あなたの心には、 決して折れないしなやかさがあります

緑川明世『尼僧が教える 心の弾力のつくり方』セレクション

更新日 2020.07.22
公開日 2018.04.09
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 あなたは、自分の心がいま思っているよりも、ずっと強くしなやかだと知っていますか? もしさわれるとしたら、心は本来あたたかで心地よく、とても柔軟性があると気づいていますか?

「心がやわらかいってどういうこと!?」と、不思議に思うかもしれませんね。
「自分の心が強いなんてとても思えない」と言いたくなるかもしれません。

 でも、私たちの心には、決して折れないしなやかさがあります。
 たとえどんなに苦しかったり、疲れていたりしても、つぶれることのない強靱さがあります。
 私たちが本来もっているその力が、「心の弾力」です。
 心の弾力とは、苦しみを越えていける力のこと。
 人生がよりよい方向へ進むよう、自分で自分を導いていける力のことです。
 私たちは、誰もがその力を生まれ持ってきています。
 しかも、その弾力を自分自身で育んでゆくことができるのです。
 
 といっても、生きていれば心がギュッと縮こまり、「もう、ダメだ」「心が折れそう」と感じる日もありますね。
 誰もが、多かれ少なかれ、悩みや心配事を抱えています。
 思い通りにならないことや腹の立つことも起こります。
 だから、心がへこんでしまう日があるのは、当然のことです。
 しかしそんなときこそ、実はチャンスです。
 もし、「つらい」と感じているとしたら、自分の心の状態をキャッチする豊かな感性があり、その状況を変えられる力があるということだからです。
 その力さえあれば、必ず状況は変わります。
 
 仏教は、自分自身を整え、心の弾力を育む方法を教えています。
 この本では、その教えをわかりやすくひもときながら、人生をよりよく変えて、のびやかでいきいきとした毎日を送る方法をお伝えしていきます。
 
 私自身の人生も、仏教と出会い大きく変わりました。
 自然食に興味をもち、20代でアメリカに滞在しているときのことです。
 それまで、熱心な信仰はしていない家庭で育った私は仏教にはまったく関心がなく、もともと体が弱かったこともあり、マクロビオティックを学び始めました。
 そして健康でいるためには、心もすこやかに保つことが大事だと考え始めた時期に、ひとりのチベット仏教の高僧と出会いました。
 この出会いがきっかけとなって仏教への興味が深まり、帰国後、ご縁をいただいた比叡山で基本の行を修行し、30代の初めに天台宗の僧侶となります。その後、天台宗の教えを基盤としながら、チベット仏教を学び、仏教への理解を深めてきました。
 
 本の中でくわしくお話ししますが、僧侶になったあと、大きな病気を患ったり、私生活でもうまくいかないことがあったりして、私の人生は危機的状況に陥ります。
 そのピンチから救ってくれたのが、仏教の教えです。
 特に、南インドにあるチベット仏教の僧院にたびたび滞在し、チベット語と仏教経典を学び続けていることは、大きな経験として生きています。
 これまで日本の師僧や先生方、チベット仏教の師僧をはじめ、ご指導いただいた方々からたくさんのことを学びました。
 逆境に見舞われて「もう立ち上がれない」と思っても、また幸せに生きる方向へ歩き出せる底力が私たちにはある。
 心の弾力は、自分自身で培うことができる。
 そう気づけたことは、私の大きな財産となりました。
 
 人生で経験したことは、絶対に無駄になりません。
 苦しい時期は、その苦しみを越えて人生をよい方向に変えていくタフさを育てる時期なのです。
 そんな見方ができるようになれば、心がどんどん練れて柔軟になります。
 
 私たちの人生は、山あり谷ありのでこぼこ道です。
 でも仏教には膨大な経典があり、生きるための豊かな智慧があります。
 その智慧を学ぶのは、でこぼこ道を正しく進む地図を手に入れることです。
 アメリカで、仏教への扉を開いてくれた高僧は、こうおっしゃいました。
「あなたに、『仏教徒になれ』と言っているわけではありません。でも仏教の教えを知ることは、あなたの人生にとって絶対にプラスになります」
 私もいま、同じことをあなたに伝えたいと思います。
 仏教の示す人生の地図は、きっとあなたの心の弾力を育み、人生をよりよい方向へ導いてくれるでしょう。
 あなたが本来もっている、心のしなやかさを取り戻す旅を始めてみませんか?

(※この連載は、毎週月曜日・全8回掲載予定です。次回は4月16日掲載予定です。)

 

緑川 明世 (みどりかわ みょうせい)

作品紹介

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