人生に悩んでいる人は、たいていの場合、目の前の仕事がうまくいっていない。
努力の割には成果が出ず、周囲にも迷惑をかけ、人間関係にも支障が出ている。当然、出世などとは無縁。評価も低く給料も満足のいくものではない。
毎日を憂鬱に過ごし、逃げるように帰宅し、試合終了のゴングに救われるように、週末や盆、暮れを迎える。
本当に、つらい人生である。世の中の「できる人」から「能力の違い」を見せつけられ、そこで「自分とは違う」と線を引いてしまう。
人生はもう終わった。
自分の人生はこんなもんか。
そう思う。
しかし、そこから人生をガラリと巻き返す人たちがいる。
それは日々自分の世界に紛れ込む「雑事」から逃げ、「本当に得意なこと」に全力で集中することを選んだ人たちだ。
いったいどうしたら、そんな図太い人になれるのだろうか?
まず、仕事がうまくいかないからといって「人生終わり」などとは考えない、ある程度の「無神経さ」が重要だ。
そしてそれ以上に、相性の悪い仕事の隙間を縫うように、自分が心底楽しめる何かを見つけて没頭するという、ある種の「現実逃避力」が重要なのだ。
■視点をずらし、視野を広げる
現実逃避をして何をするのか?
相性の悪い仕事だけを見つめていた視点。それを思い切りずらし、世の中のあらゆることに目を向ける。現実逃避をしながらしっかり視野を広げる。
そして「この仕事なら没頭できる!」「24時間を捧げても自尊心が壊れない」という仕事の実体を、広い世の中から探し当てる。
自分の志向性にぴったり合った「大好きで得意な仕事」の存在を探り当てるための「超・積極的現実逃避」をすることが重要だ。
何を隠そう、私自身がこの超・積極的現実逃避により、人生を巻き返してきた。
息苦しい自己嫌悪と虚無感、のしかかる上司や先輩からのプレッシャー。自尊心をどこに置くべきか? のアイデンティティの崩壊。
さまざまな混沌とした感情を抱えながら、それでもギリギリの精神状態のまま、「視点」を目の前の「やらなければならないこと」からずらし、突破口を切り開いた。
勇気を持って、創造的な自暴自棄になって視点を目の前のことから「ずらす」。
それが「番狂わせの巻き返し」を実現する方法の一つである。
なぜなら「仕事のできる人」とは、自分の志向性にマッチする「得意な仕事」と出合った人のことを言うからだ。
彼らのほとんどは、その幸運な出合いからある種の恍惚状態に入り、痛みを感じることなく努力を継続できた人たちである。
本来、世の中に「できる人」「できない人」という絶対的な価値観は存在しない。
「できる人」が他の領域で「できない人」に陥落することもあるし、「できない人」が他の領域に移った瞬間、ものすごい能力を発揮して、たちまち世の中から「できる人」の称号を獲得することもある。
歴史上の偉人、現代における成功者、そしてあなたの周りの「できる人」のほとんどは、まさにこの「仕事との相性」により、その位置まで上りつめている。
そしてもう一つ、できる人になるために重要なことがある。
それは「たった一つのこと」で突き抜けているということ。
狭い狭いたった一つのことを、高く高く上へ伸ばし、世の中に抜きん出る状態をつくっているということである。私もその部類である。
今では数十冊の本を出し、なかには20万部超えの作品もある。巻き返しの後には年収も5倍。やりがいに関しては10倍20倍、心の自由度も計り知れない。
しかし会社員時代は日の目を見なかった。それどころではない。いくらがんばっても、成果は出ない。しかも周囲からも辛辣なことを言われる。どんどん周囲の職場の人のことが嫌いになるし、同時に自分のことも嫌いになる。
そんな最悪な会社員生活を過ごしていた。
そこで「書く」「表現する」「伝える」という自分に合った「仕事」と出合い、それに従事すると腹を決めた。狭い狭い、たった一つの選択と、その仕事への集中が活路を開いたのである。
さあ、まずは無神経なまでに現実逃避をしてみよう。
そして自分のなかを深く深く掘ってみることだ。寝食を忘れてつい没頭してしまうことがあるはずだ。
その周辺に、あなたが「できる人」になるヒントが埋まっている。
それは人生を変える「お宝」である。慎重に、そしてじっくりと、腰を据えて掘り当ててほしい。
できる人になって、人生を変えようではないか。
このやり方は、会社生活で「できる人」というカテゴリーに自分自身をポジショニングしている人には、とうてい理解できない、そして信じられないやり方だろう。
しかし、世の中は「トーナメント」ではないと私は言いたい。「総当たりリーグ戦」であり、「敗者復活戦」もある。
私の提唱するやり方は「敗者復活戦」のための戦術だ。
私たちのための戦術と言える。私が信じられる人は、ぜひこのままついてきてほしい。
潮凪 洋介 (しおなぎ ようすけ)
エッセイスト・講演家・イベントプロデューサー。株式会社ハートランド代表取締役。早稲田大学卒。「好きなことに挑戦して輝く学校」自由人生塾を主宰。自分らしい生き方の発見と自己実現をサポート。
個人個人に合った「人生づくり」の具体的なアドバイスを日々実施している。
シリーズ累計20万部突破のベストセラー『もう「いい人」になるのはやめなさい!』(KADOKAWA)、『「バカになれる男」の魅力』(三笠書房)、『仕事に殺されないアナザーパラダイスの見つけ方』(フォレスト出版)、『お金に殺されない人が大切にしている40のこと』(総合法令出版)ほか、著書多数。
作品紹介
「逆境」は人生を巻き返すため天が与えてくれた絶好のチャンス。今までの人生を振り返り、新しい自分に生まれ変わるヒント満載!
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