現代の子どもたちに届ける“リアル科学体験”!『学研の科学』復刊プロジェクトのひみつ(前編)
『学研の科学』復刊! 編集部メンバーインタビュー
もくじ
「若田光一さんに、ロケットの先にある“宇宙”や、子どもたちの未来を語ってもらいました」
かつての「科学」では、カメラや顕微鏡、生き物の飼育など、3,000を超える科学実験教材を開発し、多くの子どもたちへ届けてきた。もちろん、新生『学研の科学』でも、“実験キット”が目玉だ。伝説的な存在でもある旧「科学」があるなかで新生版への期待は社内でも大きく、チームにかかるプレッシャーもまた高かった。
それでも変わらなかったのは、“子どもたちを夢中にさせる”魔法だ。『学研の科学』には実験キットだけでなく、さまざまな仕掛けを用意しているという。
副編集長の柿島霞は次のように語る。
「『学研の科学』の復刊号では、“水素エネルギーロケット”が実験キットにつきます。「水素エネルギー」と「宇宙」をテーマに、子どもたちの好奇心を広げたいと思っています。
今回、力を入れているのが、オンラインコミュニティ「学研の科学 あそぶんだ研究所(以下:あそぶんだ研究所)」です。実験キットを作ったり遊んだり、本誌を読んで感じた疑問や不思議などを、編集部と読者が一緒になって解き明かしていこうというコンテンツを用意していきます。
さらに、小学生に人気の学研まんが『ひみつシリーズ』では、水素エネルギーについての知識を深められます」(柿島)
そんな柿島が、復刊号でインタビューしているのが、JAXA宇宙飛行士の若田光一さんだ。
「これまで4度、宇宙でのミッションを遂行した若田さんに、宇宙での体験を語っていただきました。これまで“宇宙へ行く”こととは“地上から400km離れた国際宇宙ステーションへ行く”ということでした。それが今や、『次は38万km先の月だ! 月面開発だ! 』という目標になっているのだと、教えていただきました。そこで、次世代の宇宙飛行士が、月面でどんな仕事をするのか、というお話も展開しています。
このインタビュー記事によって、子どもたちに、より宇宙を身近に感じてもらいたいです」(柿島)
若田さんにインタビューした直後に、もともとの本誌の内容自体を大幅に軌道修正。月面開発や、その先にある火星を見据えた特集を取り込んでいくことにしたという。あわせて東京理科大学・スペースシステム創造研究センターに追加取材。誌面では、 “月面で暮らす未来”をイメージ画像を交えた解説に挑んだほか、開発中の最新技術も紹介されている。
「取材現場で、若田さんのお話をうかがっていると、これからの子どもたちにとっての宇宙は、いまの大人が想像している宇宙とは、大きく変わっていくのだなあと実感しました。感動して思わず、ウルッとしてしまい……本誌の後半の構成を予定のものから思い切って変えることにしたんです。若田さんには、「あそぶんだ研究所」で配信するための、動画メッセージも撮らせていただきました。ぜひ、本誌と一緒に観てほしいです」(柿島)
「水素エネルギーロケットには、“科学のなぜ?”がたくさん詰まっているんです」
『学研の科学』は、実験キット、本誌と学研まんが、オンラインコミュニティ「あそぶんだ研究所」と、どの入口からでも楽しめる仕組みになっている。しかしやはり多くの子どもたちが最初に体験するのは、実験キットだろう。復刊号でいえば水素エネルギーロケットだ。
本誌の誌面で、この水素エネルギーロケットの解説ページを担当しているのが、前澤一樹である。
「まず巻頭記事では、水素エネルギーロケットを使って、どんな遊び方ができるのかを説明しています。手回しの発電機で電気を発生させて、水素を作り出します。発電機のハンドルを回すほど水素がタンクに溜まっていき、発射ボタンを押すと、ロケットが飛び立つ……そうしたことを順序立てて解説しています」(前澤)
だが、それだけで終わらせずに知識への興味を広げていくのが、新生『学研の科学』の真骨頂だと前澤はいう。
「かたい話になりますが、順序立てて理解し観察していくと、別に見えてくるものがあるんです。
例えば、飛んだあとのロケットを拾い上げると、中が少し濡れていることに気がつくかもしれません。子どもたちは、単に水がはねたんだなあって思うだけでなく、こうした気づきのなかに科学の不思議を感じてほしいと思っています。
はじめに手回し発電機を回して、電気を作ります。その電気で、水を水素と酸素に分解します。そして水素を使って、ロケットを発射する。最後に水素と酸素が結びついてまた元の水にもどり、ロケットに付着します。
これがロケットの中を濡らしていた水の正体ですが、子どもたちには『また元の水に戻ってきたんだなぁ』というところまで、感じてもらえたらいいなと。これは一例ですが、水素エネルギーロケットは、さまざまな科学の要素が詰まった実験キットなんです」(前澤)
センス・オブ・ワンダーを感じる瞬間を子どもたちに届けようとするのが、『学研の科学』のあるべき姿ともいえる。
前澤の担当ページでは、この発電機を“ロケットを飛ばす以外の用途に使ってみる”という方法を紹介している。
「手回し発電機は、当然、電気が作れます。この電気を他のことにも使ってみようということで、例えば、LEDを点灯させることを解説しています。ロケットを飛ばすだけでも、子どもたちは十分に楽しいはずです。でも、もっと『こんなこともできるんだよ』というさらなる面白さを提示して、子どもたちが抱いた好奇心を広げていきたいんです」(前澤)
「本誌を補う『ひみつシリーズ』を通して、疑問を持つ大切さを伝えたい」
「水素エネルギーロケットがキットの復刊号のテーマは、奥が深いんです。まず手回しで発電し、水を分解して水素を作る。その水素でロケットを飛ばす。テーマとしては、ロケットがあって、その先の宇宙がある。そして、この“水素”というのは、“未来のエネルギー”としての期待が高まっています。
重要な存在である水素エネルギーに関しては、付属する『ひみつシリーズ』で、しっかり解説しています」(柿島)
子どもたちは、水素エネルギーロケットを飛ばすために水素をつくり、それと同時に、その水素とは何なのか、これからの社会における水素の重要性をふくめ、楽しく学べる仕組みなのだ。
「ひみつシリーズ」は、職業や製品、サービスなどについて紹介する学研の学習まんがだ。小学生を対象としたアンケートでは、常に好きな本の上位に挙げられる人気シリーズだが、通常は、本屋で購入することはできず、小学校や公共の図書館でしか読めない。それが『学研の科学』の復刊号には、一冊まるごとついてくる。
さらに「ひみつシリーズ」とは別に、本誌にもまんが記事がある。その制作を担当したのが、編集者の平谷美咲だ。難しくなりがちな内容を、まんがを通してわかりやすく説明しているという。
「水素を爆発させて飛ばす水素エネルギーロケットも、実際に宇宙まで飛ぶロケットも、原理としては同じなんだ!ということを、まんがで説明しています。また、まんがの構成は、“子どもが感じるであろう疑問に答えていくスタイル”をとっています。科学に限りませんが、ひとつ疑問を解決すると、新たな疑問が湧いてくるものですよね。その新たな疑問をさらにまんがの流れの中でひも解いていく…といった流れです。
もちろん、疑問に対する答えを理解してもらうことも大事なのですが、この記事を通して、疑問を持つこと自体の大切さを、伝えられたらいいなと思いながら作りました」(平谷)
ロケットから宇宙へ、そして、そのロケットを飛ばすエネルギーとしての水素。水素エネルギーロケットを飛ばすことで、子どもたちが広げていく知的好奇心に、どこまでも寄り添っていくのが新生『学研の科学』の創刊号なのだ。
「水素は、元素の周期表の1つめに挙げられ、原子番号は1です。創刊号で解説するのに、ふさわしいですよね」(平谷)
後編では、復刊チームが新たに提供するオンラインコミュニティの全貌など、『学研の科学』の新たな一面のひみつを紹介していく――。
(取材・文=河原塚 英信 撮影=多田 悟 編集=櫻井奈緒子)
『学研の科学 水素エネルギーロケット』
水素エネルギーと宇宙。10年後の未来を感じさせてくれる実験ロケット。手回し発電機で水素を発生させ発射。室内で安全に楽しめる。若田光一宇宙飛行士のインタビューや実験アイデアがたっぷりの本誌に加え、大人気のまんがひみつシリーズがまるごと1冊入り。
■書名:『学研の科学 水素エネルギーロケット』
■編:学研プラス
■発行:学研プラス
■発売日:2022年7月7日
■価格:2,970円(税込)
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クリエーター・プロフィール
『学研の科学』編集部
(左から)
<田中大介>あそぶんだ研究所(コミュニティサイト)担当 大阪府出身
<栗山佳恵>あそぶんだ研究所(コミュニティサイト)担当 茨城県出身
<前澤一樹>キット記事の当 愛知県出身
<吉野敏弘>編集長 埼玉県出身
<柿島 霞>副編集長 埼玉県出身
<平谷美咲>まんが記事担当 広島県出身
<西脇秀樹>生え抜きの科学っ子 埼玉県出身
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