第10回 増田セバスチャン(ますだ・せばすちゃん)

私の1冊 インタビュー 増田セバスチャン

更新日 2020.07.16
公開日 2014.12.04
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人生に迷っていた僕を今の姿に導いてくれた1冊

 寺山修司さんの『書を捨てよ、町へ出よう』という本は、僕がクリエイターの道に進むきっかけになった大切な本です。

書を捨てよ、町へ出よう
寺山 修司・著
角川文庫

 僕がこの本に出会ったのは、「将来自分はどうなってしまうんだろう……」とこれからの人生に悩んで悶々としていた18歳の時。当時僕は大阪に住んでいて、まだ今ほどインターネットも普及していなかったので、無料でたくさんの本が読める図書館によく行っていたんです。そこでいろんな本を読む中で見つけたのが、この1冊です。最初に読んだ時は、書いてあることの意味や内容は正直ほとんど理解できませんでした。でもタイトルにある通り、「本なんか読んでないで、町へ出て行動しろ!」というメッセージだけはしっかりと伝わってきて、すごく刺激を受けました。これを読んでから、何か1つ自分で行動を起こすことから人生が変わるんだというふうに、ポジティブな考え方ができるようになって。このことが僕のキャリアの原点である「6%DOKIDOKI」の立ち上げから、今回の映画まで、さまざまなモノを創り出すクリエイターという人間になる原動力になりました。僕の人生を変えた本ですね。

 もしいま人生に迷っている人がいたら、ぜひこの本を手に取って、どのページでもいいから開いてみてほしいと思います。始めから順を追って読む必要はないので、開いたページに書いてあった1フレーズを大切にしてほしい。「1日1回怒ってみろ」など不思議なことが書いてあって、本当の意味を解釈するのは少し難しいのですが、なにか心に響くものがあると思います。

  実は、今回初めて監督に挑戦したこの映画『くるみ割り人形』の旧作の元になった脚本を書いたのが、なんと寺山修司さんだったんです! これはもうやるなら自分しかないし、他の人に作らせたくないと思いましたね。なんだか寺山修司さんとは、不思議な運命を感じています。

 

増田セバスチャン(ますだ・せばすちゃん)

1970年生まれ。1995年”Sensational Kawaii”がコンセプトの伝説的なショップ「6%DOKIDOKI」を原宿にオープン。日本が世界に誇る“Kawaii”カルチャーの生みの親であり、今もそれを世界に向けて発信するアートディレクター、アーティストでもある。2011年きゃりーぱみゅぱみゅ「PONPONPON」PV美術で世界的に注目され、2014年に初の個展。
「Colorful Rebellion -Seventh Nightmare-」をニューヨークで開催した。

■増田セバスチャン OFFICIAL WEBSITE
http://m-sebas.asobisystem.com/

 

 

映画『くるみ割り人形』
増田セバスチャン・監督
アスミック・エース・配給
サンリオ・制作

「今作の元は1979年に製作された実写人形アニメーション映画。実は僕、小学2年生の時に旧作を観たんです。当時のことはあまり覚えていないけど、この映画だけは強烈に心にひっかかっていた。監督をやると決めた時、この“ひっかかるもの”を引き継ぎたいと思ったんです。僕のように、今作を観た子どもや若い世代が将来何かを創り出す人になるかもしれない。だから『過去から未来への接続』をテーマに掲げて初の監督に挑みました。旧作のフィルムを元に、全コマ絵コンテを描いて再構築。3Dもハリウッドのような激しい動きではなく、まるで小さな箱の中をのぞいているような感覚を追求しました。追加したアニメーションも、人形と同じように蝶々やクルミなど実物で作って動かしたんです。モノってCGのように思い通りの形や動きにならないけど、魂が宿るんです。そんなアナログの力と独特の世界観が、観ている方をワクワクさせてくれると思います」

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