今年デビュー30周年を迎える絵本作家・かさいまりさん。3月9日に最新刊『さくらちゃんのかえりみち』が出版されました。作品を書いたきっかけや、絵本作家としての想いなどを伺いました。
▲新刊『さくらちゃんのかえりみち』を手にパチリ!
▲『さくらちゃんのかえりみち』を書いたきっかけや、小学校を題材にした絵本を書く意味などを語る
かさいまりさん
―小学一年生の帰り道を舞台にした、とてもユニークなお話ですね
担当編集者から聞いた話が、『さくらちゃんのかえりみち』を書くきっかけでした。
担当編集者のお友だちのお子さんが、学校から友だちと一緒に帰りたいけれど、自分のお家が近いから、それを言わないで帰ったらしいんです。それで自分の家を通り過ぎて、途中でお友だちと別れて走って家に戻った。そんな話を聞いて、かわいらしい行動だなあ、絵本の題材になるなと思いました。
この題材をどうやってお話にするかというのが、その次の段階です。「帰り道」でお話を作ろうと思ったとき、初めて「帰り道とはなんぞや?」と考えました。学校からだけじゃなくて、職場からの帰り道も含めて、私たちの帰り道には、うれしかったり、楽しかったりということばかりじゃなくて、悔しかったり、落ちこんだり、悲しかったり、いろんな気持ちがありますよね。そういういろいろな気持ちをリセットしたり、落ち着かせたりできる、そういうことができるのが「帰り道」だなと思いました。
この絵本は、学校から家が近いせいで、その「帰り道」がないさくらちゃんの物語。でもさくらちゃんは、転校生のあおいちゃんのおかげで、楽しい「帰り道」を歩くことができました。読者の子どもたちにも、この絵本を通して自分にとって「帰り道」とはどんな道なのか、感じるきっかけになってほしいと思います。
―(かさいさんは)小学校が題材の絵本をたくさん書かれていますね
はじめから書こうと思っていたわけじゃなくて、これもある編集さんに、「小学校が題材の絵本を書きませんか」と言われたのがきっかけでした。
どうして自分は、小学校の絵本を書くのかなあと考えたときに、「あ、そうか」と腑に落ちたのは、小学校も「社会」だなと思ったこと。今の小学校って特に、いじめがあったりとか、仲間はずれや無視されたりとかもある。「自分が嫌い」っていう子も多いですよね。
そんな子たちに、何かこう寄り添えるような、「ちょっとだけ、がんばってみようかな」とか、「今の状態に負けられないな」とか、そういう気持ちになれる手助けができたらと思ったんです。絵本なんて、もちろん1,000分の1とか100分の1ぐらいの手助けにしかならないけれど、そういうことができるんじゃないかと思って。それで小学校のお話を作ろうか、という気持ちになりました。
―絵本は「子どもの気持ちに降りて書く」と言いますが、かさいさんの絵本の書き方とは?
私のなかでは、大人も子どもも気持ちは同じだと思ってるんです。さびしい、うれしい、悲しい、頭にきた…。そういういろんな気持ちって、大人も子どもも同じですよね。ただ「状況」が違うだけで。
わたしは、子どもから大人まで、おじいちゃん、おばあちゃんまで、同じように感じてもらえる絵本を作りたいなあと思っていて。だから、お話を書くときに、「子ども」の気持ちをすくい取るといういう感覚よりも、「ひと」の気持ちをすくい取るという感覚でいるんです。
―今年(2023年)は、かさいさんにとって、デビュー30周年の記念の年ですね
エピソードを拾うことと、言葉を拾うこと。それを拾い集めて、ハッと気がついたら30年経っていました。
わたしはもともと、作絵の絵本作家としてデビューしていて、今は絵も描くけれど、お話だけの絵本もたくさん作っています。ときどき、「どうしてかさいさんは、自分のお話なのにほかのひとに絵をつけてもらうんですか」と聞かれます。自分のお話は、自分が産んだ大事な子どもみたいなものだから、どうしても自分で絵をつけたいという絵本作家が多いですし。でもわたしは、「絵を描く」よりも、「絵本を作りたい」ひとなんです。
自分が作ったお話に自分の絵が必ず合うとは限らない。このお話には、わたしの絵よりも、こういう画家さんのほうがいいんじゃないかな、そのほうがいい絵本ができるんじゃないかなと思ったら、そのひとにどんどんお願いしてしまいます。自分で絵を描こうと思ったら、自分が苦手なもののお話は作らなくなってしまうけれど、他の方が描いてくださるんだったら、いろんなものが書けますよね。そうすると、書きたいお話がどんどん増えてきて。それで、いろんなお話を書いて、いろんなひとに絵をお願いして、気づいたら30年経っていました。だから、あまり30周年を特別なことには感じないです。通過点みたいなものですね。
―かさいさんにとって、絵本作家であることとは?
作家だってね、そんなにいろんなことを体験していないんです。いろんなひとのいろんな体験を聞いて、そこで気づくことって山のようにあります。
作家ってたぶん、お話を作ってるだけじゃなくて、自分の気持ちのなかに落とし込める「気づき」で、勉強になってるところがあるんです。だから、絵本を作ることで出会える気づきに「ありがとう」って思える、すてきな仕事だなと思います。
―2月、3月、4月と、ひさかたチャイルド、Gakken、アリス館の3社から連続して絵本が刊行されるそうですね
偶然、今年の春に3冊、連続して絵本が出ることになりました。ひさかたチャイルドから作絵で『ぼくとクッキーのなかなおり』・Gakkenから作を担当した『さくらちゃんのかえりみち』・アリス館から絵を担当した『どうぶつたくはいびん』です。作絵、作、絵と、いろいろな形でわたしの作品を見てもらえる。ありがたいなと思っています。たくさんのひとに、ぜひ手に取って見てほしいです。
6月24日には、神保町のブックハウスカフェで、1日だけの特別イベントも開かれることになりました。原画展と、聞かせ屋。けいたろうさん、担当編集者とのトークイベントです。もう少ししたらブックハウスカフェのウェブサイトで告知されますので、ぜひいらしてくださいね。
神保町ブックハウスカフェ
https://bookhousecafe.jp/event
―かさいさん、ありがとうございました!
【かさいまりさん プロフィール】
北海道生まれ。絵本作家。児童文学作家。小樽女子短期大学英文科卒業。北海道芸術デザイン専門学校卒業。子どもの心のゆれを題材としたお話作りを続け、全国で講演をおこなっている。主な絵本に『とくべつないちにち』(ひさかたチャイルド)、『ムカッ やきもちやいた』(絵・小泉るみ子 くもん出版)、『ばあちゃんのおなか』(絵・よしながこうたく 好学社)などがある。
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『さくらちゃんのかえりみち』は、3月9日発売。「どうやったら仲のいい友だちができるの?」「帰り道は誰と帰る?」など子どもたちの悩みが、ユーモアたっぷりに描かれています。ちょっと人見知りな子や、なかよしの友だちがほしい子へ読んであげてほしい絵本です。入学・進級祝いにもお勧めです。
商品の紹介
■書名:『さくらちゃんのかえりみち』
■作:かさいまり
■絵:吉田尚令
■発行:Gakken
■発売日:2023年3月9日
■定価:1,650円(税込)
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