【追悼 詩画作家・星野富弘】四肢の自由を失った著者が見つけた生きる喜びとは?

『新装版 詩画集 ありがとう私のいのち』

更新日 2024.09.30
公開日 2024.09.27
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今年4月に逝去された星野富弘氏の代表作品を収録した詩画集を、装丁と一部内容を新たに発刊。「描く」ことで生きる喜びを取り戻し、「ありがとう私のいのち」という思いに至るまでの【いのちの軌跡】をたどる一冊。

『新装版 詩画集 ありがとう私のいのち』告知画像

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詩画作家・星野富弘の[いのちの軌跡]

 口に筆をくわえて詩を書き、絵を描く。作品をまとめた詩画集は200万部を超え、多くの人々に深い感動と勇気を与え続ける詩画作家・星野富弘氏が、2024年4月28日に逝去されました。

 このたび発売となる『新装版 詩画集 ありがとう私のいのち』は、星野富弘氏の原点となる代表作品を厳選し、「あきらめない心」「ありがとう私のいのち」「おかあさん」の3つのテーマに分けて収録しています。四肢の自由を失い希望をなくした著者が「描く」ことを通して生きる喜びを取り戻し、「ありがとう私のいのち」という思いに至るまでの【いのちの軌跡】をたどる一冊です。

 今回、装丁と一部内容を新たに新装版として発刊※。巻末には、星野富弘氏のお別れの会での、妻・星野昌子さんの言葉を全文掲載しました。

「富弘さんがいなくなって、ひとりで作品を見ていると、描いている時を思い出し、涙があふれてきてしまいます。」

 という冒頭文からはじまる昌子さんの言葉には、43年間にわたって著者に寄り添い、創作活動をすぐ隣で見つめ支え続けた妻の視点から星野富弘氏の姿が書かれており、愛とあたたかさに溢れています。

※本書は図書館版『星野富弘 ありがとう私のいのち』(全4巻)をもとに構成し直した『星野富弘詩画集 ありがとう私のいのち』(2011年11月刊行)を、一部内容と装丁を変えて再発行した新装版です。

星野富弘が「描く」ことで見つけた生きる喜び

 はじまりのひと筆は、入院仲間への寄せ書きとしてチューリップハットに書いた「お富」の2文字。口にサインペンをくわえたまま、母が帽子を押しつけて左右に動かして書いたサインは、寄せ書きを受け取った入院仲間にことのほか喜ばれ、著者は「口で字を書きたい!!」と痛烈に思うようになりました。

 当時の思いを、星野富弘氏は本書でこう語っています。


「目が回った。よだれがサインペンのガーゼをぐしょぐしょにして、頬っぺたを伝わって枕に浸みた。慣れないものをくわえるためだろうか、吐き気もしてきた。
 しかしうれしかった。うれしくて、うれしくて、……やめることはできなかった。」

「閉ざされた病室の中にいる者にとって、外からの手紙は本当にうれしいもので、一枚一枚何度も読み返しては手紙に向かって、
『ありがとう○○さん』
 心のなかで何度言ったことか。もしいままでにいただいた手紙にどんなに短くてもいい、自分の手でお礼の手紙が書けたら、その人たちにとっても、私にとってもどんなにかうれしいことだろう。」


 その後、何とか手紙を書けるようになりましたが、そんなにたくさん文字が書けるわけではなく、余白に花瓶にさしてあった花の絵を描きました。そして、それが「詩画」という形の元になったのです。

「口にペンをくわえ、自分で頭を動かして書いた初めての文字。」紙面

▲口にペンをくわえ、自分で頭を動かして書いた初めての文字。

著者が「作品は遺言だ」と語った詩画の数々は、今もなお感動と勇気を与えてくれます。 紙面

▲著者が「作品は遺言だ」と語った詩画の数々は、今もなお感動と勇気を与えてくれます。

 本書の『ありがとう私のいのち』というタイトルは、著者・星野富弘氏が以下のように思い至ったことによります。


「けがをして、すべてを失ったと思ったが、気がつくと、私にはまだ、たくさん残されているような気がした。見ること話すこと、よろこびや悲しみを感じられる心、感謝できる心。身体は不自由になったが、自由な心は残っていた。
 苦しみや悲しみの中で、私を思ってくれる人たちの優しいこころにも、たくさん出会った。
 生きていて良かった。」


 あとがきに記されたこの言葉は、著者が天国に旅立たれた今、あらためて胸に迫るものがあります。
 病室の天井を見つめ、たとえようのない寂しさに押しつぶされそうになりながらも、「眠っている間に心臓が止まってくれれば」と願いながらも、生きる希望を取り戻し、78年間のいのちを全うした星野富弘氏。

 巻末にある妻・星野昌子さんの言葉は、このように締めくくられています。

「富弘さんがのこした作品は、たくさんの人の心の中で語りかけ、生きつづけてくれると思っています。」

 その言葉のとおり、著者のいのちの軌跡と作品は、さまざまな思いを抱えながら一日一日をやり過ごすように生き延びる人たちに、いのちとは何か、生きるとは何かを、これからもやさしく語りかけてくれるはずです。

星野富弘(ほしの・とみひろ)]

「著者」画像

 1946年4月24日生まれ。群馬大学教育学部卒業後、高崎市立倉賀野中学校赴任。2か月足らずで、クラブ活動指導中、頸髄損傷を負う。首から下の運動機能を失うが、口に筆をくわえて詩を書き絵を描く。字や絵をかけるようになるまでの闘病記である『愛、深き淵より。』は累計発行部数140万部を突破、『新編 風の旅』などの詩画集は200万部を超えるなど、著書多数。1981年春、結婚。1991年ふるさとの群馬県勢多郡東村草木ダムのほとりに、富弘美術館が建設され、作品が常設されている。
 詩画や随筆は教科書にも掲載され、現在も、全国で「花の詩画展」を開いている。2024年4月28日、永眠(享年78歳)。

星野富弘 作品一覧 

『新装版 愛、深き淵より。』

『新装版 愛、深き淵より。』書影

 今、もう一度振り返ってみると、深き淵には、澄んだ美しい水が湧き出ていたような気がします――。四肢の自由を失い絶望の淵にいた青年教師が、筆をくわえて綴った生命の記録。人々に深い感動と勇気を与え続ける、【累計発行部数140万部】突破の永遠のベストセラーの新装版。

学研出版サイト

『新編 風の旅』

『新編 風の旅』書影

 詩画に生きる希望を見いだした著者が、折々の花にその想いを託して綴った生命のうた。【累計発行部数200万部】を超えて、今もなお感動の輪を広げる星野富弘詩画の原点。新たに描き直した37点(掲載39点中)の詩画を収録した新編。

学研出版サイト

『詩画集 風の詩 かけがえのない毎日』

『詩画集 風の詩 かけがえのない毎日』

 高校時代からはぐくんだ友情を基に、著者と親友の舘内氏がJAFメイト誌上で連載する「風の詩」を詩画集として書籍化。一編の詩画を囲んで、五十年来の友人と言葉を交わす、星野富弘[友情の詩画集]。詩画42点収録。

学研出版サイト

『星野富弘 詩画とともに生きる』

『星野富弘 詩画とともに生きる』書影

 怪我をして手足の自由を奪われたなかで、字を書き、絵を描き始めて、ついには詩と絵を融合させた詩画という世界を確立させるまでの過程で、絵といかに向き合い、生きる希望をつないできたか――。少年時代からの絵の変遷をたどり、「描く」ことへの熱い思いを語りつくした一冊。

学研出版サイト

商品の紹介

『新装版 詩画集 ありがとう私のいのち』書影

■書名: 『新装版 詩画集 ありがとう私のいのち』
■著者:星野富弘
■発行:Gakken
■発売日:2024年9月19日
■定価:1,870円(税込)

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