普通の人にこそ「体幹」が大切な理由

金哲彦『正しく歩いて体をリセット 体幹ウォーキング』セレクション

更新日 2020.07.21
公開日 2017.10.16
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 前回、「体幹」を使って歩けているかのチェックをしましたが、今回は、体幹を使うことの重要性についてお伝えしていきます。

 スポーツ選手でない普通の人にとって、「体幹」はどんな意味があるのでしょう。
 誰にでも経験があるいくつかの視点から考えてみたいと思います。
 まずは体幹を使うことで、日常生活で起こりがちな次のような問題の解決が可能になります。
 
■腰痛や肩凝りの解消
 上半身の重要な体幹ポイントは、背中の肩甲骨(けんこうこつ)周辺(本書103ページ参照)です。肩甲骨を意識することで猫背が解消され姿勢がよくなります。その結果、肩甲骨付近にある僧帽筋(そうぼうきん)が活性化されよく動くようになります。肩甲骨を動かすことで僧帽筋の血行がよくなり、気になっていた肩凝りが解消します。
 また、猫背が治ることで、姿勢の維持に欠かせない脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)への座ったときの負担が大幅に減り、腰痛の解消が期待できます。

■運動不足の解消
 体幹を使えるようになると、体が軽く感じられるようになります。軽くなることで、体を動かすことが億劫でなくなり、ちょっとした買い物や移動は歩こうと思うようになります。それまで運動不足だった人の生活パターンも大きく変わるでしょう。
 また、全身の約半分の筋肉が集まる体幹を日常から使うことで、基礎代謝量そのものがアップして元気になってきます。

■生活習慣病の予防や改善
 生活習慣病の多くは、偏った食事、運動不足、過度な飲酒、喫煙習慣、ストレス、睡眠不足などが原因で起こります。体幹を使うことでの効果が期待できるのはそのうちの2つ、運動不足とストレスの解消でしょう。日常生活が活発になり基礎代謝が上がれば、体を使う機会が増えます。
 また、気持ちよく体を使うこと(運動すること)が、ストレスの解消につながることも知られています。体幹を使う習慣が、生活習慣病の予防や改善に大いに役立ちます。

 さらに、体にとって嬉しい変化も期待できます。

■ダイエット
 いつまでもスリムでいたいという気持ち、ダイエットは女性だけでなく男性にとっても永遠の課題でしょう。体幹を使う生活をすることで基礎代謝が上がり、ウォーキングなどの有酸素運動を併用すると太りにくい体質に変わっていきます。
 また、体幹を使えるようになると、手足など末端部分の筋肉に負担をかける割合が減ってきますので、全体的に均整がとれた体つきになっていきます。

■見た目の格好よさ
 体幹の要かなめである肩甲骨を日常で使えるようになることで、猫背だった姿勢は改善されます。つまり、姿勢が劇的によくなります。言うまでもなく姿勢のよさは見た目の格好よさにつながります。

 猫背姿勢は、貧相で自信がなさそうに見えます。ところが、体幹が使えるようになることで姿勢が自然に改善されれば、自信に満ち溢れた素敵な人に生まれ変われるのです。

■アンチエイジング
 誰でも加齢による老化には抗えません。年をとると皮膚の水分量が少なくなり、肌のシワが気になります。さらに、骨格筋の筋力が低下するだけでなく、骨密度も低下します。筋力低下と骨密度の変化で、背骨も歪みがちになるのです。
 そうなる前に体幹を使う生活に変えましょう。体幹を使えば、筋力の向上、骨の強化、基礎代謝のアップが期待できます。もちろん内臓機能など、中身のアンチエイジングも必要ですが、体の土台となる筋肉と骨格がしっかりしなければ、老化は早まっていくものです。

 さらに、体幹を使うことは、最近高齢化社会で問題になっているロコモティブシンドロームの予防にも効果があります。
 ロコモティブシンドロームとは、筋肉、骨、関節、軟骨、椎間板といった運動器のいずれか、あるいは複数に障害が起こり、「立つ」「歩く」といった機能が低下している状態を言います。
 体幹を使えるようになれば、バランスよく体を支えることができるようになるので、「立つ」「歩く」などの運動が楽になります。ロコモティブシンドロームの予防になるのです。
 体幹の重要性は、これからもあらゆる分野で注目されていくでしょう。

(※この連載は、毎週月曜日・全8回掲載です。次回は10月23日掲載予定です。)

 

金 哲彦 (きん てつひこ)

NPO法人ニッポンランナーズ理事長。

1964年、福岡県北九州市に生まれる。早稲田大学時代は、名将・中村清監督の下、箱根駅伝で4年連続山登り5区を担当。区間賞を2度獲得するなど、早稲田の2連覇に貢献する。
1986年、リクルートに入社し、ランニングクラブを創設。87年大分毎日マラソンで3位、89年東京国際マラソン3位など選手として活躍。
1992年、同クラブのコーチとなり、小出義雄監督とともに有森裕子、高橋尚子などトップアスリートの強化に励む。1995年、監督に就任。
2002年、NPO法人ニッポンランナーズを創設。オリンピック選手から市民ランナーまで、幅広い層から支持を集めるプロ・ランニングコーチとして活躍するとともに、テレビやラジオのマラソン・駅伝・陸上競技中継の解説者としてもおなじみ。

ランニングやウォーキングを通した健康維持に関する講演も多数行う。

■NPO法人ニッポンランナーズ

http://www.nipponrunners.or.jp/

 

作品紹介

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