女の子が大人びていたり、ときにませていると言われる背景には、女の子特有の好奇心旺盛な性質が大きく影響しています。
うちの娘もそうでしたが、たとえば幼稚園くらいになると、女の子はとにかく母親のしていること、炊事などの家事でもおしゃれでもしぐさでも、なんでも真似をしたがります。ときには、お母さんの口調を真似てお父さんやきょうだいに注意することもありますね。
親からすれば、まだまだ手元が危なっかしくてハラハラしますが、本人にしてみれば自分は一人前のつもりです。下手に親が手を出そうものなら、「自分でできるもん」を連発して、「お母さんは手を出さないで!」という必死の抵抗を見せるでしょう。
こうした点は、同年齢の男の子が、なんでもお母さんにやってもらいたがるのとは、大きなちがいです。男の子もそれなりにプライドがありますから、外面の部分では甘ったれな自分をセーブしているかもしれません。しかし、家のなかではお母さんにべったり甘え切っているなんていうことは、よくある話です。こういう例をたくさん見てくると、本当は女の子のほうが生まれもった自立精神は強いのではないかとさえ思います。
じつは、女の子の好奇心旺盛で背伸びしたがる傾向は、能力を伸ばすには非常にいい要因になります。とにかく女の子たちは、自発的にいろいろなことに興味・関心を抱きますから、お母さんもそれを見逃さず、まずは子どもの興味の赴くまま、本人がやりたいということをさせてください。
能力を伸ばすためには……などと言うと、「何か特別なことをしなければいけないのかしら」と心配されるかもしれません。しかし、日常生活のなかで、女の子の知的好奇心を満たすことはいくらでもできます。
たとえば、小学生くらいになると、社会科的な話題に興味をもつ子は多いですから、ニュースをネタに親子で意見を交換するというのもいい方法です。テレビを見ているときでも、親子でぼんやりと聞き流すのではなく、「コメンテーターはこんなふうに言うけど、お母さんはそうは思わないわ」「政治家はあんなふうに言うけど、本当かしら」「そんなのきれいごとよね」など、なんでもいいのです。
お母さん自身が疑問に思うこと、いつも不思議に思っていることなどを投げかけてみてください。すると、子どもは結構、喜んで話に乗ってくるものです。
お母さんのひとことをきっかけに、「そんな見方もあるんだ」ということを知るだけでも、子どもにとってはとても新鮮な経験になります。そうしたやり取りのなかで、さらに疑問が深まったときには、辞書やインターネットで調べることをすすめたり、図書館に一緒に行ってみたり、あるいは、新聞に関連記事が出ていることを教えたりというように、子どもの興味・関心の芽が伸びていくのを後押ししてください。
お母さん自身に余裕がなかったり忙しかったりすると、子どもがせっかく興味・関心のスイッチをオンにしても、「そんなこと、あとでいいでしょ」とはねつけてしまうことがあります。ニュースを見ていた子どもが「お母さん、これはどうして?」と尋ねてきても、「そんなこと、わからないわよ」というひとことで、子どもの興味・関心を打ち切ってしまうこともあるでしょう。
でも、これはとても残念なことです。大人からすれば些細なこと、面倒なことであっても、どうかきちんと子どもの興味・関心のスイッチに対応することを心がけてくださいね。
和田 秀樹 (わだ ひでき)
1960年大阪府生まれ。精神科医・教育評論家。東京大学医学部卒。国際医療福祉大学大学院教授(臨床心理学専攻)、一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。精神分析学(特に自己心理学)、集団精神療法学等を専門とする。受験アドバイザーとしても精力的に活動し、志望校別勉強法の通信教育・緑鐵受験指導ゼミナールを主宰。東京大学をはじめとする難関大学に挑戦する受験生を指導している。映画初監督作品『受験のシンデレラ』がモナコ国際映画祭最優秀作品賞を受賞するなど、文化面でも幅広く活躍中。
作品紹介
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