伝えたい意見や感情などがきちんと伝わった会話を、人は「盛り上がった」と感じます。私はこうした会話ができる「盛り上げ体質」は、社会的能力の一つだと思って います。
それを言葉だけでやると、ヨイショ人間とか、酒席の座持ち上手みたいになるおそれがあります。
大切なのは、短くても息の合った会話。目立たないけれど内容のある話。そういう話の盛り上がりは、体と言葉が一体になってこそできあがるのです。
先日、『サワコの朝』というテレビのトーク番組に招かれ、エッセイストでもある阿川さんは、日本を代表するコミュニケーション上手の一人だと言っていいでしょう。全身で反応を示してくれる。呼吸を読んで話を引き出してくれる。笑顔、表情、しぐさ、あいづちなど、あらゆる点が相手を快くさせてくれます。
テレビの音声を消した状態で見ても、阿川さんの聞き方、伝え方のうまさは伝わってくるはずです。
とくに、あいづちの豊富さに驚きました。
私たちは、普通、「へえ」「なるほど」「そうですね」「さすが!」などの数語を使い回しています。ところが阿川さんは、実にバリエーション豊富なのです。
「初耳です」「信じられない」(驚く)
「先を聞かせてください」「そこからですね」(うながす)
「おさしつかえなければ」「聞いて大丈夫でしょうか」(一歩引く)
「いい話ですね」「しみじみします」(感動)
「ふむふむ」「わかる、わかる」(言葉を重ねる)
「すばらしい」「おみごと」(ほめる)
「あ?」「うー」(感嘆符のみ)
「人間ですものね」「しかたないかもしれません」(許容範囲を広げる)
などなどです。
一方で、身の回りを見回すと、「はあ」「ああ」というひと言ですべてをすませるクセのある人も見かけます。たとえ悪気がなくても、面倒くさいのでとりあえず反応しているという印象を与えてしまいます。
相手は呼吸をはずされ、話が進みません。
あいづちでは、「聞いていますよ」「関心があります」という気持ちを伝えることが大切です。
齋藤 孝 (さいとう たかし)
1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大大学院教育学研究科学校教育学専攻 博士課程等を経て、現在、明治大学文学部教授。専門は、教育学、身体論、コミュニケーション論。 著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社文庫・毎日出版文化賞特別賞受賞)、『身体感覚を取り戻す』(NHKブックス・新潮学芸賞受賞)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『読書力』(岩波新書)など多数ある。
作品紹介
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