ザザは兵士になる決意をします。
現在世界で25万人とも、それ以上とも言われている子ども兵士です。もちろん女の子の兵士も存在します。子どもが兵士になる原因には、復讐心、生きていくための究極の手段、そして大人による誘拐などがあります。これらが複合したケースもあります。誘拐の場合は特に悲惨です。例えば、兵士になる動機のない子どもでも、傷口に麻薬をすり込まれ、敵を極度に憎んだり、殺人行為をまったく恐れないような人間に洗脳されてしまうのですから。
ザザは、自らの意志によって兵士になります。家族を殺したかつての仲間ウマルへの復讐のために…。煮えたぎる憎悪が彼を厳しい訓練に耐えさせ、“有能な”兵士にまで育てあげます。「憎いウマルを殺す! それでおれも死ぬ! それが一番いい」―ザザの独白で、急激な人格下降が描かれていきます。愛する者を殺された人――戦争、紛争であれ事件であれ――その人にはどのような感情やエネルギーが生まれるのか? もともとエネルギッシュな人間ほど、憎悪の感情も増幅されるとでもいうのか? 優しいザザの変貌ぶりに私は考え込んでしまいました。有能な兵士になるための圧倒的な努力を続けたであろうザザの日常を想像して切なくなりました。
しかし、絶望的な展開の中に、作者は小さな救いを用意します。ザザの母マイラが生きていたのです。そして日本から取材にやってきたマンガ作家・神田とマイラの会話から、そのわずかな救いが希望へと変わることを予感させるのです。
(編集担当者)
作品紹介
ジュネーブ条約上ではいてはならない14歳以下の「子ども兵士」。しかし現実に世界の紛争地域に存在する。そこで1人のマンガ脚本家が赤十字国際委員会から許可されたジャーナリストとして、アフリカの紛争地域を取材。解決の糸口を探った渾身のジャーナルコミック。
作・大石賢一
漫画・石川森彦
監修・赤十字国際委員会
¥1,200+税/学研プラス
(旧学研パブリッシング)