の流れだって同じだ。大きな岩にぶつかって砕けた瞬間に、川の水は次の流れをはじめる。ここで岩にぶつかったことを悔み、この岩にしがみつき「どうしてぶつかったんだ?」とは悔やまないのだ。
流れていれば、海に辿りつくまで「岩」にはぶつかりつづける。しかし、ぶつかってもぶつかっても、流れつづける。この川の流れのように、流れつづけること、それが本来の「生きる」ということだ。
ぶつかってしまった「岩」にこだわって、自分を縛りつけるなど、そもそも不自然な行為なのである。
あなたが必死で過去にしがみつき、悩もうと、あなた以外の森羅万象は、無情にも動きつづける。あなたが起こした失敗も呑み込みながら、動きつづける。
その事件すらも、やがて呑み込まれて消える。
嫌なことが起きたとき、失敗してしまったとき、「すべては変わりゆく」と、心を諭すことが賢明だ。
起こった瞬間に、すべては「過去」になる。近い過去も、いずれは遠い過去になる。
そして、遠い過去は、人々の記憶からも消えるのである。
潮凪 洋介 (しおなぎ ようすけ)
エッセイスト・講演家・イベントプロデューサー。株式会社ハートランド代表取締役。早稲田大学卒。「好きなことに挑戦して輝く学校」自由人生塾を主宰。自分らしい生き方の発見と自己実現をサポート。
個人個人に合った「人生づくり」の具体的なアドバイスを日々実施している。
シリーズ累計20万部突破のベストセラー『もう「いい人」になるのはやめなさい!』(KADOKAWA)、『「バカになれる男」の魅力』(三笠書房)、『仕事に殺されないアナザーパラダイスの見つけ方』(フォレスト出版)、『お金に殺されない人が大切にしている40のこと』(総合法令出版)ほか、著書多数。
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