仕事をするに当たって、「とにかく始めてみよう」というのはいいことです。
思いきって始めてみても、なかなかうまくいきません。
それは、実行はしても、完了していないからです。
僕のところに、「本を書きたい」と言う人が来ます。
「原稿は書けてるの?」と聞くと、「8割書けています」と言います。
8割で見てもらおうとするのは、ズルいのです。
そこでアドバイスすると、「それはあとの2割で出てくるんですよ」と言い逃れできるからです。
それならそれを書けばいいのに、永遠に書かないのです。
僕はシナリオを書くことで、ものを書く勉強をしました。
直接会ったことはないのですが、僕の中では黒澤明に習っています。
脚本では、一番最後に「了」と書きます。
大切なのは、エンドマークまできっちり書くことです。
そこまで書いてあって、初めてアドバイスができるのです。
途中のものには、アドバイスできません。
どんなに小さい仕事でも、完了させることが大切です。
「本の編集者を紹介してください」と言う人が多いのです。
僕は、まわさないように踏ん張っています。
意地悪ではありません。
原稿がないからです。
企画書では、判断のしようがありません。
原稿を書かないのは、「原稿を書いてムダになってはもったいない」と考えているからです。
シンプルを目指さない人は、効率を考えます。
効率を考えると、シンプルにならないのです。
大切なのは、企画書よりも試作品、企画書よりも原稿です。
完了させれば、前に進みます。
きわめて、シンプルです。
書いてしまえばいいのです。
原稿を最後まで書いて、それに対してコメントをもらうならわかります。
企画書の書き方を教わって、企画書がどんなにうまくなっても、原稿がなければ通らないのです。
シンプルな人は、あらゆることを完了させていきます。
ゴテゴテの人は、やりかけのものがたくさんあるのです。
中谷 彰宏 (なかたに あきひろ)
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。84年、博報堂に入社。CMプランナーとして、テレビ、ラジオCMの企画、演出をする。91年、独立し、株式会社中谷彰宏事務所を設立。ビジネス書から恋愛エッセイ、小説まで、多岐にわたるジャンルで、数多くのロングセラー、ベストセラーを送り出す。「中谷塾」を主宰し、全国で講演・ワークショップ活動を行っている。
■中谷彰宏公式ホームページ
http://an-web.com/
作品紹介
シンプルな人は、仕事も、恋愛も、人間関係もうまくいく。いらないものをそぎ落とすことで、チャンスをつかむ方法を紹介。
定価:本体1,300円+税/学研プラス
バックナンバー
- 軸とは、それがかなえば、 ほかのすべてを犠牲にできることだ。
- 完璧主義は、自分のため。 丁寧は、相手のため。
- 断る時に、理由をつけない。
- 試すことで、捨てることができる。
- 体験を増やすと、持ち物は減る。
- 安い服を毎日着がえるより、 いい服を毎日着る。
- ヒーローは、シンプル。 悪役は、ゴテゴテ。