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瞑想は心の平安や安心感、
穏やかさを得るためのもの
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瞑想は、自分をありのままに眺める時間です。自分の光を覆っているストレスや感情のひとつひとつに気づき、消えてゆくのを眺める時間でもあります。
決して、「自分はできない」という種を植えるための時間でないし、「我慢大会」でもありません。
私が以前瞑想指導を受けたチベット人僧侶の先生は、「瞑想するのは、1分から始めるといい」と教えてくれました。
1分とは驚きですが、その際こんなやりとりがありました。
先生に日頃坐る(瞑想する)時間を聞かれたので、「30分」と答えたところ、「ちゃんと瞑想できていますか?」と尋ねられたのです。
「私は『数息観(すそくかん)』という呼吸に合わせて数をカウントする瞑想をしていますが、集中が途切れて、『あっ、いけない』と気づいて、また瞑想に戻ることがよくあります」と答えると、先生はこうおっしゃいました。
「それは『自分はダメだ』『できないから戻る』という心配や動揺の種を植えることになります。まずは、呼吸に意識を向けて1分から始めればいいですよ。1分間、坐れば、次の日は2分間坐れるようになります」
このように指導を受け、実際に坐ってみたあと、先生のおっしゃっている意味がとてもよく理解でき、「あ、できた!」と心から喜びが湧いてきました。そして、どんなに忙しくとも、いまいる場所で毎日少しずつ瞑想ができることは、とてもいいなと思いました。
先生は、そのほかにも次のようなアドバイスをくださいました。
「瞑想は、リラックスすることが何より大事です」
「長時間坐る際には、もし眠くなったら、少し目を開けて上を見て」
「瞑想中に雑念が浮かんできたら、起こっているそのことに気づく。心の流れを止めることはできません。呼吸に意識を戻せばいいのです」
「初めに長い瞑想をしてみてうまくできなかった人は、2度とやろうとは思えないでしょう。まずは1分集中できれば、次は2分できます。あるいは、1分坐り、心を休め、また1分。それを20回おこなってもいいですね」
これらのアドバイスは、瞑想を進めるうえで大いに役に立ちました。
瞑想が脳に与える影響は、いま医学的にも注目され、瞑想している僧侶の脳波状態の科学的な分析もされ、その効果が実証されつつあります。
もしあなたが、瞑想をやってみたいなと思っているなら、ぜひ1分間落ち着いて坐るところから始めてみましょう。
瞑想によって呼吸が深くなれば、自然に心は落ち着きを取り戻します。
そして、自分自身の内側から、あたたかさや気力がふつふつと湧いてきます。
その内面の明晰さを取り戻す時間が、瞑想なのです。
【椅子に坐ってできる1分間瞑想】
① 椅子に坐ります。
② お尻にある2つの坐骨と背骨を感じてください。次に、背骨をスーッと伸ばします。固い棒のようではなく、自然な柔軟さをもっているイメージです。
③ 両足は少し開いて、左右均等に体重をかけ、足の裏をぴったり床につけます。
(こうすることで、自然にバランスがとれ呼吸がラクになります)
④ 両手は太ももの上に手のひらを上に向けて載せ、軽く重ねます。
⑤ 軽く目を閉じ、あごを軽く引き、舌先は上あごの内側に軽くつけます。
⑥ 呼吸は鼻から自然におこないます。
⑦ 頭、顔、耳、頬、喉、上半身、腕、手のひら、下半身、両足、足の裏の順に意識を向けながら、筋肉をほぐしていきましょう。
⑧ 体を左右にゆっくりと揺り動かし、バランスのいい場所を見つけたら、もう一度背骨をゆったり伸ばします。
⑨ 自然な呼吸を続けながら、瞑想に入ります。
⑩ 時間が来たら、ゆっくり目を開けて、瞑想を終了します。
ポイント①
慣れてきたら1回の時間を、2分、3分と延ばしましょう。あるいは、1分間瞑想を15~20回繰り返してもいいでしょう(タイマーを使用しても可)。
ポイント②
体を締めつけない、ラクな服装でおこなってください。
(※この連載は、毎週月曜日・全8回掲載予定です。次回は5月28日掲載予定です。)
緑川 明世 (みどりかわ みょうせい)
作品紹介
苦しみから自由になる「道」がある――。心をゆるめ、心身をすこやかに育む、人生100年時代に役立つ生き方のヒント。
定価:本体1,300円+税/学研プラス
バックナンバー
- 何歳からでも、よい習慣を始められる
- 最初の一歩を踏み出せるのは、自分だけ
- 人生は、リミットレスで充実させることができる
- 心に、少しずつ「よい種」を植える
- 幸せの種は自分の中にある
- 心は、逆境をはね返すしなやかさをもっている
- あなたの心には、 決して折れないしなやかさがあります