「あなたの軸はなんですか」
「○○です」
「じゃ、ほかのものはいらないんですね」
「ちょっと待ってください」、
このやりとりは、おかしいのです。
「ちょっと待ってください」と言うものは、軸ではありません。
軸は、「一番欲しいもの」ではありません。
軸は、「それ以外のものがいらない」ということです。
たとえば、不動産屋さんに行ってマンションを探します。
「新築がいい」と言いながら、値段を提示されて「もっと安いところはないの」と言う人がいます。
それなら、最初から予算を言ったほうがいいのです。
「その予算なら、駅から遠くなります」
「駅から遠いのは、ちょっと」
「それを先に言ってくださいよ。駅からどれぐらいがいいですか」
「駅から5分」
「駅から5分だと、都心から2時間になります」
「それもちょっと」
この人は、軸が定まっていません。
不動産屋さんも、時間を奪われるだけです。
いい物件は、ほかのお客様にまわされます。
僕は、マンションを探す時に、「ほかの条件はもろもろいいですから、表参道で、予算は○○円です」と言い切りました。
表参道駅からなら、歩いて30分でも大丈夫です。
別の駅に着くぐらいでもいいのです。
そのほうが、不動産屋さんは紹介しやすいのです。
すべてのものに、メリットとデメリットとがあります。
軸が決まっていないと、メリットとデメリットを右往左往することになります。
メリットだけのものを探しても、永遠に見つかりません。
シンデレラにあこがれる人は、シンデレラが抱えている大変なデメリットが見えていないのです。
軸があると、メリット・デメリットの中で何を最優先するかがわかります。
たとえ、デメリットがあっても平気です。
「給料のいい仕事を紹介して」と言いながら、紹介された仕事に「休みが少ない」と文句を言う人は、仕事を紹介してもらえなくなります。
「休みは少なくても給料がいい」、または「給料は安くても休みが多い」のどちらか、軸をはっきりさせることです。
「シンプルである」ということは、「軸が決まっている」ということです。
軸が決まっているから、右往左往せずに生きられるのです。
中谷 彰宏 (なかたに あきひろ)
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。84年、博報堂に入社。CMプランナーとして、テレビ、ラジオCMの企画、演出をする。91年、独立し、株式会社中谷彰宏事務所を設立。ビジネス書から恋愛エッセイ、小説まで、多岐にわたるジャンルで、数多くのロングセラー、ベストセラーを送り出す。「中谷塾」を主宰し、全国で講演・ワークショップ活動を行っている。
■中谷彰宏公式ホームページ
http://an-web.com/
作品紹介
シンプルな人は、仕事も、恋愛も、人間関係もうまくいく。いらないものをそぎ落とすことで、チャンスをつかむ方法を紹介。
定価:本体1,300円+税/学研プラス
バックナンバー
- 完璧主義は、自分のため。 丁寧は、相手のため。
- 断る時に、理由をつけない。
- 試すことで、捨てることができる。
- 実行より、完了をする人が少ない。
- 体験を増やすと、持ち物は減る。
- 安い服を毎日着がえるより、 いい服を毎日着る。
- ヒーローは、シンプル。 悪役は、ゴテゴテ。