お金が消える人は「道具」にこだわるが
お金が増える人は「使い方」にこだわる
「お金持ち=長財布」論の話の続きになるが、この論の本質とは、そもそも何か。
それは、お金の出入りをしっかり管理しているかどうかにある。
お金が増える人は、基本的にお金の出入りを把握する力が強い。
クレジットカードやポイントカードにしても、状況に応じ、今どのカードを使うかをすばやく判断することが必要だ。
その作業をスムーズに行える財布が、たまたま長財布タイプであるというだけ。
お金を管理する能力が「持ち歩く現金の整理」という細かいところに出た結果、統計上、「お金持ち=長財布」が多くなるということだろう。
そして彼らは、自分的に「これが管理しやすい」と思うなら、財布やその形状にはこだわらない。
前述のとおり、お金持ちの財布といっても様々だし、私の友人でアフリカでの貿易ビジネスで年商300億円という起業家がいるが、彼の財布は見るも無残なボロボロの二つ折りタイプ。
彼いわく、「だってまだ使えるじゃん。なんでわざわざ買い替える必要があるの?」。
お金が消える人は本質を考えることよりも、「考えなくてもできる簡単な方法」を選ぶ傾向がある。
たとえば「高血圧患者には、血圧を下げる降圧剤が処方される」と聞いて、ほとんどの人は疑問を抱かないと思う。しかしこれは、対処療法にすぎないということがわかるだろうか。
本来、大事なのは血圧が高くなった原因を取り除くことであって、薬で強引に下げることではないはず(緊急性のある場合は別)。
長財布理論も同じ。日々の金銭管理の習慣が、財布の整理やお金の物理的な扱いに現れているという、思考や習慣が表出した状態にすぎない。
つまり長財布を持つことは、結果であって原因ではない。もちろん、形から入ることが有効に作用することもあるが、結果から変えようとしても、原因が変わらなければ続かない。
根本原因を治療しない人の財布からは、お金は知らない間に消えていく。
本当に変えるべきは財布ではなく、「日々の消費行動のあり方」のはず。財布を替えたところで、入るお金が増えるだろうか。ムダな出費が減るだろうか。
行動の本質を変えなければ、お金の残高も変わらない。長財布を選んだからといって、お金が増えるわけではないことがわかると思う。
むしろ長財布に替えることによって、その財布を買ったぶん、ただお金が出ていくだけになってしまう。
もちろん「長財布ならお金を管理しやすい」と実感するなら買い替えればいい。道具を選ぶことは大切である。しかしそれは本当の目的ではない。
スポーツや芸術なら、道具を選ぶことがモチベーションを喚起するケースもある。アウトプットにも影響するだろう。
しかしお金は毎日、そして一生涯にわたって動かしていくものだから、残高や収入は日々の習慣によって積み重なっていく。
お金の出入りを日々意識し、マネジメントする習慣が、お金が増える人生につながる。これは、あなたが今使っている財布でも、始められることではないだろうか。
午堂 登紀雄 (ごどう ときお)
1971年岡山県生まれ。米国公認会計士。中央大学経済学部卒業後、会計事務所、大手流通企業のマーケティング部門を経て、世界的な戦略系経営コンサルティングファームのアーサー・D・リトルで経営コンサルタントとして活躍。2006年、著書『33歳で資産3億円をつくった私の方法』(三笠書房)がベストセラーとなる。同年、不動産投資コンサルティングを行う株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。経営者兼個人投資家としての活動のほか、出版や講演も多数行っている。『お金の才能』(かんき出版)、『頭のいいお金の使い方』(日本実業出版)、『オキテ破りのFX投資で月50万円稼ぐ!』(ダイヤモンド社)、『日本脱出』(あさ出版)ほか著書多数。
作品紹介
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